カーネルモード設定
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Kernel Mode Setting (KMS) は、ユーザースペースではなくカーネル空間でディスプレイの解像度・色深度を設定する方法です。
Linux カーネルの KMS 実装により、フレームバッファでのネイティブ解像度や素早いコンソール (tty) 切り替えができるようになります。また、アーティファクトの軽減や 3D パフォーマンスの向上、カーネル空間での省電力機能を補助する新しい技術 (DRI2 など) も可能にします。
目次
背景
昔、ビデオカードをセットアップするのは X サーバーの仕事でした。このため、仮想コンソールで派手なグラフィックを使うことは簡単ではありませんでした。また、X から 仮想コンソール へ切り替えると (Ctrl+Alt+F1
)、X サーバーはカーネルにビデオカードのコントロールを移さなくてはならず、動作が重くなりチラツキが生じていました。同じ"痛々しい"挙動はコントロールを X サーバーに戻すときも起こりました (Ctrl+Alt+F7
)。
Kernel Mode Setting (KMS) によって、現在カーネルはビデオカードのモードを設定することができます。これによって、起動時からの派手なグラフィックや、仮想コンソールと X の早い切り替えなどが可能になりました。
インストール
まず、どの方法を使うにせよ、以下を常時無効にする必要があります:
- ブートローダ内のあらゆる
vga=
オプション。KMS によるネイティブ解像度と衝突します。 - フレームバッファを有効にするあらゆる
video=
行。ドライバと衝突します。 - 他のフレームバッファドライバ (uvesafb など)。
Late KMS start
Intel, Nouveau, ATI, AMDGPU ドライバでは既に全てのチップセットで KMS が自動的に有効になっています。そのため手動でインストールする必要はありません。
プロプライエタリの NVIDIA ドライバー (364.12 以上) は KMS をサポートしていますが、手動で有効化する必要があります。
プロプライエタリの AMD Catalyst ドライバはオープンドライバスタックを使いません。KMS を使うにはオープンソースの AMDGPU ドライバ (古いビデオカードなら ATI ドライバ) に変えてください。
Early KMS start
通常 KMS は initramfs ステージよりも後に初期化されます。起動中にできるだけ早く KMS をロードするには、依存するモジュールを /etc/mkinitcpio.conf
の MODULES
行に追加します。
amdgpu
AMDGPU ドライバー向けradeon
ATI ドライバー (古いモデル向け)i915
Intel 内蔵グラフィック向けnouveau
Nouveau オープンソースドライバー向けmgag200
Matrox グラフィック向け- QEMU のグラフィック出力を使う場合:
virtio-gpu
VirtIO 用、qxl
QXL 用、cirrus
Cirrus 用
例えば、Intel 内蔵グラフィックドライバーを利用し、KMS を早期に有効化させるには:
/etc/mkinitcpio.conf
MODULES=(... i915 ...)
(生来の解像度に当てはまらない) カスタム EDID ファイルを使っている場合、同じように initramfs に埋め込む必要があります:
/etc/mkinitcpio.conf
FILES=(/usr/lib/firmware/edid/your_edid.bin)
その後カーネルイメージを再生成してください (詳しくは mkinitcpio を参照して下さい):
# mkinitcpio -p <カーネルプリセットの名前; 例 linux>
mkinitcpio
例えば、Intel のグラフィックドライバで Early KMS を有効にするには
/etc/mkinitcpio.conf
MODULES=(... i915 ...)
となります。
カスタム EDID ファイルを使用している場合 (内蔵解像度には適用されません) それを initramfs にも埋め込む必要があります。
/etc/mkinitcpio.conf
FILES=(/usr/lib/firmware/edid/your_edid.bin)
次に initramfs を再生成 します。
Booster
Booster を使用している場合、以下の設定変更で必要なモジュールをロードすることができます。
/etc/booster.yaml
modules_force_load: i915
イメージにファイルを追加する場合。
/etc/booster.yaml
extra_files: /usr/lib/firmware/edid/your_edid.bin
次にブースターイメージを 再生成 します。
トラブルシューティング
フォントが小さすぎる
デフォルトフォントを変更する方法を見てコンソールフォントを大きなフォントに代えてください。Terminus フォント (terminus-font) には ter-132n
など様々なサイズが含まれています。
もしくはモードセッティングを無効化して解像度を下げることで相対的にフォントは大きくなります。
ブートロードの問題と dmesg
古いシステムでは接続されたディスプレイデバイスのポーリングが重荷になることがあります。ポーリングは定期的に実行されるため、ハードウェアによっては最悪の場合、数百ミリ秒近く時間を取られます。動画を再生するときなど、絵面が止まってしまいます。10秒毎にディスプレイの出力が固まってしまうようなときは、ポーリングを無効化することで解決するかもしれません。
起動中に 0x00000010 (2)
のエラーコードが表示される場合 (10行近く表示され、最後にエラーコードが含まれているでしょう)、/etc/modprobe.d/modprobe.conf
に次の行を加えて下さい:
options drm_kms_helper poll=0
モードの強制と EDID
ネイティブ解像度が自動的に設定されなかったり、ディスプレイが全く検出されなかったりした場合、モニタは何も送信しないか、単に歪んだ EDID ファイルを送信するかもしれません。カーネルはこのケースを捕らえようとし、最も一般的な解像度の一つを設定します。
もしあなたがモニタの EDID ファイルを持っているなら、単にそれを明示的に強制する必要があるだけです (下記参照) しかし、ほとんどの場合、正常なファイルに直接アクセスできないので、既存のものを取り出して修正するか、新しいものを生成する必要があります。
様々な解像度や設定に対応した新しい EDID バイナリを生成するには、upstream documentation に従ってカーネルのコンパイルを行います (簡単なガイドについては [2] も参照してください)。その他の解決策については、このarticleで詳しく説明されています。
例えば、あなたのモニタが Windows で正常に動作するなら、対応するドライバから EDID を抽出できますし、同じ設定で動作する同様のモニタなら read-edid パッケージから get-edid
を使うことができます。また、/sys/class/drm/*/edid
で探すこともできます。
EDID を用意したら、/usr/lib/firmware
の下の edid
というディレクトリに置き、そこにバイナリをコピーしてください。
起動時に読み込むには、カーネルコマンドラインで以下を指定します。
drm.edid_firmware=edid/your_edid.bin
4.13 より古いカーネルでは、代わりにこの行を使用します。
drm_kms_helper.edid_firmware=edid/your_edid.bin
特定の接続だけで使うように指定することも可能です:
drm.edid_firmware=VGA-1:edid/your_edid.bin
内蔵の4つの解像度を使うには、下の表を見て名前を指定してください:
解像度 | 指定する名前 |
800x600 | edid/800x600.bin |
1024x768 | edid/1024x768.bin |
1280x1024 | edid/1280x1024.bin |
1600x1200 (カーネル 3.10 以上) | edid/1600x1200.bin |
1680x1050 | edid/1680x1050.bin |
1920x1080 | edid/1920x1080.bin |
KMS を初期に実行 するようにしている場合は、カスタム EDID ファイルを initramfs に含めないと起動時に問題が発生します。
また、起動後に sys/module/drm/parameters/edid_firmware
に書き込むことで、drm.edid_firmware
パラメータの値を変更することができます。
# echo edid/your_edid.bin > /sys/module/drm/parameters/edid_firmware
これは、新しく接続されたディスプレイにのみ有効であり、すでに接続されている画面は引き続き既存のEDID設定を使用します。ただし、外部ディスプレイの場合は、プラグを差し直すだけで効果を確認できます。
カーネル3.15 以降、起動後に EDID をロードするために、カーネルが ロックダウンモード でない場合は、カーネルコマンドラインパラメーターの代わりに debugfs を使用できます。これは、コネクタのモニターを交換する場合、または単にテストする場合に非常に便利です。上記のように EDID ファイルを取得したら、次を実行します。
# cat correct-edid.bin > /sys/kernel/debug/dri/0/HDMI-A-2/edid_override
そして、無効化します。
# echo -n reset > /sys/kernel/debug/dri/0/HDMI-A-2/edid_override
強制モード
the nouveau wiki より。
- カーネルコマンドラインでモードを強制することができます。残念ながら、コマンドラインオプションの video は DRM の場合、ドキュメントが不十分です。使い方の断片は、以下のサイトにあります。
フォーマットは
video=<conn>:<xres>x<yres>[M][R][-<bpp>][@<refresh>][i][m][eDd] となります。
<conn>
:コネクタ、例:DVI-I-1、使用可能なコネクタは/sys/class/drm/
を参照<xres> x <yres>
: 解像度M
: CVT モードを計算R
: blanking を減らす-<bpp>
: 色深度@<refresh>
: リフレッシュレートi
: インターレース (非CVTモード)m
: 余白e
: 出力は強制的にオンにするd
: 出力は強制的にオフにされるD
: デジタル出力を強制的にオン (例:DVI-I コネクタ)
例えば、video=
を複数回使って、DVI
を1024x768、85Hzに、TV-out
をオフに強制する、といったように複数の出力モードをオーバーライドすることが可能です。
video=DVI-I-1:1024x768@85 video=TV-1:d
コネクタの名前と現在の状態を取得するには、以下のシェル oneliner を使用します。
$ for p in /sys/class/drm/*/status; do con=${p%/status}; echo -n "${con#*/card?-}: "; cat $p; done
DVI-I-1: connected HDMI-A-1: disconnected VGA-1: disconnected
モードセッティングを無効にする
Catalyst ドライバを使っているときなど、ブランクスクリーンになったりディスプレイに "no signal" エラーがでたりするなどの理由で KMS を無効にしたい時があるかもしれません。KMS を無効にするには、カーネルパラメータに nomodeset
を追加します。詳しくはカーネルパラメータを見て下さい。
nomodeset
カーネルパラメータと共に、Intel のグラフィックカードでは i915.modeset=0
を Nvidia のグラフィックカードでは nouveau.modeset=0
をそれぞれ追加する必要があります。Nvidia の Optimus デュアルグラフィック環境では、3つのカーネルパラメータ全てを追加してください (つまり "nomodeset i915.modeset=0 nouveau.modeset=0"
)。