GIMP/CMYK サポート

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この記事では Separate+ プラグインを使って Gimp の基本的な CMYK サポートを有効にして、カラープルーフフィルタを使用して画像をソフトプルーフする方法を説明します。CMYK カラーと DTP に関する一般的な説明も行います。

イントロダクション

Gimp の Separate+ プラグインをインストールする前に、本当に必要なのかどうか知る必要があります。

Gimp を使用することのメリットについては様々な議論があります。最も激しい議論は Gimp が CMYK モードをサポートしていないということです。ただし、CMYK については DTP のプロ以外のユーザー (写真家・ウェブアートデザイナー・ホームユーザー) にはあまり重要ではありません。

CMYK カラーモデル (または CMYK モード) は商業印刷の世界で画像を出力するのに DTP の専門家によって使われています。平均的なホームユーザーからプロの写真家くらいであれば CMYK カラーを使用して画像を色分割する必要はありません。

インクジェット・カラーレーザープリンターを使うときにシアン・マゼンタ・イエロー・ブラックのカートリッジを見たことがあるかもしれませんが、プリンターを使うのに CMYK ファイルが必要というわけではありません。大抵のプリンターは RGB 画像しか認識しないか、あるいは内部的に CMYK 画像を RGB に変換しています。

制限

プロプライエタリなツールと比べると以下の方法にはいくつか制限事項があります。Separate+ は GCR (Grey Component Replacement、グレー成分置換) と UCR (Undercolor Removal、下色除去) をサポートしていません。

下色除去は Scribus でサポートされていますが、グレー成分置換はサポートしているグラフィカルツールが Linux に存在しません。

要件

Gimp と Separate+ プラグイン、そして ICC プロファイルが必要です。どれも AUR からインストールが可能です。

CMYK カラーモデルについて

理論に興味がない場合は、CMYK カラーと Gimp の見出しまでスキップしてください。

まず、一般的に知られている CMYK モード の正式名称は CMYK カラーモデル です。これは、色を記述する標準的な方法を表すため、カラーモデル と呼ばれます。

このカラーモデルは、加法的カラーモデル (RGB カラーモデル) とは対照的に、減法的カラーモデルとも呼ばれます。加法的、減法的という言葉は、色の知覚に不可欠な光が目に届くまでに加減されることを示唆しています。原色の選択は、レッド、グリーン、ブルー (RGB の場合)、またはシアン、マゼンタ、イエロー (CMYK の場合) の組み合わせが、目に見える最も広い範囲の色を作り出すという信念に基づいています。

光の減算は、インクに降り注ぐ光の一部を吸収することで起こり。残りは反射して私たちの目に届きます。インクによって吸収する光のスペクトルが異なるため、C-M-Y インクを組み合わせることで、さまざまな色を作り出すことができます。

理想的には、すべての光を差し引くと、つまりシアン、マゼンタ、イエローを完全な濃度で混ぜ合わせると、黒 (つまり、光が反射せず、インクに完全に吸収された状態) になるはずです。しかし、インクが半透明で、下の白い紙が光の一部を反射するため、現実の世界では通常、これは当てはまりません。印刷で黒インクを追加使用するのは (CMYKK は Key、または blacK を意味します)、これは画像に必要な濃度を追加し、黒を にします。

商業印刷機で画像を印刷する場合、一度に一次 (または黒) を印刷する必要があります。そのため、オリジナル (通常はデジタル RGB 画像、または印刷された写真) をシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各成分に分ける必要があります。

この種の分離がサポートされていないため、DTP プロフェッショナルにとって Gimp は魅力的ではありませんでした。

ICC カラープロファイルについて

RGB と CMYK の両方の色の再現は、画像の生成に使用されるデバイス (またはインク) に固有であるため、色空間の概念が発明されました。色空間は、物理的な色と、それを記述するために使用するカラーモデルの関係を定式化します。これらの関係 (機能) は、ICC プロファイルの形式でファイルとしてパッケージ化できます。

ICC プロファイルは、モニター、スキャナー、印刷機などのシステム内で色が再現される方法を記述するために使用されます。印刷用に画像を分離するときは、ソースプロファイル (分離する画像の色空間) とターゲットプロファイル (画像が使用する印刷機の色空間) を使用します。

印刷機に関しては、インクと用紙の組み合わせが標準化されたことで、組織は求めている印刷条件に 一致するはずの プロファイルを作成できるようになりました。これに取り組んでいる組織には、European Color Initiative (ECI)、米国の GRACoL/SWOP 作業グループ、および ISO 12647-2 を備えた ISO が含まれます。どのプロファイルを使用すればよいかわからない場合は、プリンタに問い合わせてください。

CMYK カラーと Gimp

Gimp には完全な CMYK カラーモデルのサポートがありません。CMYK モードでの画像の色分割と編集は今後追加される機能リストの ずっと下の方に位置しています。ただし部分的な解決手段を提供するものとして Separate+ というプラグインが存在します。

Separate+ プラグインには以下の機能があります:

  • RGB 画像を色分割
  • (ICC プロファイルと lcms による) カラーマネジメント
  • 色のソフトプルーフ
  • 色分割した画像ファイルに ICC プロファイルを添付
  • RGB プロファイルの変換
  • デュオトーンのサポート

Gimp 自体にも CMYK に関連する機能が少数ながら存在します:

  • カラーピッカーを使うときに CMYK の値を表示
  • ディスプレイフィルタによるソフトプルーフ (非推奨)
  • カラーマネジメント設定による色のソフトプルーフ

ソフトウェアの入手

Gimp 用の個別のプラグイン

ソース tarball を取得したら、通常の tar コマンドを使用して解凍します。

$ tar xvf separate-version.tar.gz

ここで、バージョン は個別のプラグインのバージョンになります (この記事の執筆時点では 0.1)

