Bash

提供: ArchWiki
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Bash (Bourne-again Shell) は GNU プロジェクトによるコマンドラインシェル/プログラミング言語です。Bash という名前は、長い間非推奨であった Bourne shell という先祖の名前のオマージュから来ています。Bash は GNU/Linux を含むほとんどの UNIX ライクなオペレーティングシステムで動作します。

Bash は、Arch Linux のデフォルトのコマンドラインシェルです。

実行

Bash は、起動の仕方によって動作が変わります。以下、一部のモードについて説明します。

Bash が TTY 内で login コマンドによって呼び出された場合や、SSH デーモンによって呼び出された場合、その他の似たような方法によって呼び出された場合、ログインシェルとみなされます。また、-l/--login コマンドラインオプションを使用した場合も、このモードが有効化されます。

Bash の標準入力、標準出力、そして標準エラー出力がターミナルに接続されていて (例えば、ターミナル内で実行された場合)、かつ、-c オプションも非オプション引数 (例えば bash スクリプト) も使用されずに起動された場合、インタラクティブシェルとみなされます。全てのインタラクティブシェルは /etc/bash.bashrc~/.bashrc を読み込んで実行します。一方、インタラクティブなログインシェルは、これらに加えて /etc/profile~/.bash_profile も読み込んで実行します。

ノート: Arch Linux では、/bin/sh (かつては Bourne シェル実行ファイルでした) は /bin/bash へのシンボリックリンクとなっています。Bash が sh という名前で実行された場合、過去のバージョンの sh の起動時の動作を模倣しようとします (POSIX 互換性も含む)。

設定ファイル

Bash は一連のスタートアップファイルを実行しようと試みます。読み込まれるファイルは、Bash がどのように実行されたかに依存します。完全な説明は、GNU Bash マニュアルの Bash Startup Files 章を参照してください。

ファイル 説明 ログインシェル (以下のノートを参照) インタラクティブ (非ログインシェル)
/etc/profile /etc/profile.d/*.sh/etc/bash.bashrc のアプリケーションの設定を source します。 Yes No
~/.bash_profile ユーザ毎の設定ファイルです。/etc/profile のあとに読み込まれます。このファイルが存在しない場合、~/.bash_login~/.profile がこの順番でチェックされます。スケルトンファイル /etc/skel/.bash_profile~/.bashrc も読み込みます。 Yes No
~/.bash_logout ユーザ毎の設定ファイル。ログインシェルが終了する際に実行されます。 Yes No
/etc/bash.bash_logout このファイルが読み込まれるかどうかは、-DSYS_BASH_LOGOUT="/etc/bash.bash_logout" コンパイルフラグに依存します。ログインシェルの終了時に実行されます。 Yes No
/etc/bash.bashrc このファイルが読み込まれるかどうかは、-DSYS_BASHRC="/etc/bash.bashrc" コンパイルフラグに依存します。このファイルは /usr/share/bash-completion/bash_completion を読み込みます。 No Yes
~/.bashrc ユーザ毎の設定ファイル。/etc/bash.bashrc の後に読み込まれます。 No Yes
ノート:
  • ログインシェルは、--login 引数付きで呼び出された場合に非インタラクティブになり得ます。
  • インタラクティブな非ログインシェルは、~/.bash_profile読み込みません。ですが、依然として親プロセスの環境変数を継承します (親プロセスがログインシェルであっても)。詳細は https://mywiki.wooledge.org/ProcessManagement#On_processes.2C_environments_and_inheritance を参照してください。

シェルと環境変数

Bash、及び Bash によって実行されるプログラムの動作は、様々な環境変数による影響を受ける可能性があります。環境変数は、コマンドが探索されるディレクトリのリストや、どのブラウザを使用するかなど、有用な値を保存するために使用されます。新しいシェルやスクリプトが実行された際、そのプロセスは親プロセスの変数を継承します。つまり、内部のシェル変数を持った状態で起動されるわけです [1]

Bash 内のシェル変数を環境変数とするには、export する必要があります:

VARIABLE=content
export VARIABLE

これは、以下のようにショートカットすることも可能です:

export VARIABLE=content

伝統的に環境変数は、他の Bourne 互換のシェルも使用できるようにするために、~/.profile/etc/profile 内で定義されます。

より一般的な情報は 環境変数 を参照してください。

コマンドライン

Bash のコマンドラインは Readline という名前の別のライブラリによって処理されています。Readline は、コマンドラインと対話 (つまり、単語単位で前後に移動したり、単語を削除したりなど) するための emacsvi スタイルのショートカットを提供しています。また、入力したコマンドの履歴を管理するのも Readline の仕事です。最後に、また重要なことですが、Readline はマクロの作成も可能にします。

