「カーネルモジュールのコンパイル」の版間の差分
細 (他言語 Bosanski へのリンク追加) |
細 (打ち間違い修正) |
||
49行目: | 49行目: | ||
== モジュールのコンパイル == |
== モジュールのコンパイル == |
||
− | モジュールのコンパイルとロードをクリーンに行うためには、現在のカーネルバージョンの EXTRAVERSION 部分を知る必要があります。カーネルソースと正確に対応させることができるようになります。EXTRAVERSION 変数はカーネルのトップにある Makefile で設定します。しかし元のソースコードでは、 EVTRAVERSION は空になっていて、 Arch カーネルのビルドプロセスにおいて設定されます。現在のカーネルの EXTRAVEERSION は {{ic|uname -r}} から確認することができます。概して、カーネルバージョンは3つの成分の合成になっていて、それぞれバージョン番号、 EXTRAVERSION, LOCALVERSIONです。さらにバージョン番号は3つの数字から成ります。 [[PKGBUILD]] ファイルからビルドされた場合には、LOCALVERSION は {{ic|pkgrel}} 変数にハイフンを付けたもの、 EXTRAVERSION は |
+ | モジュールのコンパイルとロードをクリーンに行うためには、現在のカーネルバージョンの EXTRAVERSION 部分を知る必要があります。カーネルソースと正確に対応させることができるようになります。EXTRAVERSION 変数はカーネルのトップにある Makefile で設定します。しかし元のソースコードでは、 EVTRAVERSION は空になっていて、 Arch カーネルのビルドプロセスにおいて設定されます。現在のカーネルの EXTRAVEERSION は {{ic|uname -r}} から確認することができます。概して、カーネルバージョンは3つの成分の合成になっていて、それぞれバージョン番号、 EXTRAVERSION, LOCALVERSIONです。さらにバージョン番号は3つの数字から成ります。 [[PKGBUILD]] ファイルからビルドされた場合には、LOCALVERSION は {{ic|pkgrel}} 変数にハイフンを付けたもの、 EXTRAVERSION は {{ic|pkgver}} の後半部分で、3つめの数字からの値で、ピリオドがハイフンに代わったものです。例えば、 linux パッケージ {{ic|linux 5.5.8.arch1-1}}の場合は LOCALVERSION は {{ic|-1}}で、 EXTRAVRSION は {{ic|-arch1}} になります。{{ic|uname -r}} の出力は、この場合 {{ic|5.5.8-arch1-1}}になります。 |
EXTRAVERSION 値が分かったら、次の様にして設定してソースコードの準備を行います: |
EXTRAVERSION 値が分かったら、次の様にして設定してソースコードの準備を行います: |
2020年10月31日 (土) 16:01時点における版
カーネル全体を再コンパイルするのではなく Linux のカーネルモジュールだけをコンパイルしたいという場合のガイドです。
目次
ビルド環境
まずコンパイラ (base-devel) やカーネルヘッダ (linux-headers) などのビルドに必要なパッケージをインストールする必要があります。
そして今使っているバージョンのカーネルのソースコードを取得してください。新しいバージョンのカーネルソースを使ってみることもできますが、大抵の場合、コンパイルしたモジュールはロードされません。
カーネルのバージョンを確認するには:
$ uname -r
ソースコードの入手方法には大きく2つの選択肢があります。それぞれの選択肢で僅かに使い方や、ディレクトリ構成が異なります。
慣習的な方法
カーネル/コンパイル/伝統的な方法#カーネルソースのダウンロードを見てください。Git を使って最新のカーネルを取得する場合、タグを使って必要なバージョンをチェックアウトしてください (例: v4.1)。
Arch Build System
Arch Build System に関しての概略は ABS を参照して下さい。ソースコードの入手方法やディレクトリ構成、その他の詳細は、カーネル/コンパイル/Arch Build System を参照して下さい。
ソースの設定
ソースコードを手に入れたら、ディレクトリに移動して下さい。ソースコードの入手に #Arch Build System を使用した場合は、ディレクトリは PKGBUILD が存在する場所から見て src/archlinux-linux/
になっているはずです。
make help
の出力が有益です。次のコマンドを実行してクリーンしてください。
$ make mrproper
適切な .config
ファイルが必要です。設定ファイルがなく、対象のカーネルバージョンが動作中のカーネルと同じであれば、その設定ファイルが利用できます。次で得られます:
$ zcat /proc/config.gz > .config
次にカーネルソースにあわせて設定を調整します。現在使っているバージョンのカーネルソースを使う場合は何も訊かれませんが、新しいバージョンのソースを使用する場合、新しいオプションについて設定が問われます。いずれにせよ #Arch Build System を使っている場合は、 PKGBUILD::prepare()
関数が使えます。
