「環境変数」の版間の差分

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[[de:Umgebungsvariablen]]
 
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[[en:Environment variables]]
 
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[[ru:Environment variables]]
 
[[ru:Environment variables]]
[[zh-cn:Environment variables]]
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[[zh-hans:Environment variables]]
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{{Related articles start}}
環境変数とは1つ、または複数のアプリケーションによって使用されるデータを含んだ名前付きオブジェクトです。簡単に言えば、名前と値がある変数です。環境変数の値は例えば、実行可能ファイルのファイルシステムにおける場所や使用するデフォルトのエディタ、システムロケールの設定などになります。Linux に慣れてないユーザーは、環境変数で設定をするのは御しがたいと考えがちですが、複数のアプリケーションと Linux のプロセスの設定を共有するシンプルな方法として環境変数が存在しています。
 
  +
{{Related|デフォルトアプリケーション}}
  +
{{Related|systemd/ユーザー#環境変数}}
  +
{{Related articles end}}
  +
環境変数とは 1 つ以上のアプリケーションによって使用されるデータを含む名前付きオブジェクトです。簡単に言えば、名前と値がある変数です。環境変数の値としては、実行可能ファイルのファイルシステムにおける場所や使用するデフォルトのエディタ、システムロケールの設定などがあります。Linux に慣れてないユーザーは、環境変数で設定をするのは御しがたいと考えがちです。しかし、環境変数は、Linux で複数のアプリケーションとプロセスの間で設定を共有するためのシンプルな方法を提供してくれます。
   
 
== ユーティリティ ==
 
== ユーティリティ ==
  +
{{Pkg|coreutils}} パッケージには ''printenv'' と ''env'' というプログラムが入っています。現在設定されている環境変数とその値を表示するには:
 
  +
{{Pkg|coreutils}} パッケージには ''printenv'' と ''env'' というプログラムが含まれています。現在の環境変数とその値を一覧表示するには:
   
 
$ printenv
 
$ printenv
   
{{Note|環境変数の中にはユーザ個別のものも存在します。''printenv'' の出力を非特権ユーザと ''root'' で比較しててください。}}
+
{{Note|環境変数の中にはユーザ個別のものも存在します。''printenv'' の出力を非特権ユーザの場合と ''root'' ユーザの場合で比較して確認してください。}}
   
{{ic|env}} ユーティリティを使うことで環境変数を変更してコマンドを実行することができます。以下の例では環境変数 {{ic|EDITOR}} を {{ic|vim}} に設定して ''xterm'' を起動します。以下のコマンドを実行してもグローバルな環境変数 {{ic|EDITOR}} に影響与えません。
+
''env'' ユーティリティを使うことで環境変数を変更してコマンドを実行することができます。以下の例では環境変数 {{ic|EDITOR}} を {{ic|vim}} に設定して ''xterm'' を起動します。以下のコマンドを実行してもグローバルな {{ic|EDITOR}} 変数影響与えません。
   
 
$ env EDITOR=vim xterm
 
$ env EDITOR=vim xterm
   
[[Bash]] 組み込まれている ''set'' はシェルオプションの値を変更したり、位置のパラメータを設定したり、シェル変数の名前値を表示することができます。詳しくは、''set'' のドキュメントを見て下さい: [http://www.gnu.org/software/bash/manual/bash.html#The-Set-Builtin]
+
[[シェル]] の {{man|1p|set}} 組み込みコマンドを使えば、シェルオプションの値を変更したり、位置のパラメータを設定したり、シェル変数の名前とその値を出力したりできます。
   
特定のプロセスで使われている環境変数を確認したい場合は、{{ic|/proc/${PID}/environ}} を見下さい。このファイルには特殊な {{ic|\x0}} 文字が含まれています。次の関数を使うことでファイルを解析できます。
+
プロセスはその環境変数を {{ic|/proc/$PID/environ}} ファイルに保存しています。このファイルには、ヌル文字 ({{ic|\x0}}) で区切られたキーと値のペアが含まれています。[[sed]] を使用する、より読み易い形式取得できます。例: {{ic|sed 's:\x0:\n:g' /proc/$PID/environ}}
   
  +
== 変数の定義 ==
# envof() { sed 's/\x0/\n/g' /proc/${1}/environ; }
 
# envof 1
 
TERM=linux
 
   
  +
環境を不必要に汚染しないために、変数のスコープを制限するように努めるべきです。実際、グラフィカルセッションや systemd サービスでは、変数を有効にするために特定の場所で設定することが要求されます。環境変数のスコープは、それらが影響を与えるコンテキストに分けられます:
== サンプル ==
 
以下のセクションでは Linux システムで一般的に使われている環境変数を並べており、それぞれの値について説明しています。
 
   
  +
* [[#グローバル|グローバル]]: あらゆるユーザが実行する全プログラム。Systemd サービスは含まれません。
*{{ic|DE}} は使用しているデスクトップ環境 (''D''esktop ''E''nvironment) を示します。[[xdg-open]] はこの環境変数を使ってデスクトップ環境に含まれているユーザーフレンドリーなファイルオープナアプリケーションを選択します。この機能を使うにはインストールする必要があるパッケージが存在します。[[GNOME]] の場合、{{pkg|libgnome}} が必要です。[[Xfce]] の場合、{{pkg|exo}} が必要です。使用される {{ic|DE}} 変数の値: {{ic|gnome}}, {{ic|kde}}, {{ic|xfce}}, {{ic|lxde}}, {{ic|mate}}。
 
  +
* [[#ユーザーごと|ユーザ別]]: 特定のユーザが実行する全プログラム。Systemd ユーザサービス ([[Systemd/ユーザー#環境変数]] を参照) やグラフィカルアプリケーション ([[#グラフィック環境]] を参照) は含まれません。
   
  +
=== グローバル ===
:{{ic|DE}} 環境変数はウィンドウマネージャを起動する前にエクスポートする必要があります。例:
 
