dhcpcd

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dhcpcd は DHCP と DHCPv6 のクライアントです。現在は最も機能豊富なオープンソースの DHCP クライアントであり、ホームページに全ての機能のリストが載っています。

ノート: dhcpcd (DHCP client デーモン) は dhcpd (DHCP (server) デーモン) とは違います。

インストール

dhcpcd パッケージは公式リポジトリから入手できます。base グループに含まれているため、通常は既にあなたのシステムにインストールされているはずです。

また、dhcpcd デーモン (と任意で wpa_supplicant) の GTK+ フロントエンドである dhcpcd-uiAUR を使うこともできます。設定ダイアログで、パスフレーズを入力して無線ネットワークに接続することができます。

実行

dhcpcd は基本的にサービスファイル dhcpcd@.service で操作します、インターフェイス名を引数として指定します (詳しくは systemd#ユニットを使う を見て下さい):

# systemctl start dhcpcd@interface.service
# systemctl enable dhcpcd@interface.service

手動で dhcpcd を起動するには、次のコマンドを実行してください:

# dhcpcd interface
dhcpcd: version 5.1.1 starting
dhcpcd: interface: broadcasting for a lease
...
dhcpcd: interface: leased 192.168.1.70 for 86400 seconds
ヒント: dhcpcd.service が起動に失敗する場合は、#dhcpcd と systemd ネットワークインターフェイスを見てください。

設定

メインの設定は /etc/dhcpcd.conf で行います、詳細は dhcpcd.conf(5) を参照してください。よく使われるオプションについては以下で説明します。

DHCP スタティックルート

スタティックルートをクライアント側に追加する必要がある場合、/usr/lib/dhcpcd/dhcpcd-hooks に新しい dhcpcd フックスクリプトを作成してください。以下の例は 192.168.192.5 のゲートウェイマシンを通じて VPN サブネットにスタティックルートを追加するフックスクリプトです:

/usr/lib/dhcpcd/dhcpcd-hooks/40-vpnroute
ip route add 10.11.12.0/24 via 192.168.192.5

名前の 40 は dhcpcd が起動した時に最後に実行されるフックスクリプトであることを意味しています。

DHCP クライアント ID

複数の方法を使って DHCP クライアントをサーバーから一意に識別させることが可能です:

  • ホストネーム (またはクライアントから送信されたホストネームの値)
  • 接続を作成するのに使われたネットワークインターフェイスコントローラの MAC アドレス
  • Identity Association ID (IAID)、ホストのユースケースやインターフェイスを区別するための抽象レイヤー
  • DHCP Unique Identifier (DUID)

詳しい解説は RFC 3315 を見てください。

DHCP サーバーの設定によって、オプションは設定する必要がなかったり、もしくは DHCP IP リースをリクエストするのに必須であったりします。

ノート: 大抵は dhcpcd のデフォルト設定で問題ありません。記載されている識別子は自動的に処理されるので、問題が発生しときにだけ手動で設定を変更してください。

dhcpcd のデフォルト設定で IP が取得できない場合、dhcpcd.conf で以下のオプションを使うことができます:

  • hostname/etc/hostname で設定されたホストネームを送信します。
  • clientid は MAC アドレスを識別子として送信します。
  • iaid <interface> は DHCP ディスカバリに使われる IAID を取得します。interface ブロックで使用します (interface <interface> で始まるブロック、詳しくは [1] を参照)。ただし、次のオプションの方がよく使われます:
  • duid は DUID と IAID の組み合わせを識別子として使用します。

DUID の値は /etc/dhcpcd.duid で設定します。効率的な DHCP リース操作のために DUID はシステム固有の値にして全てのネットワークインターフェイスに適用することが重要です。逆に IAID は各々のインターフェイスを表す識別子です (RFC 4361 を参照)。

Dynamic DNS を使っているネットワークでは3つの ID がそれぞれ異なっていることに注意を払ってください。重複する DUID の値が DNS サーバーに渡された場合 (仮想マシンを複製したときにホストネームと MAC は変更したのに DUID を変更しなかった場合など)、重複した DUID を持ったクライアントがリースをリクエストすることになり、サーバーはクライアントを DNS レコードから削除してしまいます。

ARP プローブを無効にして DHCP を高速化

dhcpcd には DHCP 標準 (RFC2131 section 2.2) で勧告されている実装が含まれており、割り当てられた IP アドレスが実際に取得できているかどうか ARP でチェックを行います。ホームネットワークではこの機能はあまり意味がないので、/etc/dhcpcd.conf に以下の行を追加することで、5秒ほど接続のときにかかる時間を減らすことができます:

noarp

上記の設定は dhcpcd--noarp を指定するのと同一の効果を持ち、ARP プローブを無効化します。これにより DHCP によるネットワークの接続が高速化されます。

固定プロファイル

必要な設定情報はネットワーク設定#固定 IP アドレスで説明しています。基本的にはデバイス名, IP アドレス, ルーターアドレス, ネームサーバーが必要になります。

dhcpcd の固定プロファイルは /etc/dhcpcd.conf で以下のように設定します:

/etc/dhcpcd.conf
interface eth0
static ip_address=192.168.0.10/24	
static routers=192.168.0.1
static domain_name_servers=192.168.0.1 8.8.8.8

arping オプションを使うなど、もっと複雑な設定をすることもできます。詳しくは dhcpcd.conf(5) を見て下さい。

予備プロファイル

dhcpcd の中で固定プロファイルを設定して DHCP のリースが失敗したときに、そのプロファイルにフォールバックすることができます。常にマシンに接続できるようにするために固定プロファイルを"リカバリ"プロファイルとして使うことで、特に Raspberry Pi などの ヘッドレスマシンで役に立ちます。

以下の例では IP アドレスが 192.168.1.1 で、ゲートウェイとネームサーバが 192.168.1.23static_eth0 プロファイルを設定しており、このプロファイルを eth0 インターフェイスのフォールバックに指定しています。

/etc/dhcpcd.conf
# define static profile
profile static_eth0
static ip_address=192.168.1.1
static routers=192.168.1.23
static domain_name_servers=192.168.1.23

# fallback to static profile on eth0
interface eth0
fallback static_eth0

フック

dhcpcd/usr/lib/dhcpcd/dhcpcd-hooks/ にあるスクリプトを辞書順で全て実行します。詳しくは dhcpcd(5)dhcpcd-run-hooks(8) を見て下さい。

ノート:
  • dhcpcd.confnohook オプションを使うことで個別のスクリプトを無効化できます。
  • env オプションを使うことですべてのフックに環境変数を設定することが可能です。例えば、env force_hostname=YES を使えば hostname フックに常時ホストネームを設定するように指定できます。

10-wpa_supplicant

10-wpa_supplicant フックは無線インターフェイスで WPA supplicant を自動的に起動します。起動するのは以下の条件を満たした場合に限られます:

  • インターフェイスを使っている wpa_supplicant プロセスがまだない場合。
  • wpa_supplicant 設定ファイルが存在する場合。dhcpcd はデフォルトで以下のファイルを (この順番で) チェックします:
/etc/wpa_supplicant/wpa_supplicant-"$interface".conf
/etc/wpa_supplicant/wpa_supplicant.conf
/etc/wpa_supplicant-"$interface".conf
/etc/wpa_supplicant.conf

ただし、/etc/dhcpcd.confenv wpa_supplicant_conf=configuration_file_path と追加することでカスタムパスを追加することもできます。

ノート: 設定ファイルが最初に見つかった時点でフックは停止します。そのため、wpa_supplicant の設定ファイルが複数存在する場合は注意が必要です。dhcpcd が間違ったファイルを使ってしまう可能性があります。

wpa_supplicant で無線接続を管理している場合、フックによって望ましくない接続イベントが作成されてしまう可能性があります。例えば、wpa_supplicant を停止したときにフックによってインターフェイスが再度立ち上げられてしまうかもしれません。また、netctl-auto を使用している場合、/run/network/wpa_supplicant_"$interface".conf によって wpa_supplicant は自動的に起動するため、フックから起動する必要はなくなり、結果としてデフォルトのパッケージに含まれているダミーの値しか記述されていない /etc/wpa_supplicant/wpa_supplicant.conf ファイルのパースエラーが起動時に発生します。

フックを無効にするには、dhcpcd.confnohook wpa_supplicant を追加してください。

Tips and tricks

古い DHCP リースを削除

/var/lib/dhcpcd/dhcpcd-interface.lease ファイルには (interface はリースを得るインターフェイスの名前) DHCP サーバーから送信された実際の DHCP リースの応答が含まれています。このファイルを使ってサーバーからの最後のリースを判別することができ、また、ファイルの mtime 属性を使ってリースの発行日時が確認されます。最後のリース情報を使用することで、前回ネットワーク上で確保されたのと同じ IP アドレスをリクエストします。リース情報を使用して欲しくない場合、ファイルを削除してください。

ファイルを削除しても DHCP サーバーから同じ IP アドレスが割り当てられる場合、割り当てを安定化するためにリクエストしてくる DHCP クライアントの ID や DUID を識別するように設定されている可能性があります (#DHCP クライアント ID を参照)。dhcpcd を停止して /etc/dhcpcd.duid を削除あるいは名前を変更することでテストができます。dhcpcd は次回の起動時に新しいファイルを生成します。

DUID は再起動しても変わらない永続的なマシンの識別子であることに注意してください。システムを新しいコンピュータに移動する場合、ファイルをそのまま持っていくと古いコンピュータとして認識されます。

マルチブートするときに IP を変える

Arch と OS X あるいは Windows をデュアルブートしていて、それぞれ別の IP アドレスを割り当てたい場合、オペレーティングシステムごとに別々の DUID を指定することでリースされる IP を制御することができます。

(XP 以降の) Windows では以下のレジストリキーに DUID が保存されています:

\HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\Tcpip6\Parameters\Dhcpv6DUID 

OS X では Network\adapter\dhcp preferences panel から直接アクセスできます。

dnsmasq DHCP サーバーを使っている場合、dnsmasq の設定で適切な dhcp-host= ルールを使うことで別々の DUID を使えます。

トラブルシューティング

クライアント ID

また、MAC アドレスに基づくクライアント ID をフィルタリングしている DHCPv4 ネットワークを使う場合は、次の行を:

/etc/dhcpcd.conf
# Use the same DUID + IAID as set in DHCPv6 for DHCPv4 Client ID as per RFC4361. 
duid

以下のように変更してください:

/etc/dhcpcd.conf
# Use the hardware address of the interface for the Client ID (DHCPv4).
clientid

こうしないと、DHCP サーバーがあなたの DHCPv6 クライアント ID を正しく読み込めない可能性があります。詳しくは RFC 4361 を見て下さい。

まず IP を開放して DHCP の問題を確認する

DHCP が間違った IP の割り当てを取得している時、問題が起こることがあります。例えば2つのルーターが VPN で結び付けられている場合が考えられます。修正するには、コンソールで、root 権限を使って IP アドレスを開放してください:

# dhcpcd -k

それから新しい IP アドレスをリクエストしてください:

# dhcpcd

おそらくこの2つのコマンドを何度も実行する必要があります。

強情なルーターの問題

(厄介な) ルーターによっては、/etc/dhcpcd.conf にある以下の行をコメントアウトしないと接続が上手くいかないことがあります:

require dhcp_server_identifier

ネットワーク上に複数の DHCP サーバーがあるという状況でないかぎり (こういうことは稀です)、コメントアウトすることで問題が発生することはありません。詳しくは このページ を参照。

dhcpcd と systemd ネットワークインターフェイス

インターフェイスを指定しないで dhcpcd.service有効にすることもできますが、predictable network interface name を適用する systemd-udevd と起動時に競合状態になる可能性があります:

error changing net interface name wlan0 to wlp4s0: Device or resource busy" 

これを避けるために、dhcpcd を有効にするときは #実行 で説明されているようにインターフェイスを指定して下さい。

タイムアウト

dhcpcd は単一のインターフェイスで30秒たってもリースが取得できなかった場合 (例えばサーバーが動作していない場合)、エラーを吐いて終了します。dhcpcd に無期限に待機するよう設定するには、timeout オプションを 0 に設定します:

/etc/systemd/system/dhcpcd@.service.d/timeout.conf
[Service]
ExecStart=
ExecStart=/usr/bin/dhcpcd -w -q -t 0 %I

そして設定をリロードしてください。

参照