「ネットワーク設定」の版間の差分
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ACTION=="add", SUBSYSTEM=="net", KERNEL=="wl*", ATTR{mtu}="1480", ATTR{tx_queue_len}="2000"}} |
ACTION=="add", SUBSYSTEM=="net", KERNEL=="wl*", ATTR{mtu}="1480", ATTR{tx_queue_len}="2000"}} |
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=== ネットワークインターフェースの有効化・無効化 === |
=== ネットワークインターフェースの有効化・無効化 === |
2022年1月13日 (木) 12:33時点における版
このページではネットワークの有線接続を設定する方法を説明しています。無線ネットワークを設定する必要がある場合はワイヤレス設定のページを見てください。
目次
接続の確認
Ping
多くの場合、インストールするだけで動作するネットワーク設定がすでに作られています。接続を確認するには、ping(8) を使います:
$ ping www.google.com
PING www.l.google.com (74.125.132.105) 56(84) bytes of data. 64 bytes from wb-in-f105.1e100.net (74.125.132.105): icmp_req=1 ttl=50 time=17.0 ms ...
ping が成功したことが確認できたら (上記の 64 bytes メッセージでわかります)、ネットワークは設定されています。Control-C
を押して ping を停止してください。
Unknown hosts エラーで ping が失敗する場合、そのメッセージはあなたのマシンではドメインの解決ができなかったことを意味しています。おそらくあなたのサービスプロバイダやルーター・ゲートウェイに関連しています。マシンがインターネットにアクセスできることを証明するために固定 IP アドレスに ping して見てください:
$ ping 8.8.8.8
PING 8.8.8.8 (8.8.8.8) 56(84) bytes of data. 64 bytes from 8.8.8.8: icmp_req=1 ttl=53 time=52.9 ms ...
8.8.8.8
に ping することができても www.google.com
に ping できない場合は、DNS の設定を確認してください。詳しくは resolv.conf を見てください。また、/etc/nsswitch.conf
の hosts
行も確認してください。
上記どちらの ping も失敗する場合、まずケーブルに問題がないか確認してから更に詳しい診断を行なってください。
ホストネームの設定
hostname とは、ネットワーク上でマシンを識別するために作られる唯一の(ユニークな)名前であり、/etc/hostname
に設定します (詳しくは hostname(5) と hostname(7) を参照)。このファイルにはシステムのドメイン名を含めることもできます。ホストネームを設定するには /etc/hostname
を編集し、myhostname
の1行を書いてください (実際にはあなたの好きな名前を使ってください):
/etc/hostname
myhostname
上記の方法の代わりに、hostnamectl(1) を使うこともできます:
# hostnamectl set-hostname myhostname
hostname を一時的に設定するには、inetutils の hostname(1) を使います (再起動するまで有効):
# hostname myhostname
"pretty" hostname や他のマシンのメタデータを設定する方法は、machine-info(5) § https://www.freedesktop.org/software/systemd/man/machine-info.html を参照してください。
ローカルネットワークのホストネーム解決
先にホストネームの設定が必須です。設定後は、自分のホストネームを使って自分自身を解決することができます:
$ ping myhostname
PING myhostname (192.168.1.2) 56(84) bytes of data. 64 bytes from myhostname (192.168.1.2): icmp_seq=1 ttl=64 time=0.043 ms
他のマシンにも名前によってホストを割り当てるには、次のどちらかの操作が必要です:
- hosts(5) ファイルを編集する。
- ホストネームを解決するサービスを有効化する。
hosts ファイルを設定する場合、以下のような行を /etc/hosts
に追記します:
127.0.1.1 myhostname.localdomain myhostname
上記の操作により、システムは両方のエントリのホストネームを解決するようになります:
$ getent hosts 127.0.0.1 localhost 127.0.1.1 myhostname.localdomain myhostname
永続的な IP アドレスが割り当てられたコンピュータを追加する場合、127.0.1.1
ではなく永続的なアドレスを使うべきです。
デバイスドライバ
ドライバの状態の確認
udev があなたのネットワークインタフェースカード (NIC を参照) を検知し、必要なモジュールを起動時に自動でロードします。lspci -v
のアウトプットから "Ethernet controller" エントリ(かそれに類似したもの)をチェックしてください。どのカーネルモジュールがネットワークデバイスのためのドライバを含んでいるかわかります。例:
$ lspci -v
02:00.0 Ethernet controller: Attansic Technology Corp. L1 Gigabit Ethernet Adapter (rev b0) ... Kernel driver in use: atl1 Kernel modules: atl1
次に、dmesg | grep module_name
でドライバがロードされたかチェックします。例:
$ dmesg | grep atl1 ... atl1 0000:02:00.0: eth0 link is up 100 Mbps full duplex
ドライバがきちんとロードされている場合は次のセクションはスキップしてください。そうでないならば、あなたの使っているモデルのために必要なモジュールを知る必要があります。
デバイスモジュールのロード
チップセットに必要なモジュール・ドライバをインターネットで検索してください。Realtek のチップセットを使っているカードには 8139too
が、SiS のチップセットを使っているカードには sis900
が一般的に使われるモジュールです。どのモジュールを使うべきかがわかったら、手動でモジュールをロードしてみてください。モジュールが見つからないというエラーが表示される場合、Arch カーネルにドライバーが含まれていないのかもしれません。モジュールの名前で AUR を検索できます。
起動時に udev が自動で正しいモジュールを検知・ロードしない場合、カーネルモジュール#ロードを見てください。
ネットワークインターフェース
デバイス名
NIC が統合されたマザーボードでは、デバイス名を固定することが重要です。設定の問題の多くはインターフェイスの名前が変わってしまうことが原因です。
どのデバイスがどの名前になるかは udev によって決まります。Systemd v197 から Predictable Network Interface Names が導入され、ネットワークデバイスに固定された名前を自動的に割り当てるようになりました。現在、インターフェースの名前は enp0s25
のように、先頭に en
(イーサネット) wl
(WLAN) ww
(WWAN) が付き、後ろに自動生成された識別子が付くようになっています。この名前の付け方を止めさせるにはカーネルコマンドラインに net.ifnames=0
を追加してください。
現在のデバイス名を取得
現在の NIC の名前は sysfs
や ip link
で確認できます。例:
$ ls /sys/class/net
lo enp0s3
$ ip link
1: lo: <LOOPBACK,UP,LOWER_UP> mtu 65536 qdisc noqueue state UNKNOWN mode DEFAULT group default link/loopback 00:00:00:00:00:00 brd 00:00:00:00:00:00 2: enp0s3: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc fq_codel state UP mode DEFAULT group default qlen 1000 link/ether 08:00:27:23:6f:3a brd ff:ff:ff:ff:ff:ff
無線デバイスの名前は iw dev
で取得できます。詳しくはワイヤレス設定#情報を取得するを参照。
デバイス名の変更
udev ルールを作ることで名前を手動で定義してデバイス名を変更することができます。例:
/etc/udev/rules.d/10-network.rules
SUBSYSTEM=="net", ACTION=="add", ATTR{address}=="aa:bb:cc:dd:ee:ff", NAME="net1" SUBSYSTEM=="net", ACTION=="add", ATTR{address}=="ff:ee:dd:cc:bb:aa", NAME="net0"
上記のルールは起動時に自動的に適用されます。
注意事項:
- カードの MAC アドレスを取得するには、次のコマンドを使ってください:
cat /sys/class/net/device-name/address
- udev ルールでは小文字の16進数を使うようにしてください。大文字は使ってはいけません。
ネットワークカードに MAC が動的に割り当てられている場合は、DEVPATH
を使うことができます。例:
/etc/udev/rules.d/10-network.rules
SUBSYSTEM=="net", DEVPATH=="/devices/platform/wemac.*", NAME="int" SUBSYSTEM=="net", DEVPATH=="/devices/pci*/*1c.0/*/net/*", NAME="en"
ルールは起動時に複数回実行されることがあるので、デバイスのパスは新しいデバイス名と古いデバイス名両方にマッチする必要があります。例えば、2番目のルールで、"/devices/pci*/*1c.0/*/net/enp*"
と設定すると困ったことになります。名前が en
に変更されるとマッチしなくなるからです。システムのデフォルトルールだけが再度適用され、名前が enp1s0
などに戻ります。
ルールをテストしたい場合、ユーザー空間から直接テストすることができます (例: udevadm --debug test /sys/DEVPATH
)。名前を変更する前にインターフェイスは落としておいてください (例: ip link set down enp1s0
)。
伝統的なデバイス名に戻す
eth0 などの伝統的なインターフェイス名に戻したい場合、次のコマンドで Predictable Network Interface Names を無効にできます:
# ln -s /dev/null /etc/udev/rules.d/80-net-setup-link.rules
MTU とキューの長さの設定
udev ルールを使って手動で定義することでデバイスの MTU とキューの長さを変更することができます。例:
/etc/udev/rules.d/10-network.rules
ACTION=="add", SUBSYSTEM=="net", KERNEL=="wl*", ATTR{mtu}="1480", ATTR{tx_queue_len}="2000"
mtu
: Using a value larger than 1500 (so called jumbo frames) can significantly speed up your network transfers. Note that all network interfaces, including switches in the local network, must support the same MTU in order to use jumbo frames. For PPPoE, the MTU should not be larger than 1492. You can also set MTU via systemd.netdev(5).
tx_queue_len
: Small value for slower devices with a high latency like modem links and ISDN. High value is recommended for server connected over the high-speed internet connections that perform large data transfers.
ネットワークインターフェースの有効化・無効化
ネットワークインターフェースを有効化・無効化するには以下のコマンドを使います:
# ip link set インターフェイス名 up # ip link set インターフェイス名 down
eth0
インターフェイスの状態を確認するには:
$ ip link show dev eth0
2: eth0: <BROADCAST,MULTICAST,PROMISC,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc pfifo_fast master br0 state UP mode DEFAULT qlen 1000 ...
IP アドレスの設定
2つ選択肢があります: DHCP を使った動的に割り当てられるアドレスか、不変の"固定"アドレスです。アプリケーション一覧#ネットワーク管理も参照してください。
動的 IP アドレス
systemd-networkd
systemd による systemd-networkd を使って DHCP を簡単に設定することができます。systemd-networkd#基本的な DHCP ネットワーク を見てください。
dhcpcd
dhcpcd は Arch Linux の ISO で DHCP を設定するのに使われているデフォルトのクライアントです。これは様々な DHCP クライアントオプションの設定が可能な強力なツールです。特定のインターフェースを指定して起動する方法は dhcpcd#実行 を見てください。
dhclient
dhclient は Internet Systems Consortium の DHCP クライアントです。dhclient@interface.service
を有効化してください。interface
は有線のデバイス名に置き換えてください。詳しくは dhclient や dhclient.conf を見てください。
netctl
netctl は、ユーザーが作成したプロファイルを通してネットワークの接続を設定・管理する CLI ベースのツールです。netctl#サンプルプロファイル で示されている例のようにプロファイルを作成し、netctl#基本的な方法で述べられているようにして有効化してください。
固定 IP アドレス
Arch Linux に存在するネットワークツールのほとんどで固定アドレスを設定することができます。どのツールを選ぶかに関わらず、おそらく以下の情報が準備に必要になるでしょう:
- 固定 IP アドレス
- サブネットマスク、または場合によっては CIDR の表記。例えば
/24
は255.255.255.0
の CIDR 表記です。 - ブロードキャストアドレス
- ゲートウェイの IP アドレス
- ネームサーバ (DNS) の IP アドレス。resolv.conf を参照。
プライベートネットワークを使っている場合、IP アドレスには 192.168.*.*
を、サブネットマスクには 255.255.255.0
を、ブロードキャストアドレスには 192.168.*.255
を使う方が安全です。ゲートウェイは通例 192.168.*.1
か 192.168.*.254
です。
netctl
固定 IP の netctl プロファイルを作成するには、IP=static
オプションを設定し、Address
、Gateway
、DNS
も同様に設定してください。 netctl#有線を見てください。
systemd-networkd
systemd により提供される systemd-networkd サービスは、シンプルな設定ファイルを使って固定 IP をセットアップすることができます。 systemd-networkd#有線アダプタで固定 IP を使用を見てください。
dhcpcd
dhcpcd#固定プロファイルを見てください。
手動で割り当てる
iproute2 のみを使って固定 IP を手動でセットアップすることができます。この方法では再起動すると設定が消えるので、接続設定をテストするときに使ってみると良いでしょう。まずネットワークインターフェースを有効化します:
# ip link set interface up
コンソールから固定 IP アドレスを割り当てます:
# ip addr add IP_address/subnet_mask broadcast broadcast_address dev interface
そしてゲートウェイ IP アドレスを追加します:
# ip route add default via default_gateway
例:
# ip link set eth0 up # ip addr add 192.168.1.2/24 broadcast 192.168.1.255 dev eth0 # ip route add default via 192.168.1.1
上記の手順を取り消すには (例えば動的 IP に切り替える前に)、まず割り当てた IP アドレスをすべて削除します:
# ip addr flush dev interface
次に割り当てたゲートウェイをすべて削除します:
# ip route flush dev interface
最後にインターフェイスを無効化します:
# ip link set interface down
オプションについての詳細は ip(8)
の man ページを見てください。上記のコマンドはスクリプトと systemd ユニットを使って自動化できます。
アドレス計算
ipcalc パッケージによって提供される ipcalc
を使うことで、より高度な設定のために、IP ブロードキャスト、ネットワーク、ネットマスク、ホストの範囲を計算することができます。例えば、firewire ごしのイーサネットを使って Windows マシンと Arch を接続している場合、セキュリティやネットワークの管理のために、ネットマスクとブロードキャストが設定されたネットワークに置くことでその2つのマシンだけがネットワークが使えるようになります。
このためにネットマスクとブロードキャストアドレスを計算するには、ipcalc
を使って、arch の firewire nic の IP 10.66.66.1
で計算して、ホストが2つだけのネットワークを作成させます。
$ ipcalc -nb 10.66.66.1 -s 1
Address: 10.66.66.1 Netmask: 255.255.255.252 = 30 Network: 10.66.66.0/30 HostMin: 10.66.66.1 HostMax: 10.66.66.2 Broadcast: 10.66.66.3 Hosts/Net: 2 Class A, Private Internet
ヒントとテクニック
ラップトップのための ifplugd
公式リポジトリにある ifplugd は、ケーブルが接続された時にイーサネットデバイスを自動で設定し、ケーブルが抜かれた時に自動で設定を解除するデーモンを提供します。これはオンボードのネットワークアダプタを持っているラップトップで役に立ちます。なぜならケーブルが実際に接続されているときだけインターフェースを設定するからです。他にも、ネットワークをリスタートしたいがコンピュータの再起動をしたりシェルを使いたくないときに役に立ちます。
デフォルトでは ifplugd は eth0
デバイスで動作するように設定されています。デバイスや遅延時間などは /etc/ifplugd/ifplugd.conf
で設定することができます。
ボンディングと LAG
netctl#ボンディングやワイヤレスボンディングを見てください。
IP アドレスエイリアス
ひとつのネットワークインターフェースに複数の IP アドレスを加えることを IP エイリアスと呼びます。これをすることで、ネットワークのひとつのノードでネットワークに複数接続することができ、それぞれを別々に使うことができます。基本的に Web・FTP サーバーの仮想ホスティングや、サーバーの再構成 (他のマシンを更新しない、ネームサーバで有用) に使われます。
サンプル
iproute2 ツールを使って NIC のエイリアスを手動で設定するには次を実行:
$ ip addr add 192.168.1.10/24 dev enp1s0 label enp1s0:1
設定したエイリアスを削除するには:
$ ip addr del 192.168.1.10/24 dev enp1s0:1
サブネットへ向かうパケットはデフォルトでプライマリエイリアスを使います。送信先 IP がセカンダリエイリアスのサブネット内のものである場合は、送信元 IP がそれぞれに設定されます。複数の NIC が存在する場合を考えた場合、ip route
でデフォルトルートを列挙することができます。
MAC/ハードウェアアドレスを変更する
MAC アドレス偽装を見てください。
インターネット共有
インターネット共有を見てください。
ルーター設定
ルーターを見てください。
プロミスキャスモード
プロミスキャスモードを有効にすると (無線) NIC は受信したトラフィックを全て OS に転送します。反対に"ノーマルモード"では受信されるべきでないとき NIC はフレームをドロップします。プロミスキャスモードは高度なネットワークのトラブルシューティングやパケットスニッフィングなどのために使われます。
/etc/systemd/system/promiscuous@.service
[Unit] Description=Set %i interface in promiscuous mode After=network.target [Service] Type=oneshot ExecStart=/usr/bin/ip link set dev %i promisc on RemainAfterExit=yes [Install] WantedBy=multi-user.target
インターフェイス eth0
でプロミスキャスモードを有効にしたい場合、promiscuous@eth0.service
を有効化してください。
トラブルシューティング
ケーブルモデムのコンピュータを交換
ほとんどの国内 ISP (videotron など) はネットワークインターフェイスの MAC アドレスを使って、認識するクライアント PC を一つだけに絞るようにケーブルモデムを設定しています。ケーブルモデムが初めて PC (やケーブルモデムに接続された機器) の MAC アドレスを認識すると、それ以外の MAC アドレスには頑として返答しなくなります。その PC を別の PC (またはルーター) に交換すると、新しい PC (やルーター) ではケーブルモデムを使うことができません。新しい PC (やルーター) の MAC アドレスは昔の PC の MAC アドレスと異なるからです。新しい PC を認識させるためにケーブルモデムをリセットするには、ケーブルモデムの電源を一度切ってから再度入れる必要があります。ケーブルモデムが再起動してオンラインになったら (通知ランプがおとなしくなるのでわかります)、新しく接続した PC を再起動して DHCP のリクエストを行ったり、手動で新しい DHCP リースをリクエストしてください。
この方法が上手くいかない場合、元のマシンの MAC アドレスをクローンする必要があります。MAC/ハードウェアアドレスを変更するを参照。
TCP ウィンドウスケーリングの問題
TCP パケットのヘッダには"ウィンドウ"値が含まれており、他のホストが返答として送信できるデータの量が示されています。この値は16ビットでしか表現できないので、ウィンドウサイズは最大 64 Kb です。TCP パケットはしばらくの間キャッシュに保存されますが (再度使われます)、メモリの量は(少なくとも昔は)限られているので、すぐに使いきってしまうことがあります。
1992年、利用できるメモリの量が大幅に増えるのにあわせて、この状態を改善するために RFC 1323: ウィンドウスケーリングが書かれました。全てのパケットに含まれている"ウィンドウ"の値を、スケールファクタ (Scale Factor) を定義することで、接続の初期段階で変更します。8ビットのスケールファクタなら、ウィンドウは 64Kb の32倍まで増やすことができます。