Separate という名前のファイル (抽出した Separate ディレクトリ内にあります) を Gimp のプラグインディレクトリにコピーします。

$ cp separate/separate /usr/lib/gimp/version/plug-ins/

ここで、バージョン は Gimp のメジャーバージョン番号 (この記事の執筆時点では 2.0) になります。

Gimp を起動すると、Separate が認識され、Image > Separate メニューからアクセスできるようになります。

Separate+ プラグイン

手動でインストールする場合は、Sourceforge.jp ダウンロードページ から zip ファイルを取得し、解凍して次のコマンドを実行します。:

$ make
# make install

Gimp を起動すると、Image > Separate メニューから Separate+ にアクセスできるようになります。

ICC プロファイルをインストールする

AUR から独立したプラグイン パッケージを使用している場合は、プロファイルがすでにインストールされています。ただし、Separate を自分で構築した場合、または Separate+ を使用している場合は、ICC プロファイルをインストールする必要があります。

AUR からインストールする

AUR から ICC プロファイルをインストールするには eci-iccAURadobe-iccAUR パッケージをダウンロードして makepkg でインストールしてください。

手動でインストール

ICC プロファイルの標準的な置き場所は /usr/share/color/icc です。ディレクトリを作成してプロファイルをそこにコピーしてください。他に ~/.color/icc も使われます。

ICC プロファイルは AdobeECI から入手できます。

ダウンロードした zip ファイルを解凍して CMYK と RGB ディレクトリの中身を /usr/share/color/icc または ~/.color/icc にコピーしてください。

RGB 画像の色分割

Gimp で画像を開いてください。Image メニューから Separate サブメニューを開いて Separate (to Colour) を選択します。

ソース (RGB) とターゲット (CMYK) プロファイルを選択したら OK をクリックしてください。

CMYK カラーバージョンのウィンドウが開きます。5個のレイヤーが存在することを確認できます。

Separate サブメニューから Export... を選択して ICC プロファイルを埋め込んだ TIFF 形式でファイルを保存してください。

CMYK TIFF を作成する前に画像の新しいコピー保存することを推奨します。単層化された画像を色分割だけすることも可能です。

色分割した画像の使用

色分割された画像で作業する場合、CMYK 画像の扱い方を習熟する必要があります。色分割した後に Gimp のレイヤーウィンドウを見れば、色分割が巧妙に行われていることが確認できます。しかしながら、画像の編集は Adobe の Photoshop などのプロプライエタリソフトウェアほどに単純ではありません。

基本として各原色 (と黒) のグレイスケール値を扱う必要があります。全てのツールが使えますが、適用できるのはレイヤーごとでありグレイスケールになります。

ディスプレイフィルタによるソフトプルーフ

完全な CMYK 画像を作成する場合は RGB モードで作業を行い、ソフトプルーフを有効にするのが一番良い方法です。ソフトプルーフとは画面上の表示を最終的な印刷物にあわせる手段です。新しいバージョンの GIMP では、ディスプレイフィルタによってソフトプルーフを使うことができるようになっています。

View メニューから Display Filters... オプションを選択してください。利用可能なフィルタのリストから Color Proof を選択してください (GIMP バージョン 2.2.13 では一番下にあります)。リストの間にある右矢印ボタンをクリックして Color Proof フィルタを有効なフィルタリストに移動してください。フィルタリストのアイテムをクリックするとオプションが表示されます。

上記の方法は簡単ですが、信頼できるソフトプルーフを実現する方法ではありません。ディスプレイフィルタによるソフトプルーフよりも、Gimp のカラーマネジメントシステムを設定して Print simulation モードを有効にすることを推奨します。

インテント

カラープルーフ (レンダリング) インテントは以下のどれかになります:

  • 知覚的 (perceptual)
  • 相対的な色域を維持 (relative colorimetric)
  • 彩度 (saturation)
  • 絶対的な色域を維持 (absolute colorimetric)

Perceptualrelative colorimetric が最も一般的です。

Perceptual はソースの色空間の色域をターゲットの色空間の色域に圧縮・伸長します。

Relative colorimetric インテントはソース空間の白 (白点) を調整してからソース空間の残りの色を調整します。ターゲットの空間に入らないソースの色は一番再現性が高い色にマッピングされます。ソフトウェアによってはプルーフインテントとも呼ばれます。

Saturation インテントはたとえターゲット空間で色が変わるとしてもソースの色の彩度を維持します。実験的なインテントであり、好ましくない結果になる可能性があります。

Absolute colorimetric はソース空間とターゲット空間の重複をそのままにして、ターゲット空間に存在しないソースの色を一番近い色にマッピングします。

プロファイル

通常は画像を印刷するデバイスのプロファイルを使います。テスト用としては上記で説明している Adobe のプロファイルが使えます。

Separate+ のプルーフ機能によるソフトプルーフ

Separate には色のソフトプルーフを行う機能が存在します。動的なソフトプルーフではありません。画像を編集したときに更新はせず、ワンタイムプレビューのように機能します。ただし、Color Proof ディスプレイフィルタによる GIMP のソフトプルーフ機能よりかはずっと正確です。基本的にプルーフ機能は absolute colorimetric インテントを使って画像を RGB 空間に変換します。印刷コピーと一対一で対応します。

Separate のプルーフ機能を使ってソフトプルーフするには、まず画像を色分割して Separate サブメニューから Proof を選択してください。ソースプロファイルは使用しているモニターの RGB プロファイルにします (lprof を使ってモニターをプロファイルして ICC プロファイルを作成できます)。ターゲットプロファイルは画像の出力先の ICC プロファイルにします。

OK をクリックすると画像を印刷するとどのようになるのか RGB 画像が表示されます。

参照

関連ソフトウェア: