「電源管理/サスペンドとハイバネート」の版間の差分

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サスペンドの[https://docs.kernel.org/admin-guide/pm/sleep-states.html 複数の方法]を利用できます。とりわけ:
現在サスペンドには3つの手法が存在します:
 
   
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; Suspend to idle: Intel は [https://01.org/blogs/qwang59/2018/how-achieve-s0ix-states-linux S0ix] と呼んでおり、Microsoft は [https://docs.microsoft.com/en-us/windows-hardware/design/device-experiences/modern-standby Modern Standby] (以前は "Connected Standby") と呼んでいます。Linux カーネルでは [https://docs.kernel.org/admin-guide/pm/sleep-states.html#suspend-to-idle S2Idle] と呼ばれています。サポートされているシステムにおいて '''S3''' [[Wikipedia:ACPI#Global states|スリープ状態]]の代わりに使用されるように設計されており、同等の節電機能を提供しますが、復帰に掛かる時間が大幅に短縮されます。{{Tip|[https://www.dell.com/support/kbdoc/en-us/000143524/the-battery-drains-quicker-than-expected-on-a-dell-notebook-with-modern-standby-mode-enabled Windows] や [https://support.apple.com/guide/mac-help/mh40773/mac macOS] はネットワーク活動のためにこの状態のデバイスの復帰をサポートしているので、これらの OS においてこの状態はバッテリーの消耗問題の影響を受けます。一方、Linux のソフトウェアエコシステムは現在この機能を使用しないため、影響を受けないはずです。}}
 
; Suspend to RAM (サスペンド、スリープとも呼ばれます): ACPI で '''S3''' スリープ状態として定義されています。RAM を除くマシンのほとんど全てのパーツの電源を切ります。RAM への電源はマシンの状態を保存するために必要です。電力を多く節約できるので、ラップトップでは、バッテリーでコンピュータが稼働していてフタが閉じられた時 (もしくはユーザーが長い間操作しなかった時) は自動的にこのモードに移行するのが得策でしょう。
 
; Suspend to RAM (サスペンド、スリープとも呼ばれます): ACPI で '''S3''' スリープ状態として定義されています。RAM を除くマシンのほとんど全てのパーツの電源を切ります。RAM への電源はマシンの状態を保存するために必要です。電力を多く節約できるので、ラップトップでは、バッテリーでコンピュータが稼働していてフタが閉じられた時 (もしくはユーザーが長い間操作しなかった時) は自動的にこのモードに移行するのが得策でしょう。
 
; Suspend to disk (ハイバネートとも呼ばれます): ACPI で '''S4''' スリープ状態として定義されています。マシンの状態を[[スワップ|スワップ領域]]に保存してマシンの電源を完全にオフにします。マシンに電源を入れた時、状態が復元されます。それまでは、電力消費量は[[Wikipedia:Standby power|ゼロ]]です。
 
; Suspend to disk (ハイバネートとも呼ばれます): ACPI で '''S4''' スリープ状態として定義されています。マシンの状態を[[スワップ|スワップ領域]]に保存してマシンの電源を完全にオフにします。マシンに電源を入れた時、状態が復元されます。それまでは、電力消費量は[[Wikipedia:Standby power|ゼロ]]です。
; Suspend to both: 前述の2つの手法のハイブリッドです。'''ハイブリッドサスペンド''' と呼ばれることもあります。マシンの状態をスワップ領域に保存しますが、マシンの電源を切りません。代わりに、通常 suspend to RAM を呼び出します。これによって、バッテリーを使いきっても、システムを RAM から復帰することが可能です。バッテリーが枯渇した時は、システムはディスクから復帰し、RAM からの復帰に比べて時間がかかりますが、システムの状態が失われることはありません。
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; Suspend to both: サスペンドとハイバネートのハイブリッドです。'''ハイブリッドサスペンド''' と呼ばれることもあります。マシンの状態をスワップ領域に保存しますが、マシンの電源を切りません。代わりに、デフォルトサスペンドを呼び出します。これによって、バッテリーを使いきっても、システムは即座に復帰できます。バッテリーが枯渇した時は、システムはディスクから復帰し、RAM からの復帰に比べて時間がかかりますが、システムの状態が失われることはありません。
   
