永続的なブロックデバイスの命名
この記事ではブロックデバイスに永続的な名前を使う方法を説明します。永続的な命名は udev の導入によって可能になったものであり、バスによる命名と比べて複数の利点があります。使用しているマシンに複数の SATA、SCSI、IDE ディスクコントローラが存在する場合、それぞれのデバイスノードが追加される順番は一定しません。そのため、起動するたびに /dev/sda
や /dev/sdb
といったデバイス名は入れ替わる可能性があり、下手をすると、システムが起動できなくなったり、カーネルパニックが発生したり、ブロックデバイスが表示されなくなってしまいます。永続的な命名によってこれらの問題は解決します。
目次
永続的な命名の方法
永続的な命名には4つの異なる形式があります: by-label、by-uuid、by-id と by-path。GUID Partition Table (GPT) のディスクを使用する場合、さらに by-partlabel と by-partuuid の形式も利用可能です。また、Udev による固定デバイス名を使うこともできます。
/dev/disk/
内のディレクトリは、デバイスがあるかどうかに応じて動的に作成・破棄されます。
以下のセクションではこれらの異なる命名規則がどのようなものであるか、またどうやって使うのかを説明しています。
lsblk コマンドを使うことで1つ目の永続的な名前をグラフィカルに表示することができます:
$ lsblk -f
NAME FSTYPE LABEL UUID MOUNTPOINT sda ├─sda1 vfat CBB6-24F2 /boot ├─sda2 ext4 Arch Linux 0a3407de-014b-458b-b5c1-848e92a327a3 / ├─sda3 ext4 Data b411dc99-f0a0-4c87-9e05-184977be8539 /home └─sda4 swap f9fe0b69-a280-415d-a03a-a32752370dee [SWAP] mmcblk0 └─mmcblk0p1 vfat F4CA-5D75
GPT を使っている場合、代わりに blkid
コマンドを使います。blkid
コマンドはスクリプトでは使いやすいですが、人間にとっては読みづらいです。
# blkid
/dev/sda1: UUID="CBB6-24F2" TYPE="vfat" PARTLABEL="EFI system partition" PARTUUID="d0d0d110-0a71-4ed6-936a-304969ea36af" /dev/sda2: LABEL="Arch Linux" UUID="0a3407de-014b-458b-b5c1-848e92a327a3" TYPE="ext4" PARTLABEL="GNU/Linux" PARTUUID="98a81274-10f7-40db-872a-03df048df366" /dev/sda3: LABEL="Data" UUID="b411dc99-f0a0-4c87-9e05-184977be8539" TYPE="ext4" PARTLABEL="Home" PARTUUID="7280201c-fc5d-40f2-a9b2-466611d3d49e" /dev/sda4: UUID="f9fe0b69-a280-415d-a03a-a32752370dee" TYPE="swap" PARTLABEL="Swap" PARTUUID="039b6c1c-7553-4455-9537-1befbc9fbc5b" /dev/mmcblk0: PTUUID="0003e1e5" PTTYPE="dos" /dev/mmcblk0p1: UUID="F4CA-5D75" TYPE="vfat" PARTUUID="0003e1e5-01"
by-label
ほぼすべてのファイルシステムタイプが、ラベルを持つことができます。ラベルを持つボリュームはすべて /dev/disk/by-label
ディレクトリ内に出現します。
$ ls -l /dev/disk/by-label
total 0 lrwxrwxrwx 1 root root 10 May 27 23:31 Data -> ../../sda3 lrwxrwxrwx 1 root root 10 May 27 23:31 Arch\x20Linux -> ../../sda2
ほとんどのファイルシステムは、ファイルシステム作成時におけるラベルの設定をサポートしています (関連する mkfs.*
ユーティリティの man ページを参照してください)。一部のファイルシステムにおいてはラベルを変更することもできます。以下は、一般的なファイルシステムにおけるラベルの変更方法です:
- swap
swaplabel -L "new label" /dev/XXX
(util-linux を使用)- ext2/3/4
e2label /dev/XXX "new label"
(e2fsprogs を使用)- btrfs
btrfs filesystem label /dev/XXX "new label"