   
  +
==== シェルの初期化ファイルを使う ====
{{hc|~/.xinitrc|2=
 
export DE="xfce"
 
exec openbox
 
}}
 
   
  +
大半の Linux ディストリビューションは、あなたに {{ic|/etc/profile}} 等のファイルに環境変数の追加・変更を行うよう指示します。また、{{ic|/etc/locale.conf}} のような変数設定を含むパッケージ固有の設定ファイルがあることも覚えておいてください。環境変数の維持・管理は必ず行い、環境変数を含むことができる多数のファイルに注意を払うようにしてください。原則的に、あらゆるシェルスクリプトは環境変数の初期化に使うことができますが、以下のような UNIX の慣例に従い特定のファイルでのみ行われるべきです。
:上記の設定をすると、Xfce の中で実行されていると認識され ''xdg-open'' がユーザーフレンドリーな ''exo-open'' を使うようになります。,設定したいときは ''exo-preferred-applications'' を使って下さい。
 
   
  +
以下のファイルは、システムのグローバルな環境変数を定義するために使用できますが、それぞれに異なる制限があります:
*{{ic|DESKTOP_SESSION}} は {{ic|DE}} と似ていますが、[[LXDE]] デスクトップ環境で使われています: {{ic|DESKTOP_SESSION}} が {{ic|LXDE}} に設定されている場合、''xdg-open'' は ''pcmanfm'' のファイル関連付けを使います。
 
   
  +
* {{ic|/etc/environment}} は [[#pam_env を使う|pam_env モジュール]]によって使用され、シェルに依存しないため、スクリプトやグロブ展開は使用できません。このファイルは、{{ic|1=''変数=値''}} という形式しか受け入れません。
*{{ic|PATH}} contains a colon-separated list of directories in which your system looks for executable files. When a regular command (e.g., ''ls'', ''rc-update'' or ''ic|emerge'') is interpreted by the shell (e.g., ''bash'' or ''zsh''), the shell looks for an executable file with the same name as your command in the listed directories, and executes it. To run executables that are not listed in {{ic|PATH}}, the absoute path to the executable must be given: {{ic|/bin/ls}}.
 
  +
* {{ic|/etc/profile}} は、ログインシェル''のみ''に対して変数を初期化します。しかし、このファイルはスクリプト (例: {{ic|/etc/profile.d/}} 内にあるファイル) を実行し、すべての [[wikipedia:ja:Bourne Shell|Bourne shell]] 互換シェルで使用することができます。
  +
* シェル固有の設定ファイル - [[シェル]]のグローバルな設定ファイルで、変数の初期化やスクリプトの実行を行います。例えば [[Bash#設定ファイル]] (例: {{ic|~/.bashrc}})) や [[Zsh#スタートアップ/シャットダウン ファイル]] (例: {{ic|~/.zshrc}}) です。
   
  +
以下の例では、複数のディレクトリ (例えば {{ic|~/bin}} と {{ic|~/scripts}}) をそれぞれのユーザーの {{ic|PATH}} に追加する関数を作成しています。これを行うには、以下を任意のグローバル環境変数の設定ファイル ({{ic|/etc/profile}} または {{ic|/etc/bash.bashrc}}) に記述するだけです:
{{Note|It is advised not to include the current working directory ({{ic|.}}) into your {{ic|PATH}} for security reasons, as it may trick the user to execute vicious commands.}}
 
   
  +
{{bc|<nowiki>
*{{ic|HOME}} contains the path to the home directory of the current user. This variable can be used by applications to associate configuration files and such like with the user running it.
 
  +
set_path(){
   
  +
# ユーザ ID が 1000 以上であるか確認する
*{{ic|PWD}} にはワーキングディレクトリのパスが入ります。
 
  +
[ "$(id -u)" -ge 1000 ] || return
   
  +
for i in "$@";
*{{ic|OLDPWD}} には前のワーキングディレクトリのパスが入ります。つまり最後に ''cd'' を実行する前の {{ic|PWD}} です。
 
  +
do
  +
# ディレクトリが存在するか確認する
  +
[ -d "$i" ] || continue
   
  +
# ディレクトリが $PATH に既に存在するか確認する
*{{ic|SHELL}} には実行中の、インタラクティブシェルの名前が入ります。例: {{ic|bash}}。
 
  +
echo "$PATH" | grep -Eq "(^|:)$i(:|$)" && continue
   
  +
# ディレクトリを $PATH の末尾に追加し、export する
*{{ic|TERM}} には実行中のターミナルの名前が入ります。例: {{ic|xterm}}。
 
  +
export PATH="${PATH}:$i"
  +
done
  +
}
   
  +
set_path ~/bin ~/scripts
*{{ic|PAGER}} contains command to run the program used to list the contents of files, e.g., {{ic|/bin/less}}.
 
  +
</nowiki>}}
   
  +
異なるシェル間で環境変数を共有する1つの方法として、{{ic|envsubst}} によって直接読み込むことのできるファイルを、'''コメント、空行、スペース (bash) を含めずに'''、作成するというものがあります ([https://unix.stackexchange.com/questions/176322/share-environment-variables-between-bash-and-fish] から着想を得ました):
*{{ic|EDITOR}} contains the command to run the lightweight program used for editing files, e.g., {{ic|/usr/bin/nano}}. For example, you can write an interactive switch between ''gedit'' under [[Xorg|X]] or ''nano'' in this example):
 
   
  +
{{hc|.env|2=
export EDITOR="$(if <nowiki>[[</nowiki> -n $DISPLAY <nowiki>]]</nowiki>; then echo 'gedit'; else echo 'nano'; fi)"
 
  +
EDITOR=vim
  +
XDG_CACHE_HOME=$HOME/.cache
  +
XDG_CONFIG_HOME=$HOME/.config
  +
XDG_DATA_HOME=$HOME/.local/share
  +
XDG_STATE_HOME=$HOME/.local/state
  +
}}
   
  +
{{hc|bashrc|export $(envsubst < .env)}}
*{{ic|VISUAL}} にはメールの編集など、作業量が多いことをするのに使う、フル機能のエディタを実行するコマンドを指定します (例: {{ic|vi}}, [[vim]], [[emacs]] など)。
 
   
  +
{{hc|config/fish/config.fish|export (envsubst < .env)}}
*{{ic|MAIL}} contains the location of incoming email. The traditional setting is {{ic|/var/spool/mail/$LOGNAME}}.
 