 
基本的な機能を提供する低レベルなインターフェイス (バックエンド) が複数存在し、問題のあるハードウェアドライバ/カーネルモジュール (例: ビデオカードの再初期化) を扱う機能を提供する高レベルなインターフェイスもいくつかあります。
 
基本的な機能を提供する低レベルなインターフェイス (バックエンド) が複数存在し、問題のあるハードウェアドライバ/カーネルモジュール (例: ビデオカードの再初期化) を扱う機能を提供する高レベルなインターフェイスもいくつかあります。
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直球の方法はカーネル内のソフトウェアサスペンドコード (swsusp) にサスペンド状態に入るよう直接伝えることです。実際の方法と状態はハードウェアサポートのレベルによります。最近のカーネルでは、サスペンドにするために {{ic|/sys/power/state}} に適切な文字列を書くことが主な方法になっています。
 
直球の方法はカーネル内のソフトウェアサスペンドコード (swsusp) にサスペンド状態に入るよう直接伝えることです。実際の方法と状態はハードウェアサポートのレベルによります。最近のカーネルでは、サスペンドにするために {{ic|/sys/power/state}} に適切な文字列を書くことが主な方法になっています。
   
詳しくは [https://docs.kernel.org/admin-guide/pm/sleep-states.html カーネルドキュメント] を参照してください。
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詳しくは [https://docs.kernel.org/admin-guide/pm/sleep-states.html#basic-sysfs-interfaces-for-system-suspend-and-hibernation カーネルドキュメント] を参照してください。
   
 
=== ユーザ空間 (uswsusp) ===
 
=== ユーザ空間 (uswsusp) ===
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サスペンド・ハイバネートのフックの設定に関する情報は[[電源管理#スリープフック]]に載っています。{{ic|man systemctl}}, {{ic|man systemd-sleep}}, {{ic|man systemd.special}} もあわせて参照してください。
 
サスペンド・ハイバネートのフックの設定に関する情報は[[電源管理#スリープフック]]に載っています。{{ic|man systemctl}}, {{ic|man systemd-sleep}}, {{ic|man systemd.special}} もあわせて参照してください。
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== サスペンドの方法を変更する ==
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S0ix サスペンドが通常の S3 スリープと同じ節電機能を提供しないシステム、あるいは、電力を節約することが復帰を高速化することよりも優先される場合においては、デフォルトのサスペンド方法を変更することが可能です。
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{{Tip|S0ix は S3 スリープと同等かより高い節電性能を提供するはずです。意図通りに S0ix を機能させることができるかどうかは、次の Intel のブログ投稿を参照してください: [https://01.org/blogs/qwang59/2018/how-achieve-s0ix-states-linux How to achieve S0ix states in Linux]、[https://01.org/blogs/qwang59/2020/linux-s0ix-troubleshooting Linux S0ix Troubleshooting]、[https://01.org/blogs/thac0/2019/idling-efficiently-linux-case-study Idling Efficiently on Linux: A Case Study]。}}
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まず、以下の例のように、ハードウェアが他のサスペンド法のサポートを広告しているかどうか確認します:
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{{hc|$ cat /sys/power/mem_sleep|
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[s2idle] shallow deep
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}}
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ハードウェアが {{ic|deep}} スリープ状態を広告していない場合、UEFI にそのような設定がないか確認してください。通常、''Power'' や ''Sleep state'' などのような項目にあります。S0ix のオプションは ''Windows 10'' や ''Windows and Linux'' や ''S3/Modern standby support'' という名前です。S3 スリープのオプションは ''Legacy''、''Linux''、''Linux S3''、''S3 enabled'' という名前です。設定できない場合、{{ic|s2idle}} を使い続けることもできます、[[ハイバネート]] を使うことを検討するか、[[DSDT]] テーブルにパッチを当ててみてください (あるいは、パッチ適用済みのバージョンを見つけてください)。
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{{Note|最後の解決策では、近い将来、問題が発生する可能性があります。(Windows を同梱しているシステムでは、デフォルトで "Modern standby" を使うよう推奨されているため) メーカーは ACPI S3 状態のバグの修正を停止しています。メーカーが自発的にそれを広告していない場合、おそらく、S3 状態は何らかの形で壊れています。}}
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スリープの方法を変更したあと、スリープサイクルを何回かテストして、ハードウェアが S3 スリープで問題を起こさないかテストしてください:
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# echo "deep" > /sys/power/mem_sleep
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問題が無ければ、{{ic|1=mem_sleep_default=deep}} [[カーネルパラメータ]] を使って変更を永続化できます。
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いくつかの逆の状況では、問題のあるファームウェアが、{{ic|s2idle}} しかサポートしていないにも関わらず、{{ic|deep}} をサポートしていると広告することがあります。この場合、{{man|5|sleep.conf.d}} 内で {{ic|SuspendState}} を使うことにより、{{ic|s2idle}} を使うことができます:
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{{hc|/etc/systemd/sleep.conf.d/freeze.conf|2=
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[Sleep]
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SuspendState=freeze
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}}
   
