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2024年9月3日 (火) 22:42時点における最新版
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カーネルモード設定 (KMS) は、ユーザースペースではなくカーネル空間でディスプレイの解像度・色深度を設定する方法です。
Linux カーネルの KMS 実装により、フレームバッファでのネイティブ解像度や素早いコンソール (tty) 切り替えができるようになります。また、アーティファクトの軽減や 3D パフォーマンスの向上、カーネル空間での省電力機能を補助する新しい技術 (DRI2 など) も可能にします。
目次
背景
以前は、ビデオカードをセットアップするのは X サーバーの仕事でした。このため、仮想コンソールで派手なグラフィックを使うことは簡単ではありませんでした。また、X から 仮想コンソール へ切り替えると (Ctrl+Alt+F2
)、X サーバーはカーネルにビデオカードのコントロールを移さなくてはならず、動作が重くなりチラツキが生じていました。同じ"痛々しい"挙動はコントロールを X サーバーに戻す (X が VT7 で動作している場合 Alt+F7
ときも起こりました。
カーネルモード設定 (KMS) によって、現在カーネルはビデオカードのモードを設定することができます。これによって、起動段階での派手なグラフィックや、仮想コンソールと X の早い切り替えなどが可能になりました。
設定
まず、どの 方法を使うにせよ、以下を 常時 無効にする必要があります:
- ブートローダ内のあらゆる
vga=
オプション。KMS によるネイティブ解像度と衝突します。 - フレームバッファを有効にするあらゆる
video=
行。ドライバと衝突します。 - 他のフレームバッファドライバ (uvesafb など)。
KMS の遅延開始
Intel、Nouveau、ATI、AMDGPU のドライバでは全てのチップセットで、KMS が自動的に有効になるように既になっています。そのため、何もする必要はありません。
プロプライエタリな NVIDIA ドライバは KMS をサポートしています (364.12 以降)。ただし、手動で有効化する必要があります。
KMS の早期開始
通常 KMS は initramfs ステージよりも後に初期化されます。しかし、initramfs ステージで KMS を有効化することもできます。ビデオドライバが必要とするモジュールを initramfs の設定ファイルに追加してください:
- AMDGPU の場合は
amdgpu
。レガシーな ATI ドライバを使用している場合はradeon
- Intel Graphics の場合は
i915
- オープンソースな Nouveau ドライバの場合は
nouveau
- out-of-tree の nvidia ドライバや nvidia-open ドライバの場合は
nvidia nvidia_modeset nvidia_uvm nvidia_drm
詳細は NVIDIA#DRM カーネルモード設定 を見てください。
- Matrox グラフィックスの場合は
mgag200
- 使用している QEMU グラフィックスに依存します (qemu のオプション
-vga type
あるいは libvirt<video><model type='type'>
[1]):std
(qemu) とvga
/bochs
(libvirt) の場合はbochs
virtio
の場合はvirtio-gpu
qxl
の場合はqxl
vmware
(qemu) とvmvga
(libvirt) の場合はvmwgfx
cirrus
の場合はcirrus
- VirtualBox のグラフィックスコントローラに依存します:
- VMSVGA の場合は
vmwgfx
- VBoxVGA と VBoxSVGA の場合は
vboxvideo
- VMSVGA の場合は
Initramfs の設定手順は、使用する initramfs ジェネレータによって若干異なります。
mkinitcpio
In-tree なモジュールの場合、/etc/mkinitcpio.conf
の HOOKS 配列に kms
フックが含まれていることを確認してください (これは mkinitcpio v33 以降デフォルトです)。
out-of-tree なモジュールの場合、MODULES 配列にモジュール名を追加してください。例えば、NVIDIA グラフィックドライバの early KMS を有効化するには:
/etc/mkinitcpio.conf
MODULES=(... nvidia nvidia_modeset nvidia_uvm nvidia_drm ...)