   
  +
==== pam_env を使う ====
*{{ic|BROWSER}} にはウェブブラウザのパスを指定します。インタラクティブシェルの設定ファイルで以下のように設定することで、[[Xorg|X]] など、グラフィカル環境が存在するかどうかで動的にウェブブラウザを変更することが可能です:
 
   
  +
{{man|8|pam_env}} [[PAM]] モジュールは、環境変数の設定を以下のファイルから順番にロードします: {{ic|/etc/security/pam_env.conf}} と {{ic|/etc/environment}} の順です。
if <nowiki>[</nowiki> -n "$DISPLAY" <nowiki>]</nowiki>; then
 
export BROWSER=firefox
 
else
 
export BROWSER=links
 
fi
 
 
*{{ic|ftp_proxy}} と {{ic|http_proxy}} にはそれぞれ FTP と HTTP プロキシサーバーを記述します:
 
ftp_proxy="<nowiki>ftp://192.168.0.1:21</nowiki>"
 
http_proxy="<nowiki>http://192.168.0.1:80</nowiki>"
 
   
  +
{{Note|
*{{ic|MANPATH}} contains a colon-separated list of directories in which ''man'' searches for the man pages.
 
  +
* これらのファイルは、他のファイル、特に、{{ic|~/.profile}}、{{ic|~/.bash_profile}}、{{ic|~/.zshenv}} より前に読み込まれます。
{{Note|In {{ic|/etc/profile}}, there is a comment that states "Man is much better than us at figuring this out", so this variable should generally be left as default, i.e. {{ic|/usr/share/man:/usr/local/share/man}}
 
  +
* 非推奨の {{ic|~/.pam_environment}} はもう読み込まれません。{{Bug|68945}} を参照してください。
 
}}
 
}}
   
  +
{{ic|/etc/environment}} では、{{ic|1=''変数''=''値''}} というペアを1行に1つずつ記述しなければなりません。例:
*{{ic|INFODIR}} contains a colon-separated list of directories in which the info command searches for the info pages, e.g., {{ic|/usr/share/info:/usr/local/share/info}}
 
   
  +
EDITOR=nano
*{{ic|TZ}} can be used to to set a time zone different to the system zone for a user. The zones listed in {{ic|/usr/share/zoneinfo/}} can be used as reference, for example {{ic|1=TZ="/usr/share/zoneinfo/Pacific/Fiji"}}
 
   
  +
{{ic|/etc/security/pam_env.conf}} は以下の形式で記述します:
== 変数の定義 ==
 
   
  +
VARIABLE [DEFAULT=''value''] [OVERRIDE=''value'']
[[Systemd/ユーザー#環境変数]]も見て下さい。
 
   
  +
{{ic|@{HOME} }} と {{ic|@{SHELL} }} は、{{ic|/etc/passwd}} で定義されているものに拡張される特別な変数です。次の例は、{{ic|HOME}} 環境変数を別の変数に展開する方法を示しています:
=== グローバル ===
 
   
  +
XDG_CONFIG_HOME DEFAULT=@{HOME}/.config
Most Linux distributions tell you to change or add environment variable definitions in {{ic|/etc/profile}} or other locations. Be sure to maintain and manage the environment variables and pay attention to the numerous files that can contain environment variables. In principle, any shell script can be used for initializing environmental variables, but following traditional UNIX conventions, these statements should be only be present in some particular files.
 
   
  +
{{Note|変数 {{ic|${HOME} }} および {{ic|${SHELL} }} は、{{ic|HOME}} および {{ic|SHELL}} 環境変数にはリンクされていません。これらはデフォルトでは設定されていません。}}
The following files should be used for defining global environment variables on your system: {{ic|/etc/profile}}, {{ic|/etc/bash.bashrc}} and {{ic|/etc/environment}}. Each of these files has different limitations, so you should carefully select the appropriate one for your purposes.
 
   
  +
また、この形式では、{{ic|${''VARIABLE''} }} を使って、既に定義されている変数を他の変数の値で展開することができます。例えば:
*{{ic|/etc/profile}} initializes variables for login shells ''only''. It does, however, run scripts and can be used all [[wikipedia:Bourne shell|Bourne shell]] compatible shells.
 
*{{ic|/etc/bash.bashrc}} initializes variables for interactive shells ''only''. It also runs scripts but (as its name implies) is Bash specific.
 
*{{ic|/etc/environment}} is used by the PAM-env module and is agnostic to login/non-login, interactive/non-interactive and also Bash/non-Bash, so scripting or glob expansion cannot be used. The file only accepts {{ic|1=''variable=value''}} pairs.
 
   
  +
GOPATH DEFAULT=${XDG_DATA_HOME}/go
In this example, we add {{ic|~/bin}} directory to the {{ic|PATH}} for respective user. To do this, just put this in your preferred global environment variable config file ({{ic|/etc/profile}} or {{ic|/etc/bash.bashrc}}):
 
   
  +
{{ic|1=''VARIABLE''=''value''}} のペアも可能ですが、これらのペアでは変数の展開はサポートされていません。詳しくは {{man|5|pam_env.conf}} を参照してください。
{{bc|<nowiki>
 
# If user ID is greater than or equal to 1000 & if ~/bin exists and is a directory & if ~/bin is not already in your $PATH
 
# then export ~/bin to your $PATH.
 
if [[ $UID -ge 1000 && -d $HOME/bin && -z $(echo $PATH | grep -o $HOME/bin) ]]
 
then
 
export PATH=$HOME/bin:${PATH}
 
fi
 
</nowiki>}}
 
   
 
=== ユーザーごと ===
 
=== ユーザーごと ===
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環境変数をグローバルに定義したくないという時もあるでしょう。例えば、{{ic|PATH}} に {{ic|/home/my_user/bin}} を追加したいが、システム上の他のユーザーには同じ {{ic|PATH}} を使って欲しくないという場合が考えられます。様々なファイルを使うことでローカルに環境変数を定義することができます:
 
環境変数をグローバルに定義したくないという時もあるでしょう。例えば、{{ic|PATH}} に {{ic|/home/my_user/bin}} を追加したいが、システム上の他のユーザーには同じ {{ic|PATH}} を使って欲しくないという場合が考えられます。様々なファイルを使うことでローカルに環境変数を定義することができます:
   