(btrfs-progs を使用)- reiserfs
reiserfstune -l "new label" /dev/XXX
(reiserfsprogs を使用)- jfs
jfs_tune -L "new label" /dev/XXX
(jfsutils を使用)- xfs
xfs_admin -L "new label" /dev/XXX
(xfsprogs を使用)- fat/vfat
fatlabel /dev/XXX "new label"
(dosfstools を使用)mlabel -i /dev/XXX ::"new label"
(mtools を使用)- exfat
tune.exfat -L "new label" /dev/XXX
(exfatprogs を使用)exfatlabel /dev/XXX "new label"
(exfatprogs または exfat-utils を使用)- ntfs
ntfslabel /dev/XXX "new label"
(ntfs-3g を使用)- udf
udflabel /dev/XXX "new label"
(udftools を使用)- crypto_LUKS (LUKS2 のみ)
cryptsetup config --label="new label" /dev/XXX
(cryptsetup を使用)
デバイスのラベルは lsblk を使って得ることができます:
$ lsblk -dno LABEL /dev/sda2
Arch Linux
あるいは blkid を使って:
# blkid -s LABEL -o value /dev/sda2
Arch Linux
by-uuid
UUID は、各ファイルシステムにユニークな識別子を与えるための仕組みです。UUID 識別子は、パーティションをフォーマットするときにファイルシステムユーティリティ (例: mkfs.*
) によって生成されます。UUID 識別子は衝突が起こりにくいように作られています。(スワップや生の暗号化デバイスの LUKS ヘッダを含む) 全ての GNU/Linux ファイルシステムが UUID をサポートします。FAT、exFAT、NTFS ファイルシステムは UUID をサポートしていませんが、それでも、より短い UID (unique identifier) で /dev/disk/by-uuid/
内に現れます:
$ ls -l /dev/disk/by-uuid/
total 0 lrwxrwxrwx 1 root root 10 May 27 23:31 0a3407de-014b-458b-b5c1-848e92a327a3 -> ../../sda2 lrwxrwxrwx 1 root root 10 May 27 23:31 b411dc99-f0a0-4c87-9e05-184977be8539 -> ../../sda3 lrwxrwxrwx 1 root root 10 May 27 23:31 CBB6-24F2 -> ../../sda1 lrwxrwxrwx 1 root root 10 May 27 23:31 f9fe0b69-a280-415d-a03a-a32752370dee -> ../../sda4 lrwxrwxrwx 1 root root 10 May 27 23:31 F4CA-5D75 -> ../../mmcblk0p1
デバイスの UUID は lsblk を使って得ることができます:
$ lsblk -dno UUID /dev/sda1
CBB6-24F2
あるいは blkid を使って:
# blkid -s UUID -o value /dev/sda1
CBB6-24F2
UUID を使用する利点として、名前の衝突が発生する可能性がラベルよりもずっと少ないことが挙げられます。さらに、UUID はファイルシステムの作成時に自動的に生成されます。他のシステムにデバイスを接続したときでも、一意性を保つことができます。ラベルの場合、他のシステムに接続したとき名前がカブってしまう可能性が否定できません。
逆に UUID の欠点としては、生成されるコードが長いために、設定ファイル (例: fstab や crypttab) が読みづらくなったり整形が崩れてしまうことがあります。また、パーティションのサイズを変更したり、再フォーマットをするたびに新しい UUID が生成されるので、設定を手動で変更する必要が生じます。
by-id と by-path
by-id
はハードウェアのシリアル番号に基づいて一意な名前を作成します。by-path
は (sysfs による) 一番短い物理パスを使います。どちらも属するサブシステムを示す文字列を含んでいるため (by-path
の場合 -ide-
、by-id
の場合 -ata-
)、デバイスを制御するハードウェアと繋がりがあります。このため永続性のレベルが異なってきます: by-path
はデバイスをコントローラの他のポートに接続したときに値が変わり、by-id
はデバイスを他のサブシステムが使っているハードウェアコントローラのポートに接続したときに値が変わります [1]。従って、ハードウェアが変わっても値が変わらないような永続的な命名としてはどちらも使えません。