#モードと EDID を強制する の方法をとっている場合、そのカスタムファイルを initramfs にも埋め込む必要があります:
/etc/mkinitcpio.conf
FILES=(/usr/lib/firmware/edid/your_edid.bin)
そして、initramfs を再生成してください。
Booster
Booster を使用している場合、以下の設定変更で必要なモジュールをロードすることができます:
/etc/booster.yaml
modules_force_load: i915
イメージにファイルを追加する場合:
/etc/booster.yaml
extra_files: /usr/lib/firmware/edid/your_edid.bin
そして、ブースターイメージを 再生成 してください。
トラブルシューティング
フォントが小さすぎる
コンソールフォントを大きくする方法については Linux コンソール#フォント を見てください。Terminus フォント (terminus-font) には ter-132b
など様々なサイズが含まれています。
もしくはモード設定を無効化して解像度を下げることで相対的にフォントは大きくなります。
モードと EDID を強制する
ネイティブな解像度が自動的に設定されなかったり、ディスプレイが全く検出されなかったりする場合、モニタが EDID ファイルを送信していなかったり、間違った EDID を送信しているのかもしれません。カーネルはこのようなケースを検出し、最も典型的な解像度のどれかを設定します。
モニタの EDID ファイルを持っているならば、そのファイルを明示的に強制するだけで済みます (以下を参照)。しかし、大抵はまともな EDID ファイルへ直接アクセスできないので、既存の EDID ファイルを抽出するか、新しいものを生成する必要があります。
上流のドキュメントに従うことで (短いガイドはこのページを参照してください)、カーネルのコンパイル中に様々な解像度や構成の EDID バイナリを生成することができます。他の解決策はこの記事で詳細に説明されています。
既存の EDID ファイルを抽出することは、大抵のケースで簡単です。例えば、あなたのモニタが Windows でうまく動作するならば、対応するドライバから EDID を抽出することができます。また、まともな設定のある似たようなモニタが動作するのであれば、read-edid パッケージの get-edid(1) を使うことができます。また、/sys/class/drm/*/edid
から探してみることもできます。
EDID の準備ができたら、何かしらのディレクトリ (例えば、/usr/lib/firmware
内の edid
ディレクトリ) 内に置き、そこへバイナリをコピーしてください。
EDID をブート時にロードするには、以下のカーネルコマンドラインを指定してください:
drm.edid_firmware=edid/your_edid.bin
4.13 より前のカーネルでは、代わりに以下のカーネルパラメータを使用してください:
drm_kms_helper.edid_firmware=edid/your_edid.bin
特定のコネクタに対してのみ EDID を適用するには、以下を使用してください:
drm.edid_firmware=VGA-1:edid/your_edid.bin
複数の EDID ファイルを使用したい場合は、以下を使用してください:
drm.edid_firmware=VGA-1:edid/your_edid.bin,VGA-2:edid/your_other_edid.bin
組み込みの解像度の場合は、以下の表を参照してください。名前 列は、その解像度を構成するために使用する必要がある名前です。
解像度 | 名前 |
---|---|
800x600 | edid/800x600.bin |
1024x768 | edid/1024x768.bin |
1280x1024 | edid/1280x1024.bin |
1600x1200 (カーネル 3.10 以上) | edid/1600x1200.bin |
1680x1050 | edid/1680x1050.bin |
1920x1080 | edid/1920x1080.bin |
早期 KMSを行っている場合は、カスタムの EDID ファイルを initramfs 内に含めなければなりません。さもないと、問題が発生します。
drm.edid_firmware
パラメータの値は、/sys/module/drm/parameters/edid_firmware
に書き込むことで、ブート後にも変更することができます:
# echo edid/your_edid.bin > /sys/module/drm/parameters/edid_firmware
これは、新しく接続されたディスプレイにしか影響せず、すでに接続されている画面は引き続き既存の EDID 設定を使用します。外部ディスプレイの場合は、ディスプレイのケーブルを抜き差しすることで、新しい EDID を使用させることができます。
カーネル 3.15 から、カーネルがロックダウンモードになっていない場合、カーネルコマンドラインパラメータではなく debugfs を使って ブート後に EDID をロードできます。これは、1つのコネクタに接続されているモニタを交換する場合や、単にテストをしたい場合に便利です。上記のとおりに EDID ファイルを手に入れたら、以下を実行してください:
# cat correct-edid.bin > /sys/kernel/debug/dri/0/HDMI-A-2/edid_override
EDID を無効化するには:
# echo -n reset > /sys/kernel/debug/dri/0/HDMI-A-2/edid_override
モニターがホットプラグに対応している場合、ホットプラグをトリガーすることで、(edid_override
などに) ロードした新しい EDID をモニターに使用させることができます。この場合、モニターを物理的に再接続したり、再起動したりする必要がありません:
# echo 1 > /sys/kernel/debug/dri/0/HDMI-A-2/trigger_hotplug
モードを強制する
the nouveau wiki より:
- カーネルコマンドラインでモードを強制することができます。残念ながら、コマンドラインオプションの video は DRM の場合、ドキュメントが不十分です。使い方の断片は、以下のサイトにあります。
フォーマットは
video=<conn>:<xres>x<yres>[M][R][-<bpp>][@<refresh>][i][m][eDd]
<conn>
: コネクタ、例: DVI-I-1、使用可能なコネクタは/sys/class/drm/
を参照<xres> x <yres>
: 解像度M
: CVT モードを計算?R
: ブランキングを減らす?-<bpp>
: 色深度@<refresh>
: リフレッシュレートi
: インターレース (非CVTモード)m
: 余白?e
: 出力は強制的にオンにするd
: 出力は強制的にオフにされるD
: デジタル出力を強制的にオン (例:DVI-I コネクタ)
例えば、video=
を複数回使って、DVI
を1024x768、85 Hzに、TV-out
をオフに強制する、といったように複数の出力モードをオーバーライドすることが可能です:
video=DVI-I-1:1024x768@85 video=TV-1:d
コネクタの名前と現在の状態を取得するには、以下のシェルワンライナーを使用できます:
$ for p in /sys/class/drm/*/status; do con=${p%/status}; echo -n "${con#*/card?-}: "; cat $p; done
DVI-I-1: connected HDMI-A-1: disconnected VGA-1: disconnected
モード設定を無効にする
様々な理由で KMS を無効化したい場合があるでしょう。KMS を無効化するには、nomodeset
をカーネルパラメータに追加してください。詳細は カーネルパラメータ を見てください。
nomodeset
カーネルパラメータと共に、Intel グラフィックカードの場合は i915.modeset=0
も、Nvidia グラフィックカードの場合は nouveau.modeset=0
も追加する必要があります。Nvidia Optimus のデュアルグラフィック環境では、これら3つのカーネルパラメータをすべて追加する必要があります (つまり、"nomodeset i915.modeset=0 nouveau.modeset=0"
)。