# シェルの設定ファイル例えば [[Bash#設定ファイル]] や [[Zsh#設定ファイル]]。
+
* [[シェル]]ユーザ設定ファイル例えば[[Bash#設定ファイル]] や [[Zsh#スタートアップ/シャットダウン ファイル]]。
  +
** あなたが開くターミナル (例: コマンドラインアプリケーションのみ) に変数のスコープを制限しない限り、ログインシェルの変数も変更されます。
# {{ic|~/.profile}} は多数のシェルによってフォールバックとして使われます。[[wikipedia:Unix_shell#Configuration_files_for_shells]] を参照。
 
  +
* [[systemd/ユーザー#環境変数|systemd ユーザ環境変数]]は {{ic|~/.config/environment.d/*.conf}} から読み込まれます。
# {{ic|~/.pam_environment}} は {{ic|/etc/environment}} のユーザー個別の設定で、PAM-env モジュールによって使われます。詳しくは {{ic|pam_env(8)}} を参照。
 
   
 
ローカルで {{ic|PATH}} にディレクトリを追加したい場合、以下のように {{ic|~/.bash_profile}} に記述します:
 
ローカルで {{ic|PATH}} にディレクトリを追加したい場合、以下のように {{ic|~/.bash_profile}} に記述します:
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export PATH="${PATH}:/home/my_user/bin"
 
export PATH="${PATH}:/home/my_user/bin"
   
変数をアップデートするために、再ログインするかファイルを ''source'' してください: {{ic|$ source ~/.bash_profile}}。
+
変数をアップデートするために、再ログインするかファイルを [[source]] してください: {{ic|$ source ~/.bash_profile}}。
   
  +
{{Note|dbus デーモンや systemd のユーザインスタンスは、{{ic|~/.bashrc}} などのような場所で設定された環境変数を継承しません。これはつまり、dbus によってアクティブ化されたプログラム ([[GNOME Files]] など) は、そのような変数をデフォルトで使用しないことを意味します。[[Systemd/ユーザー#環境変数]] を参照してください。}}
==== グラフィカルアプリケーション ====
 
   
GUI アプリケーション環境変数を設定したいきは、[[xinitrc]] ([[ディスプレイマネジャ]]を使う場合 [[xprofile]]) に変数を記述することができます。例:
+
{{Tip|{{ic|export -p}} を実行することで、ユザセッションに対して宣言されたグローバルな環境変数とカルな環境変数をることができます。}}
   
  +
==== グラフィック環境 ====
{{hc|1=~/.xinitrc|2=
 
export PATH="${PATH}:~/scripts"
 
export GUIVAR=value}}
 
   
  +
環境変数がグラフィカルなアプリケーションにしか影響しない場合は、グラフィカルセッション内でのみ設定することにより、その範囲を制限することができます。スコープを大きい順に並べると:
=== セッションごと ===
 
   
  +
* [[#Xorg セッションごと]] および [[#Wayland セッションごと]] - DE を含むグラフィカルセッション全体に影響します。
Sometimes even stricter definitions are required. One might want to temporarily run executables from a specific directory created without having to type the absolute path to each one, or editing {{ic|~/.bash_profile}} for the short time needed to run them.
 
  +
* [[#デスクトップ環境セッションごと]] - グラフィカルセッション内で生成されたアプリケーションに影響を与えます。DE 自体にも影響を与える可能性があります。
  +
* [[#アプリケーションごと]] - 特定のグラフィカル アプリケーションだけに影響します。
   
  +
===== デスクトップ環境セッションごと =====
In this case, you can define the {{ic|PATH}} variable in your current session, combined with the ''export'' command. As long as you do not log out, the {{ic|PATH}} variable will be using the temporary settings. To add a session-specific directory to {{ic|PATH}}, issue:
 
  +
  +
一部のグラフィカル環境 (例えば [[KDE Plasma]]) は、ログイン時のシェルスクリプト実行をサポートしており、環境変数の設定に利用することができます。例としては [[KDE#自動起動]] を参照してください。
  +
  +
===== Xorg セッションごと =====
  +
  +
Xorg セッションの環境を変更する手順は、Xorg セッションの起動方法によって異なります:
  +
* ほとんどの[[ディスプレイマネージャ]]は [[xprofile]] を読み込みます。
  +
* [[startx]] と [[SLiM]] は [[xinitrc]] を実行します。
  +
* [[XDM]] は {{ic|~/.xsession}} を実行します: [[XDM#セッションの定義]] を参照して下さい。
  +
* [[SDDM]] は、追加でログインシェルのスタートアップスクリプト ([[Bash]] の場合は {{ic|~/.bash_profile}}、[[Zsh]] のの場合は {{ic|~/.zlogin}}) も読み込みます。[https://github.com/sddm/sddm/blob/master/data/scripts/Xsession]
  +
  +
スクリプトの終わりはどのファイルであるかに依存し、高度な構文は使用するシェルに依存しますが、基本的な使い方は普遍的です:
  +
  +
{{hc|~/.xprofile, ~/.xinitrc, or ~/.xsession|2=
  +
...
  +
export ''GUI_VAR''=''value''
  +
...
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}}
  +
  +
===== Wayland セッションごと =====
  +
  +
[[Wayland]] は Xorg 関連のファイルを起動しないので、[[GDM]] と [[KDE Plasma]] は代わりに [[systemd/ユーザー#環境変数|systemd ユーザ環境変数]]を読み込みます。
  +
  +
{{hc|~/.config/environment.d/envvars.conf|2=
  +
''GUI_VAR''=''value''
  +
}}
  +
  +
Wayland セッションをサポートする他のディスプレイマネージャ (例: [[SDDM]]) は、まだこれを直接はサポートしていません。しかし、[[SDDM]] はログインシェルのスタートアップスクリプトを Wayland セッションでも読み込みます。
  +
  +
{{ic|~/.bash_profile}} などのスタートアップスクリプトを読み込むディスプレイマネージャを使用していて、{{ic|environment.d}} を使用したい場合、以下のように読み込むことができます:
  +
  +
{{hc|~/.bash_profile|
  +
# systemd-environment-d-generator(8) を使って環境を生成し、変数を export する
  +
export $(run-parts /usr/lib/systemd/user-environment-generators {{!}} xargs)
  +
}}
  +
  +
{{Note|上記のコードは {{ic|/usr/lib/systemd/user-environment-generators}} 内の全ての実行ファイルを実行します。これは、望ましくない場合があります。代わりに {{ic|/usr/lib/systemd/user-environment-generators/30-systemd-environment-d-generator}} を直接実行することもできます。}}
  +
  +
===== アプリケーションごと =====
  +
  +
セッション全体ではなく、特定のアプリケーションにのみ環境変数を設定するには、そのアプリケーションの ''.desktop'' ファイルを編集してください。その方法は [[デスクトップエントリ#環境変数の変更]] を参照してください。
  +
  +
[[Steam]] ゲームでは、起動オプションを編集することでプログラムの環境を設定することができます。[[Steam#起動オプション]] を参照してください。
  +
  +
=== セッションまたはシェルごと ===
  +
  +
時として、一時的な変数のみが必要である場合もあります。作成した特定のディレクトリ内の実行ファイルを実行する際に一時的に絶対パスを入力する手間を省きたい場合や、一時的な短いシェルスクリプトでそのパスを使用したい場合があるでしょう。
  +
  +
例えば、現在のシェルに {{ic|PATH}} 変数を定義できますし、あるいは ''export'' コマンドを使えばセッションからログアウトするまで全てのシェルで有効な {{ic|PATH}} 変数を定義することもできます。セッション固有のディレクトリを {{ic|PATH}} に追加するには、以下を実行してください:
   