ただし、巨大なハードウェアインフラストラクチャで特定のデバイスを見つけたいときは有益な情報となります。例えば、永続的なラベル (by-label
や by-partlabel
) を手動で割り当てておらず、使用するハードウェアポートとディレクトリを変えていない場合、by-id
と by-path
を使うことで特定のデバイスを探すことが可能です [2][3]。
NVMe
永続的な NVMe デバイスの ID には、wwn-
ではなく nvme-
[4] プレフィックスが付きます。ここで使用される World Wide Name は、ほとんどの ATA または SCSI デバイスと比較して、Extended Unique Identifier (EUI) のより新しい形式です。
$ ls -l /dev/disk/by-id/
total 0 lrwxrwxrwx 1 root root 13 Feb 12 16:28 nvme-eui.002538570142d716 -> ../../nvme1n1 lrwxrwxrwx 1 root root 15 Feb 12 16:28 nvme-eui.002538570142d716-part1 -> ../../nvme1n1p1 lrwxrwxrwx 1 root root 15 Feb 12 16:28 nvme-eui.002538570142d716-part2 -> ../../nvme1n1p2 lrwxrwxrwx 1 root root 13 Feb 12 16:28 nvme-eui.e8238fa6bf530001001b448b4566aa1a -> ../../nvme0n1 lrwxrwxrwx 1 root root 15 Feb 12 16:28 nvme-eui.e8238fa6bf530001001b448b4566aa1a-part1 -> ../../nvme0n1p1 lrwxrwxrwx 1 root root 15 Feb 12 16:28 nvme-eui.e8238fa6bf530001001b448b4566aa1a-part2 -> ../../nvme0n1p2 lrwxrwxrwx 1 root root 13 Feb 12 16:28 nvme-Samsung_SSD_970_EVO_Plus_2TB_S4J4NJ0N704064T -> ../../nvme1n1 lrwxrwxrwx 1 root root 15 Feb 12 16:28 nvme-Samsung_SSD_970_EVO_Plus_2TB_S4J4NJ0N704064T-part1 -> ../../nvme1n1p1 lrwxrwxrwx 1 root root 15 Feb 12 16:28 nvme-Samsung_SSD_970_EVO_Plus_2TB_S4J4NJ0N704064T-part2 -> ../../nvme1n1p2 lrwxrwxrwx 1 root root 13 Feb 12 16:28 nvme-WDS100T1X0E-00AFY0_21455A801268 -> ../../nvme0n1 lrwxrwxrwx 1 root root 15 Feb 12 16:28 nvme-WDS100T1X0E-00AFY0_21455A801268-part1 -> ../../nvme0n1p1 lrwxrwxrwx 1 root root 15 Feb 12 16:28 nvme-WDS100T1X0E-00AFY0_21455A801268-part2 -> ../../nvme0n1p2
$ ls -l /dev/disk/by-path/
total 0 lrwxrwxrwx 1 root root 13 Feb 12 16:28 pci-0000:01:00.0-nvme-1 -> ../../nvme0n1 lrwxrwxrwx 1 root root 15 Feb 12 16:28 pci-0000:01:00.0-nvme-1-part1 -> ../../nvme0n1p1 lrwxrwxrwx 1 root root 15 Feb 12 16:28 pci-0000:01:00.0-nvme-1-part2 -> ../../nvme0n1p2 lrwxrwxrwx 1 root root 13 Feb 12 16:28 pci-0000:04:00.0-nvme-1 -> ../../nvme1n1 lrwxrwxrwx 1 root root 15 Feb 12 16:28 pci-0000:04:00.0-nvme-1-part1 -> ../../nvme1n1p1 lrwxrwxrwx 1 root root 15 Feb 12 16:28 pci-0000:04:00.0-nvme-1-part2 -> ../../nvme1n1p2
by-partlabel
GPT ディスクのパーティションエントリのヘッダにパーティションラベルを定義することができます。