コンパイルするモジュールにデバッグビルドなどのコンパイルオプションを与えたいが、まだコンパイルされていない場合、次の様にしてカーネルの設定を修正できます (ときには修正しなくてはならないです):
$ make oldconfig
モジュールのコンパイル
モジュールのコンパイルとロードをクリーンに行うためには、現在のカーネルバージョンの EXTRAVERSION 部分を知る必要があります。カーネルソースと正確に対応させることができるようになります。EXTRAVERSION 変数はカーネルのトップにある Makefile で設定します。しかし元のソースコードでは、 EVTRAVERSION は空になっていて、 Arch カーネルのビルドプロセスにおいて設定されます。現在のカーネルの EXTRAVEERSION は uname -r
から確認することができます。概して、カーネルバージョンは3つの成分の合成になっていて、それぞれバージョン番号、 EXTRAVERSION, LOCALVERSIONです。さらにバージョン番号は3つの数字から成ります。 PKGBUILD ファイルからビルドされた場合には、LOCALVERSION は pkgrel
変数にハイフンを付けたもの、 EXTRAVERSION は pkgver
の後半部分で、3つめの数字からの値で、ピリオドがハイフンに代わったものです。例えば、 linux パッケージ linux 5.5.8.arch1-1
の場合は LOCALVERSION は -1
で、 EXTRAVRSION は -arch1
になります。uname -r
の出力は、この場合 5.5.8-arch1-1
になります。
EXTRAVERSION 値が分かったら、次の様にして設定してソースコードの準備を行います:
$ make EXTRAVERSION=<YOUR EXTRAVERSION HERE> modules_prepare
例えば:
$ make EXTRAVERSION=-arch1 modules_prepare
代わりに、もしモジュールのロードを modprobe
によって行ない、 --force-vermagic
オプションを付けてもよいならば、単に次のように準備します (この場合、modprobe
はカーネルバージョンの矛盾を無視します):
$ make modules_prepare
最後に、コンパイルしたいモジュールのディレクトリ名を指定して、コンパイルを行います。モジュールの場所は、 modinfo
や find
から探せます。
$ make M=fs/btrfs
動かなかった場合の最後の手段として、次ができます:
$ make modules
これはカーネル設定から、全てのモジュールをビルドします。
ツリー外のモジュールのコンパイル
#Arch Build Systemにあるように、現在動作している linux カーネルの公式ソースコードを入手します:
$ cd && make build $ asp update linux $ asp checkout linux
コンパイルを行うとき、ソースをチェックアウトします:
$ cd build/mymod $ make -C ~/buld/linux/trunk/src/arclinux-linux M=$PWD modules
モジュールのインストール
コンパイルが完了したら適切なフォーマットで圧縮して、使用しているカーネルのところにコピーする必要があります。
既存のモジュールを置き換える場合、ファイルを上書きしてください (linux を再インストールするとデフォルトのモジュールに置き換わるので注意):
$ xz fs/btrfs/btrfs.ko # cp -f fs/btrfs/btrfs.ko.xz /usr/lib/modules/`uname -r`/kernel/fs/btrfs/
もしくは、updates フォルダにモジュールを配置することもできます (フォルダが存在しない場合は作成してください):
$ cp fs/btrfs/btrfs.ko.xz /usr/lib/modules/`uname -r`/updates
新しいモジュールを追加する場合は extramodules にコピーします (以下はあくまで例です。btrfs はこのフォルダからはロードされません):
# cp fs/btrfs/btrfs.ko.xz /usr/lib/modules/`uname -r`/extramodules/
モジュールをコンパイルして (ブートの初期段階でロードされるように) initramfs にコピーする場合は initramfs を再生成するようにしてください (そうしないとコンパイルしたモジュールがロードされません)。さらに、"updates" フォルダを使用するときは、initramfs を再生成する前に "depmod" でモジュールの依存ツリーを再ビルドする必要があります。
# mkinitcpio -p linux
考えられるエラー
もし、EXTRAVERSION が正しく設定されていない場合、次のエラーが起き得ます:
# insmod mymod.ko insmod: ERROR: could not insert module mymod.ko: Invalid module format # modprobe mymod modprobe: ERROR: could not insert 'mymod': Exec format error
バージョンの不一致によるもので、これを無視する場合には force-vermagic
オプションを付けてロードします:
$ modprobe mymod -force-vermagic