壊れたルーターやファイアウォールはスケールファクタを 0 に書き換えてしまうためホスト間での不和が発生します。Linux カーネル 2.6.17 ではスケールファクタを上げるための新しい算出方式が導入されましたが、それによってルーターやファイアウォールが壊れているときの影響が増え、極端に接続が遅かったり、全く接続できない状態が生まれています。
問題の診断方法
まず最初に問題をはっきりさせましょう: この問題は少々厄介です。ある条件下では、TCP 接続 (HTTP, FTP, ...) を全く使えないのに、他の条件では、特定の (ごく少数の) ホストとは通信できるというようなことが起こります。
この問題が発生していても、dmesg
の出力に問題はなく、ログに異常は見られず、そして ip addr
では通常状態だと報告されます。全てが問題ないように(表面上は)見えるわけです。
ウェブサイトが表示できないのに、ping は通る場合、この問題が発生している可能性は十分あるでしょう: ping は TCP の問題に影響されない ICMP を使っているためです。
Wireshark を使ってみてください。UDP と ICMP の接続は通るのに (ホストが海外の) TCP 接続は通らないはずです。
修復方法 (悪い方法)
無理やり修正する方法として、スケールファクタの計算に使われている tcp_rmem
の値を変更することができます。ほとんどのホストではこれで問題ありませんが、全てのホストで上手く行くとは保証できません。特にホストが遠い場合に問題が起きやすいです。
# echo "4096 87380 174760" > /proc/sys/net/ipv4/tcp_rmem
修復方法 (良い方法)
ウィンドウスケーリングを無効化してしまいます。ウィンドウスケーリングは TCP の素晴らしい機能なので、無効化してしまうのは忍びないですが、ルーターを修復できない場合は致し方ありません。ウィンドウスケーリングを無効化する方法は複数存在します。一番安牌の (ほとんどのカーネルで動作する) 方法としては /etc/sysctl.d/99-disable_window_scaling.conf
に以下の行を追加してください (sysctl を参照):
net.ipv4.tcp_window_scaling = 0
修復方法 (最良の方法)
この問題の原因はルーターやファイアウォールの動作がおかしいせいなので、それらを変えてしまいましょう。専用の DSL ルーターを使っている場合に問題になることがあるという報告もあります。
詳細
このセクションは LWN の記事 TCP window scaling and broken routers と Kernel Trap の記事 Window Scaling on the Internet を基にしています。
また、LKML に関連するスレッドが複数存在します。
Realtek が使えない / WOL の問題
Realtek 8168 8169 8101 8111(C) が搭載されている NIC (カード/オンボード) を使っている場合、起動時に NIC が無効化され、接続ランプが付かないという問題が発生することがあります。この問題は基本的に Windows をインストールしていると起こります (デュアルブート環境)。Windows における公式の Realtek ドライバー (2007年5月以降) の使用が問題の原因です。新しいドライバーでは Windows のシャットダウン時に NIC を無効化することによって Wake-On-LAN 機能を無効化しているのですが、これはつまり、Windows を起動するまでは NIC が無効のままになってしまうということです。Windows が起動するときに接続ランプが付いて、シャットダウン時に消えるようであれば、ずばりです。通常、システムの電源が入っていれば、(POST の間でも) 接続ランプは点きっぱなしになっています。この問題は新しいドライバーが入っていない他のオペレーティングシステムでも顔を出します (例: Live CD)。問題の解決方法は以下の通りです:
方法 1 - Linux で NIC を直接有効にする
#ネットワークインターフェースの有効化・無効化に従ってインターフェイスを有効化してください。
方法 2 - Windows ドライバをロールバック/変更する
Windows の NIC ドライバーを Microsoft が提供しているドライバーに戻したり、2007年5月以前の Realtek 公式ドライバーに戻すことができます (ハードウェアに付属している CD を使用)。
方法 3 - Windows ドライバで WOL を有効にする
一番簡単な方法はおそらく Windows ドライバーで WOL の設定を変更することです。この方法はシステム全体で適用され、Arch 以外でも問題が解決します (例: ライブ CD や他のオペレーティングシステム)。Windows で、デバイスマネージャを開いて、Realtek ネットワークアダプタを探してダブルクリックしてください。"Advanced" タブ下、"Wake-on-LAN after shutdown" を "Enable" に変更してください。