 
$ export PATH="${PATH}:/home/my_user/tmp/usr/bin"
 
$ export PATH="${PATH}:/home/my_user/tmp/usr/bin"
  +
  +
シェル固有のディレクトリだけを {{ic|PATH}} に追加するには、以下を実行してください:
  +
$ PATH="${PATH}:/home/my_user/tmp/usr/bin"
  +
  +
== 例 ==
  +
  +
以下のセクションでは Linux システムで一般的に使われている環境変数を並べており、それぞれの値について説明しています。
  +
  +
* {{ic|XDG_CURRENT_DESKTOP}} は [[freedesktop.org]] の変数であり、現在の[[デスクトップ環境]]を識別する文字列のリストをコロンで区切って格納しています [https://specifications.freedesktop.org/mime-apps-spec/1.0.1/ar01s02.html]。活発に開発されている環境の標準的な値は、{{ic|GNOME}}、{{ic|GNOME-Flashback}}、{{ic|KDE}}、{{ic|LXDE}}、{{ic|LXQt}}、{{ic|MATE}}、{{ic|TDE}}、{{ic|Unity}}、{{ic|XFCE}}、{{ic|EDE}}、{{ic|Cinnamon}}、{{ic|Pantheon}}、そして {{ic|DDE}} です [https://specifications.freedesktop.org/menu-spec/latest/apb.html]。
  +
** [https://bugs.freedesktop.org/show_bug.cgi?id=73497 Cinnamon は他のデスクトップ環境より遅れて登録されました]。そのため、まだ登録前の値 {{ic|X-CINNAMON}} を期待するソフトウェアがあるかもしれません (最近の [[Qt]] バージョン 6.3 など) [https://github.com/qt/qtbase/blob/6.3/src/gui/platform/unix/qgenericunixthemes.cpp#L858]。
  +
  +
* {{ic|XDG_SESSION_DESKTOP}} は {{ic|XDG_CURRENT_DESKTOP}} に似ていますが、単一の文字列しか許可しません。その名前にもかかわらず、[https://gitlab.gnome.org/GNOME/gtk/-/issues/1224#note_270915 これは freedesktop.org によって標準化されていません]。
  +
  +
* {{ic|DE}} は使用中のデスクトップ環境 (''d''esktop ''e''nvironment) を示すレガシー変数です。どのような値を取りうるかについての中心的なドキュメントはありませんが、[[xdg-utils#環境変数|xdg-utils]] は多くのデスクトップ環境についてのリファレンスを提供しています。
  +
  +
* {{ic|DESKTOP_SESSION}} もレガシーな変数です。{{ic|DE}} に似ていますが、より一般的ではありません。セッションの ({{ic|/usr/share/xsessions/}} 内の) [[デスクトップエントリ]]へのパスを格納できます [https://github.com/qt/qtbase/blob/6.3/src/gui/platform/unix/qgenericunixservices.cpp#L92-L107]。
  +
  +
* {{ic|WINDOW_MANAGER}} は、デスクトップ環境で使用する[[ウィンドウマネージャ]]を''選択''するために時々使われる変数です。他のプログラムが読み取るために、既に選択されているディスプレイマネージャやデスクトップ環境によって設定される他の変数とは対照的です。
  +
  +
* {{ic|PATH}} には、コロンで区切られたディレクトリのリストが格納されています。システムは、この変数に登録されているディレクトリから実行ファイルを探索します。通常のコマンド (例: ''ls''、''systemctl''、''pacman'') がシェル (''bash'' や ''zsh'' など) によって解釈される際、シェルは {{ic|PATH}} のリスト内のディレクトリからそのコマンドと同じ名前の実行ファイルを探索し、それを実行します。{{ic|PATH}} に含まれないディレクトリにある実行ファイルを実行するには、実行ファイルへの相対パスや絶対パスを指定する必要があります。例えば、{{ic|./a.out}} や {{ic|/bin/ls}} です。
  +
  +
{{Note|セキュリティ上の理由により {{ic|PATH}} にはカレント作業ディレクトリ ({{ic|.}}) を含めないことが推奨されます。ユーザが騙されて、悪意のあるコマンドを実行してしまうかもしれないからです。}}
  +
  +
* {{ic|HOME}} には現在のユーザのホームディレクトリへのパスが格納されます。この変数は、アプリケーションが現在のユーザに関連した設定ファイル等を見つけるために使うことができます。
  +
  +
* {{ic|PWD}} には[[Wikipedia:ja:Pwd|作業ディレクトリへのパス]]が入ります。
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* {{ic|OLDPWD}} には前のワーキングディレクトリへのパスが入ります。つまり最後に ''cd'' を実行する前の {{ic|PWD}} です。
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* {{ic|TERM}} には、実行中のターミナル (''term''inal) の種類が格納されます (例: {{ic|xterm-256color}})。この変数は、ターミナル固有の機能を期待する、ターミナル内で実行されるプログラムによって使用されます。
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* {{ic|MAIL}} には、受信したメールの保存場所が入ります。伝統的な設定は {{ic|/var/spool/mail/$LOGNAME}} です。
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* {{ic|ftp_proxy}} と {{ic|http_proxy}} にはそれぞれ FTP と HTTP プロキシサーバーを記述します:
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ftp_proxy="<nowiki>ftp://192.168.0.1:21</nowiki>"
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http_proxy="<nowiki>http://192.168.0.1:80</nowiki>"
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* {{ic|MANPATH}} には、''man'' が man ページを探索するディレクトリのリストがコンマで区切られて格納されます。
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{{Note|{{ic|/etc/profile}} に "Man is much better than us at figuring this out" (man は我々よりずっと上手くこれを解決する) と書いてあるとおり、一般的にこの変数はデフォルトのままにしておくべきです。 {{man|5|manpath}} を参照。}}
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* {{ic|INFODIR}} には、''info'' コマンドが info ページを探索するディレクトリのリストがコンマで区切られて格納されます。例: {{ic|/usr/share/info:/usr/local/share/info}}。
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* {{ic|TZ}} は、ユーザ毎にシステムのタイムゾーンとは異なるタイムゾーンを設定するために使用することができます。{{ic|/usr/share/zoneinfo/}} 内にはタイムゾーンが列挙されているので、これをリファレンスとして使用することができます (例: {{ic|1=TZ=":/usr/share/zoneinfo/Pacific/Fiji"}})。変数 {{ic|TZ}} に zoneinfo ファイルを指定する場合、[https://www.gnu.org/software/libc/manual/html_node/TZ-Variable.html GNU マニュアル] に従ってコロンで始める必要があります。
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=== デフォルトプログラム ===
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* {{ic|SHELL}} にはユーザの[https://pubs.opengroup.org/onlinepubs/9699919799/basedefs/V1_chap08.html#tag_08_03 優先シェル]へのパスが含まれます。この変数の値は、現在実行中のシェルである必要はないことに注意してください。この変数に値がない場合、[[Bash]] は自動的に {{ic|/etc/passwd}} で定義されているユーザのログインシェルに設定するか、判断できない場合は {{ic|/bin/sh}} にします。
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* {{ic|PAGER}} には、ファイルの内容を一覧表示するために使用されるプログラムを実行するコマンドが含まれます。例: {{ic|/bin/less}}。
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* {{ic|EDITOR}} には、ファイルの編集に使用される軽量プログラムを実行するコマンドが含まれています (例:{{ic|/usr/bin/nano}})。例えば、以下の例のように、[[X]] 下では ''gedit'' を使い、それ以外では ''nano'' を使うように設定するインタラクティブスイッチを記述することができます:
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[ -n "$DISPLAY" ] && export EDITOR=gedit || export EDITOR=nano
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* {{ic|VISUAL}} には、メールの編集などより高度な作業に使われる本格的なエディタを実行するコマンドが含まれています (例: {{ic|vi}}、[[vim]]、[[emacs]] など)。
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* {{ic|BROWSER}} にはウェブブラウザへのパスが含まれています。グラフィカル環境 ([[X]] など) が利用できるかに応じてこの変数を動的に変更するようなコードをインタラクティブシェルの設定ファイルに記述しておくと便利です:
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[ -n "$DISPLAY" ] && export BROWSER=firefox || export BROWSER=links
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{{Tip|{{ic|WAYLAND_DISPLAY}} 環境変数を使うことで、[[Wayland#コンポジタ|Wayland コンポジタ]]が実行されているかどうかに応じてこれらのデフォルトプログラムを設定することができます。}}
   
