pacman/Pacnew と Pacsave
pacman は、設定ファイルが存在するパッケージを削除する際に、その設定ファイルのバックアップコピーを作成します。この時、バックアップファイルの名前には .pacsave という接尾辞が付けられます。同じように、パッケージをアップグレードする際に、ファイルシステム上に既に存在している設定ファイルの内容が、パッケージに含まれる新しい設定ファイルと異なる場合、新しい方の設定ファイルが .pacnew ファイルとして保存されます。pacman は、これらのファイルが作成された際に警告を表示します。
目次
これらのファイルが作成される理由
.pacnew ファイルは、既にファイルシステム上に存在している変更済みの設定ファイルを上書きしないようにするために、パッケージの更新時に作成されます。この時、pacman は以下のようなメッセージを出力します:
警告: /etc/pam.d/usermod は /etc/pam.d/usermod.pacnew としてインストールされました
.pacsave ファイルは、パッケージの削除時 (pacman -R
) とアップグレード時に作成されます (アップグレード時にはパッケージが一度削除されるため)。pacman は、パッケージを削除する際に、データベースを調べてバックアップするべきファイルが存在するか判断します。そのようなファイルに対しては、バックアップとして .pacsave ファイルが作成されます。この時、pacman は以下のようなメッセージを出力します:
警告: /etc/pam.d/usermod は /etc/pam.d/usermod.pacsave として保存されました
これらのファイルに対してはユーザによる手動操作が必要であり、パッケージのアップグレードや削除の後は即座にこれらのファイルを処理することが推奨されます。放置していると、不適切な設定によってソフトウェアの誤動作を招いたり、ソフトウェアが実行できなくなったりする可能性があります。
パッケージのバックアップファイル
パッケージの PKGBUILD ファイルでは、パッケージをアップグレードまたは削除した際に保持またはバックアップするべきファイルが指定されていることがあります。例えば、pulseaudio の PKGBUILD には以下の行が含まれています:
backup=(etc/pulse/{daemon.conf,default.pa,system.pa})
パッケージのインストール後、pacman -Qii package_name
を実行することで、pacman データベースからバックアップすべきファイルのリストを取得できます。
パッケージの操作時に特定のファイルを上書きしないようにするには、Pacman#アップグレードさせないファイルを設定 を参照してください。
タイプの説明
.pac*
ファイルにはさまざまなタイプがあります。
.pacnew
パッケージに含まれている backup
ファイルが更新されると、pacman はファイルの中身から生成される3つの md5sum を相互に比較します: 1つは更新前のパッケージによってインストールされる元のバージョンのチェックサム、1つはファイルシステムに存在する現在のバージョンのチェックサム、そしてもう1つは新しいパッケージに含まれているバージョンのチェックサムです。ファイルシステムに存在する現在のバージョンのファイルがパッケージによってインストールされる元のバージョンから修正されている場合、pacman は修正を新しいバージョンのファイルにマージする方法を知り得ません。従って、更新するとき、修正されたファイルを上書きする代わりに pacman は .pacnew
拡張子が付いた新しいバージョンを保存し、修正されたバージョンには手を付けないでおきます。
もっと詳しく解説すると、3-way の MD5 チェックサムの比較は以下のどれかに当てはまることになります:
- original = X, current = X, new = X
- 3つのバージョンのファイルは全て同じ中身で、上書きしても問題ありません。現在のバージョンは新しいバージョンで上書きされユーザーには通知されません (ファイルの中身が同じ場合でも、ファイルのインストール時刻・修正時刻・アクセス時刻などのファイルシステム情報は更新され、ファイルのパーミッションが変更されている場合、全て適用されます)。
- original = X, current = X, new = Y
- 現在のバージョンの中身は元のバージョンと同じですが、新しいバージョンとは異なっています。ユーザーが現在のバージョンを修正しておらず、新しいバージョンには改善やバグフィックスが含まれていることがあるので、新しいバージョンによって現在のバージョンは上書きされユーザーには通知されません。これは pacman が実行できる唯一の自動マージです。
- original = X, current = Y, new = X
- 元のパッケージと新しいパッケージは全く同じバージョンのファイルを含んでいますが、ファイルシステムにある現在のバージョンは修正されています。現在のバージョンがそのまま残され、新しいバージョンはユーザーに通知されずに処分されます。
- original = X, current = Y, new = Y
- 新しいバージョンが現在のバージョンと同一です。現在のバージョンは新しいバージョンによって上書きされユーザーには通知されません (ファイルの中身が同じだとしても、ファイルのインストール・修正・アクセス時刻などファイルシステムの情報は更新されますし、ファイルのパーミッションの変更は全て適用されます)。
- original = X, current = Y, new = Z
- 3つのバージョン全てが異なっています。現在のバージョンはそのまま維持され、新しいバージョンは
.pacnew
拡張子を付けてインストールされます。またユーザーに新しいバージョンについて警告が表示されます。新しいバージョンから現在のバージョンへ必要な変更を手動でマージする必要があります。
.pacsave
backup
に指定されているファイルのどれかをユーザーが編集した場合、そのファイルは .pacsave
拡張子が付けられた名前に変更されパッケージが削除された後もファイルシステムに残り続けます。
.pac* ファイルの検索
Pacman には .pacnew
ファイルを自動で処理する機能を提供していません。あなた自身でこれらのファイルを管理する必要があります; 次のセクションではいくつかのツールが紹介されています。管理を手動で行うには、まずファイルを確認しなくてはならないでしょう。多数のパッケージを更新・削除した時は、更新された *.pac* ファイルを見落とすかもしれません。*.pac*
ファイルがインストールされていないかどうか調べるには:
ほとんどのグローバルな設定が保存されている場所だけを検索するには:
$ find /etc -regextype posix-extended -regex ".+\.pac(new|save)" 2> /dev/null
ディスク全体を検索するには:
$ find / -regextype posix-extended -regex ".+\.pac(new|save)" 2> /dev/null
もしくは (インストールしている場合) locate を使って下さい。まずデータベースのインデックスを作成します:
# updatedb
そして:
$ locate --existing --regex "\.pac(new|save)$"
または pacman のログからファイルを見つける方法もあります:
$ grep --extended-regexp "pac(new|save)" /var/log/pacman.log
ログにはファイルシステムにある現在のファイルや既に削除されているファイルの記録は保存していないので注意してください。上記のコマンドはシステムに存在していた全ての *.pac*
ファイルを表示します。
tail
コマンドを使うことで一番最近の10個の *.pac*
ファイルに絞ることができます:
$ grep --extended-regexp "pac(new|save)" /var/log/pacman.log | tail
.pac* ファイルの管理
pacdiff
Pacman には pacnew/pacsave ファイルを管理するためのシンプルなツールとして pacdiff が付属しています。pacdiff は全ての pacnew
と pacsave
ファイルを検索して、ファイルをどうするか質問します。デフォルトでは vimdiff が使われますが、DIFFPROG=your_editor pacdiff
で別のツールを指定することも可能です。他の一般的な比較ツールについてはアプリケーション一覧/ユーティリティ#マージツールを参照してください。
サードパーティユーティリティ
AUR にはマージ作業をある程度自動化するサードパーティのユーティリティが存在します。以下のツールを使うことができます:
- dotpac — ncurses ベースのテキストインターフェイスと分かりやすいウォークスルーによる基礎的な対話スクリプト。マージや自動マージ機能は備えていません。
- etc-update — Gentoo の etc-update ユーティリティの Arch 移植。シンプルな CLI を使って変更を表示・マージ・編集することができます。些細な変更 (コメントの追加など) は自動的にマージすることができます。
- p3wm — 3方向マージ .pacnew を使って小さな変更を自動的にマージできます。競合が発生した場合は、 vimdiff、 meld、 または kdiff3 を起動して解決します。
- pacfiles-mode — .pacnew ファイルを管理しマージするためのパッケージで、 melpa から入手できます。
- https://github.com/UndeadKernel/pacfiles-mode || パッケージが存在しないか AUR で検索
- pacnews-git — .pacnew ファイルを全て検索して vimdiff で編集するシンプルなスクリプト。
参照
- フォーラムスレッド: Dealing with .pacnew files