Windows XP の場合 マイコンピュータを右クリックして"プロパティ"を選択 --> Hardware tab --> Device Manager --> Network Adapters --> "double click" Realtek ... --> Advanced tab --> Wake-On-Lan After Shutdown --> Enable
方法 4 - 新しい Realtek Linux ドライバを使う
Realtek のサイトに Linux 用の Realtek カードの新しいドライバーが存在します (テストしていませんがおそらく問題が解決されるはずです)。
方法 5 - BIOS/CMOS で LAN Boot ROM を有効にする
BIOS/CMOS で Integrated Peripherals --> Onboard LAN Boot ROM --> Enabled を設定することで、Windows のドライバーが OS のシャットダウン時に無効化するのとは関係なく、システムの起動時に Realtek の LAN チップが有効化されます。
Atheros チップセットで eth0 がない
Atheros のイーサネットチップセットは設定をしないと動作しないことがあります (2014年2月のインストールメディアを使う場合)。この問題を解決するには AUR から backports-patchedAUR パッケージをインストールしてください。
Broadcom BCM57780
この Broadcom チップセットはモジュールをロードする順番を指定しないと上手く動作しないことが時々あります。モジュールは broadcom
と tg3
であり、前者を最初にロードする必要があります。
コンピューターにこのチップセットが載っている場合、以下の手順に従ってください:
- lspci の出力で NIC を確認:
$ lspci | grep Ethernet 02:00.0 Ethernet controller: Broadcom Corporation NetLink BCM57780 Gigabit Ethernet PCIe (rev 01)
- 有線ネットワークが機能しない場合、ケーブルを切断して以下を (root で) 実行:
# modprobe -r tg3 # modprobe broadcom # modprobe tg3
- ネットワークケーブルを接続。これで問題が解決する場合
broadcom
とtg3
を (この順番で)/etc/mkinitcpio.conf
のMODULES
行に追加することで設定を永続化できます:
MODULES=".. broadcom tg3 .."
- initramfs を再生成:
# mkinitcpio -p linux
- もしくは、
/etc/modprobe.d/broadcom.conf
を作成:
softdep tg3 pre: broadcom
Realtek RTL8111/8168B
# lspci | grep Ethernet
03:00.0 Ethernet controller: Realtek Semiconductor Co., Ltd. RTL8111/8168B PCI Express Gigabit Ethernet controller (rev 02)
このアダプタは r8169
モジュールによって認識されます。しかしながら、使われているチップによって、接続が出来たりできなかったりすることがあります。そのような場合は、公式リポジトリにある r8168 を使うことで安定した接続をすることができます。r8169
をブラックリストに入れて、r8168 が udev によって自動でロードされない場合、カーネルモジュール#ロードを見てください。
このアダプタのいくつかのリビジョンのドライバにおけるもう1つの欠陥は IPv6 サポートが貧弱であることです。Web ページがハングしたり、回線が遅くなったりした場合は、IPv6#機能を無効にするが参考になります。
Gigabyte マザーボードと Realtek 8111/8168/8411
Gigabyte GA-990FXA-UD3 などのマザーボードでは IOMMU をオフにして (デフォルトでオフになっていることもあります) 起動を行うと、ネットワークインターフェイスが不安定になって、接続が出来なかったり、通信速度が遅くなったりします。オンボードの NIC だけでなく、コンピュータに接続した他の PCI NIC でも起こりえます。IOMMU の設定はマザーボードに接続された全てのネットワークインターフェイスに影響を与えるからです。IOMMU を有効にしてインストールメディアで起動すると AMD I-10/xhci のページフォールトが数秒だけ表示されますが、その後通常通り起動して、オンボードの NIC が (r8169 モジュールを使用する場合でも) 完全に機能するようになるはずです。
インストール時にブートプロセスを設定する場合、起動時のエラーメッセージを排除して USB 3.0 を機能させるためにカーネルパラメータに iommu=soft
を追加してください。