 
== 参照 ==
 
== 参照 ==
   
* [https://wiki.gentoo.org/wiki/Handbook:X86/Working/EnvVar/ja Gentoo Linux ドキュメント]
+
* [[Gentoo:Handbook:X86/Working/EnvVar]]
  +
* [https://help.ubuntu.com/community/EnvironmentVariables Ubuntu Community Wiki - Environment Variables]
* [[デフォルトアプリケーション]]
 
  +
* [[Xdg-open]]
 
  +
{{TranslationStatus|Environment variables|2023-06-04|779961}}

2024年1月17日 (水) 17:11時点における最新版

関連記事

環境変数とは 1 つ以上のアプリケーションによって使用されるデータを含む名前付きオブジェクトです。簡単に言えば、名前と値がある変数です。環境変数の値としては、実行可能ファイルのファイルシステムにおける場所や使用するデフォルトのエディタ、システムロケールの設定などがあります。Linux に慣れてないユーザーは、環境変数で設定をするのは御しがたいと考えがちです。しかし、環境変数は、Linux で複数のアプリケーションとプロセスの間で設定を共有するためのシンプルな方法を提供してくれます。

ユーティリティ

coreutils パッケージには printenvenv というプログラムが含まれています。現在の環境変数とその値を一覧表示するには:

$ printenv
ノート: 環境変数の中にはユーザ個別のものも存在します。printenv の出力を非特権ユーザの場合と root ユーザの場合で比較して確認してください。

env ユーティリティを使うことで、環境変数を変更してコマンドを実行することができます。以下の例では、環境変数 EDITORvim に設定して xterm を起動します。以下のコマンドを実行しても、グローバルな EDITOR 変数には影響を与えません。

$ env EDITOR=vim xterm

シェルset(1p) 組み込みコマンドを使えば、シェルオプションの値を変更したり、位置のパラメータを設定したり、シェル変数の名前とその値を出力したりできます。

各プロセスはその環境変数を /proc/$PID/environ ファイルに保存しています。このファイルには、ヌル文字 (\x0) で区切られたキーと値のペアが含まれています。sed を使用すると、より読み易い形式で取得できます。例: sed 's:\x0:\n:g' /proc/$PID/environ

変数の定義

環境を不必要に汚染しないために、変数のスコープを制限するように努めるべきです。実際、グラフィカルセッションや systemd サービスでは、変数を有効にするために特定の場所で設定することが要求されます。環境変数のスコープは、それらが影響を与えるコンテキストに分けられます:

グローバル

シェルの初期化ファイルを使う

大半の Linux ディストリビューションは、あなたに /etc/profile 等のファイルに環境変数の追加・変更を行うよう指示します。また、/etc/locale.conf のような変数設定を含むパッケージ固有の設定ファイルがあることも覚えておいてください。環境変数の維持・管理は必ず行い、環境変数を含むことができる多数のファイルに注意を払うようにしてください。原則的に、あらゆるシェルスクリプトは環境変数の初期化に使うことができますが、以下のような UNIX の慣例に従い特定のファイルでのみ行われるべきです。