タブ補完

タブ補完とは、Tab を押すことによって入力済みのコマンドを自動補完するオプションです (デフォルトで有効)。

シングルタブ

コマンドの補完候補を全て表示するにはタブを最大で3回押す必要があります。タブを押す回数を減らしたい場合は、Readline#高速な補完 を参照してください。

よく使われるプログラムとオプション

デフォルトでは、Bash によってタブ補完されるのはコマンド、ファイル名、そして変数のみです。bash-completion をインストールすると、よく使われるコマンドとオプションに対するタブ補完も追加されます。この補完は、/usr/share/bash-completion/bash_completionsource することで有効化することができます (このファイルは Arch Linux の /etc/bash.bashrc で既に source されています)。bash-completion を使うと、($ ls file.*<tab><tab> などの) 通常の補完も挙動が変化しますが、$ compopt -o bashdefault program によって元に戻すことができます (詳しくは [2][3] を参照)。

コマンド毎にカスタマイズする

ノート: complete 組み込みコマンドを使用すると、bash-completion と競合する場合があります。

デフォルトでは、Bash はコマンドの後のファイル名しかタブ補完しません。complete -c を使うことで、コマンド名も補完できるようにできます:

~/.bashrc
complete -c man which

また、-cf でコマンド名とファイル名を補完できます:

complete -cf sudo

その他の補完オプションは bash(1) § Programmable Completion を見てください。

履歴

履歴による補完

上下キーを Bash 履歴の検索に割り当てることができます (Readline#履歴Readline Init File Syntax を参照):

~/.bashrc
bind '"\e[A": history-search-backward'
bind '"\e[B": history-search-forward'

あるいは、全ての readline プログラムに適用するには:

~/.inputrc
"\e[A": history-search-backward
"\e[B": history-search-forward

履歴のカスタマイズ

HISTCONTROL 変数により、特定のコマンドを履歴に残さないようにできます。

連続する同じコマンドを記録しない:

~/.bashrc
export HISTCONTROL=ignoredups

同じコマンドは、一番最後を除いて記録しない:

~/.bashrc
export HISTCONTROL=erasedups

空白で始まるコマンドは記録しない:

~/.bashrc
export HISTCONTROL=ignorespace

連続する同じコマンド、及び空白で始まるコマンドは記録しない:

~/.bashrc
export HISTCONTROL=ignoreboth

同じコマンドは、一番最後を除いて記録せず、さらに空白で始まるコマンドも記録しない:

~/.bashrc
export HISTCONTROL="erasedups:ignorespace"

詳細は bash(1) § HISTCONTROL を参照してください。

履歴を無効にする

一時的に Bash の履歴を無効化するには:

$ set +o history

以降、入力されたコマンドは $HISTFILE に記録されません。

これで、機密情報をディスクに残すことなく、printf シークレット | sha256sum でパスワードのハッシュ値を計算したり、gpg -eaF secret-pubkey.asc などの GPG の使用履歴を隠蔽したりできるようになります。

履歴を有効化するには:

$ set -o history

全ての Bash 履歴を無効化するには:

~/.bashrc or /etc/profile
export HISTSIZE=0

...そして、念のため、古い履歴ファイルを完全に削除してください:

$ wipe -i -l2 -x4 -p4 "$HISTFILE"
$ ln -sv /dev/null "$HISTFILE"

Zsh の run-help 機能を模倣する

Zsh では Alt+h を押すことで、入力したコマンドのマニュアルを呼び出すことができます。Readline の bind を使うことで Bash でも同じようにできます:

~/.bashrc
run-help() { help "$READLINE_LINE" 2>/dev/null || man "$READLINE_LINE"; }
bind -m vi-insert -x '"\eh": run-help'
bind -m emacs -x     '"\eh": run-help'

上記では、(デフォルトの) Emacs 編集モードを使用していることを前提としています。

エイリアス

alias は、ある単語の別名を定義するコマンドです。システムコマンドを短縮したり、日頃使っているコマンドにデフォルトの引数を追加したりするために使用されます。

ユーザ毎のエイリアスは、~/.bashrc に定義するか、別のファイルに記述して ~/.bashrc からそのファイルを source することができます。システム全体で使用される (つまり、全てのユーザに適用される) エイリアスは /etc/bash.bashrc に記述します。エイリアスの例は [4] を見てください。

関数については、Bash/関数 を参照してください。

ヒントとテクニック

プロンプトのカスタマイズ

Bash/プロンプトのカスタマイズを見てください。

シンタックスハイライトとオートサジェスト機能

ble.sh は Readline を置き換える、純粋な Bash で書かれたコマンドラインエディタです。シンタックスハイライト、オートサジェスト、メニュー補完、略語、Vim 編集モード、フック関数など、多くの拡張機能を備えています。

インストール後、対話型セッションで Source を実行してください。設定は ~/.blerc ファイルと wiki で詳しく説明されています。

command not found

pkgfile には "command not found" フックが含まれており、認識できないコマンドを入力すると、自動的に公式リポジトリを検索します。

このフックを有効にするには、例えば以下のように source する必要があります。

~/.bashrc
source /usr/share/doc/pkgfile/command-not-found.bash

その後、利用できないコマンドを実行しようとすると、次のような情報が表示されます。

$ abiword
abiword may be found in the following packages:
  extra/abiword 3.0.1-2	/usr/bin/abiword
ノート: 動作させる前に、pkgfileデータベースを更新する必要があるかもしれません。 詳しくは pkgfile#Installation を参照してください。

代替の "command not found" フックは command-not-foundAUR で提供されており、以下のようになります。

$ abiword
The command 'abiword' is provided by the following packages:
abiword (2.8.6-7) from extra
	[ abiword ]
abiword (2.8.6-7) from staging
	[ abiword ]
abiword (2.8.6-7) from testing
	[ abiword ]

ターミナルで Ctrl+z を無効化

コマンドを以下のようにすることで Ctrl+z 機能 (アプリケーションの停止/終了) を無効化できます:

#!/bin/bash
trap "" 20
adom

これで adomAURShift+z の代わりに間違って Ctrl+z を押してしまっても Ctrl+z は無視されるため何も起こりません。

ログアウト後に画面をクリア

仮想コンソールでログアウト後に画面を消去するには:

~/.bash_logout
clear
reset

パスを入力したら自動で "cd"

シェルにパスだけを入力したとき Bash に cd を自動で前につけるようにすることができます。例えば通常は以下のようになりますが:

$ /etc
bash: /etc: Is a directory

.bashrc に以下の設定を追加すると:

~/.bashrc
shopt -s autocd

次の通り:

[user@host ~] $ /etc
cd /etc
[user@host etc]

Autojump

autojumpAUR を使うことでユーザーが頻繁に使用しているパスが記録されたデータベースを検索してファイルシステムを移動できます。

パッケージをインストールしたら /etc/profile.d/autojump.bashSource することで使えるようになります。

代替品としては zoxide があり、オリジナルの autojump と比べて機能が追加され、性能も向上しています。

ファイルの上書きを防止する

現在のセッションで、シェル出力のリダイレクトによって既存の通常ファイルが上書きされないようにするためです。

$ set -o noclobber

これは set -C と同じです。

変更をユーザーのために永続的にするためには

~/.bashrc
...
set -o noclobber

noclobber を設定した状態で、手動でファイルを上書きする場合。

$ echo "output" >| file.txt

ディレクトリスタックを使用して移動する

pushdpopd を使用すると、ディレクトリに切り替えるときにスタックにディレクトリをプッシュまたはポップできます。これは、ナビゲーション履歴を 再生 するのに役立ちます。

[user@host ~] pushd /tmp/dir1
[user@host /tmp/dir1] pushd /var/lib
[user@host/var/lib] popd
[user@host/tmp/dir1] popd
[user@host ~]

bash(1) § DIRSTACK を参照してください。

トラブルシューティング

ウィンドウをリサイズした時の行の折り返し

ターミナルエミュレータのウィンドウサイズを変更した時、Bash はリサイズシグナルを受け取れないことがあります。そうすると入力したテキストが正しく折り返されずにプロンプトをはみ出してしまいます。checkwinsize シェルオプションはコマンドごとにウィンドウサイズの確認を行い、必要ならば、LINESCOLUMNS の値を更新します。

~/.bashrc
shopt -s checkwinsize

ignoreeof が設定されているのにシェルが終了する

ignoreeof オプションを設定したのに何度も ctrl-d を押すとシェルが終了するのは、このオプションではこのキーバインド (正確には EOF 文字列) を押しても10回まではシェルが終了しないようになっているためです。

回数を上げるには、IGNOREEOF 変数を設定してください。例:

export IGNOREEOF=100

スクリプトを解析してエラーをチェックする機能

パッケージ shellcheck は bash (および他のシェル) スクリプトを解析し、考えられるエラーを表示し、よりよいコーディングを提案します。

また、このプログラムをベースにした同じ目的のウェブサイト shellcheck.net も存在します。


参照

チュートリアル

コミュニティ

サンプル