Wikipedia:ja:GUIDパーティションテーブル#パーティションエントリ (LBA 2〜33) も見て下さい。
この方法はファイルシステムラベルとよく似ていますが、動的ディレクトリは /dev/disk/by-partlabel
になります。
ls -l /dev/disk/by-partlabel/
total 0 lrwxrwxrwx 1 root root 10 May 27 23:31 EFI\x20SYSTEM\x20PARTITION -> ../../sda1 lrwxrwxrwx 1 root root 10 May 27 23:31 GNU\x2fLINUX -> ../../sda2 lrwxrwxrwx 1 root root 10 May 27 23:31 HOME -> ../../sda3 lrwxrwxrwx 1 root root 10 May 27 23:31 SWAP -> ../../sda4
by-partuuid
GPT パーティションラベルと同じように、GPT パーティション UUID は GPT ディスクのパーティションエントリに定義されます。
Wikipedia:ja:GUIDパーティションテーブル#パーティションエントリ (LBA 2〜33) も見て下さい。
動的ディレクトリは UUID ファイルシステムなど他の方法と同じようになっており、ラベルよりも UUID の使用が推奨されます。
ls -l /dev/disk/by-partuuid/
total 0 lrwxrwxrwx 1 root root 10 May 27 23:31 039b6c1c-7553-4455-9537-1befbc9fbc5b -> ../../sda4 lrwxrwxrwx 1 root root 10 May 27 23:31 7280201c-fc5d-40f2-a9b2-466611d3d49e -> ../../sda3 lrwxrwxrwx 1 root root 10 May 27 23:31 98a81274-10f7-40db-872a-03df048df366 -> ../../sda2 lrwxrwxrwx 1 root root 10 May 27 23:31 d0d0d110-0a71-4ed6-936a-304969ea36af -> ../../sda1
Udev による固定デバイス名
Udev#固定デバイス名の設定 を見て下さい。
永続的な命名の使用
様々なアプリケーションで、永続的な命名を使うように設定を行うことができます。以下はアプリケーションの設定例です。
fstab
次の記事を参照してください: fstab#UUID。
カーネルパラメータ
永続的な命名をカーネルパラメータに使用するには、以下の前提条件を満たさなければなりません。インストールガイドに従った標準的なインストールでは、以下の両方の前提条件を満たしています:
- udev が含まれている initramfs イメージを使用していること
- mkinitcpio では、
udev
かsystemd
フックのどちらか一方を/etc/mkinitcpio.conf
で有効化していること
root ファイルシステムの場所はカーネルコマンドラインの root
パラメータを使って渡します。カーネルコマンドラインはブートローダーから設定します。カーネルパラメータ#設定 を参照してください。永続的な命名に変更するには、ブロックデバイスを指定するパラメータ(例: root
と resume
)のみを変更して、他のパラメータはそのままにしてください。様々な命名規則がサポートされています:
ラベルと LABEL=
形式を用いたデバイスの永続的な命名。以下の例では、Arch Linux
が root ファイルシステムの LABEL になっています:
root="LABEL=Arch Linux"
UUID と UUID=
形式を用いたデバイスの永続的な命名。以下の例では、0a3407de-014b-458b-b5c1-848e92a327a3
が root ファイルシステムの UUID になっています:
root=UUID=0a3407de-014b-458b-b5c1-848e92a327a3
ディスクの idと /dev
パス形式を用いたデバイスの永続的な命名。以下の例では、wwn-0x60015ee0000b237f-part2
が root パーティションの id になっています。
root=/dev/disk/by-id/wwn-0x60015ee0000b237f-part2
GPT パーティション UUID と PARTUUID=
形式を用いたデバイスの永続的な命名。以下の例では、98a81274-10f7-40db-872a-03df048df366
が root パーティションの PARTUUID になっています。
root=PARTUUID=98a81274-10f7-40db-872a-03df048df366
GPT パーティションラベルと PARTLABEL=
形式を用いたデバイスの永続的な命名。以下の例では、GNU/Linux
が root パーティションの PARTLABEL になっています。
root="PARTLABEL=GNU/Linux"