以下のファイルは、システムのグローバルな環境変数を定義するために使用できますが、それぞれに異なる制限があります:

  • /etc/environmentpam_env モジュールによって使用され、シェルに依存しないため、スクリプトやグロブ展開は使用できません。このファイルは、変数=値 という形式しか受け入れません。
  • /etc/profile は、ログインシェルのみに対して変数を初期化します。しかし、このファイルはスクリプト (例: /etc/profile.d/ 内にあるファイル) を実行し、すべての Bourne shell 互換シェルで使用することができます。
  • シェル固有の設定ファイル - シェルのグローバルな設定ファイルで、変数の初期化やスクリプトの実行を行います。例えば Bash#設定ファイル (例: ~/.bashrc)) や Zsh#スタートアップ/シャットダウン ファイル (例: ~/.zshrc) です。

以下の例では、複数のディレクトリ (例えば ~/bin~/scripts) をそれぞれのユーザーの PATH に追加する関数を作成しています。これを行うには、以下を任意のグローバル環境変数の設定ファイル (/etc/profile または /etc/bash.bashrc) に記述するだけです:

set_path(){

    # ユーザ ID が 1000 以上であるか確認する
    [ "$(id -u)" -ge 1000 ] || return

    for i in "$@";
    do
        # ディレクトリが存在するか確認する
        [ -d "$i" ] || continue

        # ディレクトリが $PATH に既に存在するか確認する
        echo "$PATH" | grep -Eq "(^|:)$i(:|$)" && continue

        # ディレクトリを $PATH の末尾に追加し、export する
        export PATH="${PATH}:$i"
    done
}

set_path ~/bin ~/scripts

異なるシェル間で環境変数を共有する1つの方法として、envsubst によって直接読み込むことのできるファイルを、コメント、空行、スペース (bash) を含めずに、作成するというものがあります ([1] から着想を得ました):

.env
EDITOR=vim
XDG_CACHE_HOME=$HOME/.cache
XDG_CONFIG_HOME=$HOME/.config
XDG_DATA_HOME=$HOME/.local/share
XDG_STATE_HOME=$HOME/.local/state
bashrc
export $(envsubst < .env)
config/fish/config.fish
export (envsubst < .env)

pam_env を使う

pam_env(8) PAM モジュールは、環境変数の設定を以下のファイルから順番にロードします: /etc/security/pam_env.conf/etc/environment の順です。

ノート:
  • これらのファイルは、他のファイル、特に、~/.profile~/.bash_profile~/.zshenv より前に読み込まれます。
  • 非推奨の ~/.pam_environment はもう読み込まれません。FS#68945 を参照してください。

/etc/environment では、変数= というペアを1行に1つずつ記述しなければなりません。例:

EDITOR=nano

/etc/security/pam_env.conf は以下の形式で記述します:

VARIABLE [DEFAULT=value] [OVERRIDE=value]

@{HOME} @{SHELL} は、/etc/passwd で定義されているものに拡張される特別な変数です。次の例は、HOME 環境変数を別の変数に展開する方法を示しています:

XDG_CONFIG_HOME   DEFAULT=@{HOME}/.config
ノート: 変数 ${HOME} および ${SHELL} は、HOME および SHELL 環境変数にはリンクされていません。これらはデフォルトでは設定されていません。

また、この形式では、${VARIABLE} を使って、既に定義されている変数を他の変数の値で展開することができます。例えば:

GOPATH DEFAULT=${XDG_DATA_HOME}/go

VARIABLE=value のペアも可能ですが、これらのペアでは変数の展開はサポートされていません。詳しくは pam_env.conf(5) を参照してください。

ユーザーごと

環境変数をグローバルに定義したくないという時もあるでしょう。例えば、PATH/home/my_user/bin を追加したいが、システム上の他のユーザーには同じ PATH を使って欲しくないという場合が考えられます。様々なファイルを使うことでローカルに環境変数を定義することができます:

ローカルで PATH にディレクトリを追加したい場合、以下のように ~/.bash_profile に記述します:

export PATH="${PATH}:/home/my_user/bin"

変数をアップデートするために、再ログインするかファイルを source してください: $ source ~/.bash_profile

ノート: dbus デーモンや systemd のユーザインスタンスは、~/.bashrc などのような場所で設定された環境変数を継承しません。これはつまり、dbus によってアクティブ化されたプログラム (GNOME Files など) は、そのような変数をデフォルトで使用しないことを意味します。Systemd/ユーザー#環境変数 を参照してください。
ヒント: export -p を実行することで、ユーザセッションに対して宣言されたグローバルな環境変数とローカルな環境変数を見ることができます。

グラフィック環境

環境変数がグラフィカルなアプリケーションにしか影響しない場合は、グラフィカルセッション内でのみ設定することにより、その範囲を制限することができます。スコープを大きい順に並べると:

デスクトップ環境セッションごと

一部のグラフィカル環境 (例えば KDE Plasma) は、ログイン時のシェルスクリプト実行をサポートしており、環境変数の設定に利用することができます。例としては KDE#自動起動 を参照してください。

Xorg セッションごと

Xorg セッションの環境を変更する手順は、Xorg セッションの起動方法によって異なります:

スクリプトの終わりはどのファイルであるかに依存し、高度な構文は使用するシェルに依存しますが、基本的な使い方は普遍的です:

~/.xprofile, ~/.xinitrc, or ~/.xsession
...
export GUI_VAR=value
...
Wayland セッションごと

Wayland は Xorg 関連のファイルを起動しないので、GDMKDE Plasma は代わりに systemd ユーザ環境変数を読み込みます。

~/.config/environment.d/envvars.conf
GUI_VAR=value

Wayland セッションをサポートする他のディスプレイマネージャ (例: SDDM) は、まだこれを直接はサポートしていません。しかし、SDDM はログインシェルのスタートアップスクリプトを Wayland セッションでも読み込みます。

~/.bash_profile などのスタートアップスクリプトを読み込むディスプレイマネージャを使用していて、environment.d を使用したい場合、以下のように読み込むことができます:

~/.bash_profile
# systemd-environment-d-generator(8) を使って環境を生成し、変数を export する
export $(run-parts /usr/lib/systemd/user-environment-generators | xargs)
ノート: 上記のコードは /usr/lib/systemd/user-environment-generators 内の全ての実行ファイルを実行します。これは、望ましくない場合があります。代わりに /usr/lib/systemd/user-environment-generators/30-systemd-environment-d-generator を直接実行することもできます。
アプリケーションごと

セッション全体ではなく、特定のアプリケーションにのみ環境変数を設定するには、そのアプリケーションの .desktop ファイルを編集してください。その方法は デスクトップエントリ#環境変数の変更 を参照してください。

Steam ゲームでは、起動オプションを編集することでプログラムの環境を設定することができます。Steam#起動オプション を参照してください。

セッションまたはシェルごと

時として、一時的な変数のみが必要である場合もあります。作成した特定のディレクトリ内の実行ファイルを実行する際に一時的に絶対パスを入力する手間を省きたい場合や、一時的な短いシェルスクリプトでそのパスを使用したい場合があるでしょう。

例えば、現在のシェルに PATH 変数を定義できますし、あるいは export コマンドを使えばセッションからログアウトするまで全てのシェルで有効な PATH 変数を定義することもできます。セッション固有のディレクトリを PATH に追加するには、以下を実行してください:

$ export PATH="${PATH}:/home/my_user/tmp/usr/bin"

シェル固有のディレクトリだけを PATH に追加するには、以下を実行してください:

$ PATH="${PATH}:/home/my_user/tmp/usr/bin"

以下のセクションでは Linux システムで一般的に使われている環境変数を並べており、それぞれの値について説明しています。

  • DE は使用中のデスクトップ環境 (desktop environment) を示すレガシー変数です。どのような値を取りうるかについての中心的なドキュメントはありませんが、xdg-utils は多くのデスクトップ環境についてのリファレンスを提供しています。
  • DESKTOP_SESSION もレガシーな変数です。DE に似ていますが、より一般的ではありません。セッションの (/usr/share/xsessions/ 内の) デスクトップエントリへのパスを格納できます [6]
  • WINDOW_MANAGER は、デスクトップ環境で使用するウィンドウマネージャ選択するために時々使われる変数です。他のプログラムが読み取るために、既に選択されているディスプレイマネージャやデスクトップ環境によって設定される他の変数とは対照的です。
  • PATH には、コロンで区切られたディレクトリのリストが格納されています。システムは、この変数に登録されているディレクトリから実行ファイルを探索します。通常のコマンド (例: lssystemctlpacman) がシェル (bashzsh など) によって解釈される際、シェルは PATH のリスト内のディレクトリからそのコマンドと同じ名前の実行ファイルを探索し、それを実行します。PATH に含まれないディレクトリにある実行ファイルを実行するには、実行ファイルへの相対パスや絶対パスを指定する必要があります。例えば、./a.out/bin/ls です。
ノート: セキュリティ上の理由により PATH にはカレント作業ディレクトリ (.) を含めないことが推奨されます。ユーザが騙されて、悪意のあるコマンドを実行してしまうかもしれないからです。
  • HOME には現在のユーザのホームディレクトリへのパスが格納されます。この変数は、アプリケーションが現在のユーザに関連した設定ファイル等を見つけるために使うことができます。
  • OLDPWD には前のワーキングディレクトリへのパスが入ります。つまり最後に cd を実行する前の PWD です。
  • TERM には、実行中のターミナル (terminal) の種類が格納されます (例: xterm-256color)。この変数は、ターミナル固有の機能を期待する、ターミナル内で実行されるプログラムによって使用されます。
  • MAIL には、受信したメールの保存場所が入ります。伝統的な設定は /var/spool/mail/$LOGNAME です。
  • ftp_proxyhttp_proxy にはそれぞれ FTP と HTTP プロキシサーバーを記述します:
ftp_proxy="ftp://192.168.0.1:21"
http_proxy="http://192.168.0.1:80"
  • MANPATH には、man が man ページを探索するディレクトリのリストがコンマで区切られて格納されます。
ノート: /etc/profile に "Man is much better than us at figuring this out" (man は我々よりずっと上手くこれを解決する) と書いてあるとおり、一般的にこの変数はデフォルトのままにしておくべきです。 manpath(5) を参照。
  • INFODIR には、info コマンドが info ページを探索するディレクトリのリストがコンマで区切られて格納されます。例: /usr/share/info:/usr/local/share/info
  • TZ は、ユーザ毎にシステムのタイムゾーンとは異なるタイムゾーンを設定するために使用することができます。/usr/share/zoneinfo/ 内にはタイムゾーンが列挙されているので、これをリファレンスとして使用することができます (例: TZ=":/usr/share/zoneinfo/Pacific/Fiji")。変数 TZ に zoneinfo ファイルを指定する場合、GNU マニュアル に従ってコロンで始める必要があります。

デフォルトプログラム

  • SHELL にはユーザの優先シェルへのパスが含まれます。この変数の値は、現在実行中のシェルである必要はないことに注意してください。この変数に値がない場合、Bash は自動的に /etc/passwd で定義されているユーザのログインシェルに設定するか、判断できない場合は /bin/sh にします。
  • PAGER には、ファイルの内容を一覧表示するために使用されるプログラムを実行するコマンドが含まれます。例: /bin/less
  • EDITOR には、ファイルの編集に使用される軽量プログラムを実行するコマンドが含まれています (例:/usr/bin/nano)。例えば、以下の例のように、X 下では gedit を使い、それ以外では nano を使うように設定するインタラクティブスイッチを記述することができます:
[ -n "$DISPLAY" ] && export EDITOR=gedit || export EDITOR=nano
  • VISUAL には、メールの編集などより高度な作業に使われる本格的なエディタを実行するコマンドが含まれています (例: vivimemacs など)。
  • BROWSER にはウェブブラウザへのパスが含まれています。グラフィカル環境 (X など) が利用できるかに応じてこの変数を動的に変更するようなコードをインタラクティブシェルの設定ファイルに記述しておくと便利です:
[ -n "$DISPLAY" ] && export BROWSER=firefox || export BROWSER=links
ヒント: WAYLAND_DISPLAY 環境変数を使うことで、Wayland コンポジタが実行されているかどうかに応じてこれらのデフォルトプログラムを設定することができます。

参照

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