 
== ハイバネーション ==
 
== ハイバネーション ==
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{{Pkg|btrfs-progs}} 6.1 では、ハイバネーションのために使用されるスワップファイルとそのオフセット値をチェックするためのコマンドが提供されています。{{man|8|btrfs-inspect-internal}} を参照してください。
 
{{Pkg|btrfs-progs}} 6.1 では、ハイバネーションのために使用されるスワップファイルとそのオフセット値をチェックするためのコマンドが提供されています。{{man|8|btrfs-inspect-internal}} を参照してください。
   
# btrfs inspect-internal map-swapfile -r ''path/to/swapfile''
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{{hc|# btrfs inspect-internal map-swapfile -r ''path/to/swapfile''|198122980}}
198122980
 
   
 
==== thinly-provisioned LVM ボリュームへのハイバネーション ====
 
==== thinly-provisioned LVM ボリュームへのハイバネーション ====
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[[radeon]] ビデオドライバから新しい [[AMDGPU]] ドライバに変更すると、ハイバネートとハイバネートからの復帰のプロセスが成功するかもしれません。
 
[[radeon]] ビデオドライバから新しい [[AMDGPU]] ドライバに変更すると、ハイバネートとハイバネートからの復帰のプロセスが成功するかもしれません。
   
Intel グラフィックドライバの場合は、早期 KMS を有効化することにより、真っ暗な画面の問題を解決できることがあります。詳細は [[カーネルモード設定#KMS の早期開始]]を見てください。
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Intel グラフィックドライバの場合は、早期 KMS を有効化することにより、真っ暗な画面の問題を解決できることがあります。詳細は [[カーネルモード設定#KMS の早期開始]]を見てください。
   
 
カーネル 4.15.3 にアップグレードした後に、サスペンド/ハイバネートからの復帰に失敗し、真っ暗な画面でカーソルが固まる(点滅はしない)ようになることがあります。{{ic|nvidiafb}} モジュールを[[ブラックリスト]]に追加すると解決するかもしれません。[https://bbs.archlinux.org/viewtopic.php?id=234646]
 
カーネル 4.15.3 にアップグレードした後に、サスペンド/ハイバネートからの復帰に失敗し、真っ暗な画面でカーソルが固まる(点滅はしない)ようになることがあります。{{ic|nvidiafb}} モジュールを[[ブラックリスト]]に追加すると解決するかもしれません。[https://bbs.archlinux.org/viewtopic.php?id=234646]
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[[復帰トリガー#サスペンドからすぐに復帰する]] を見てください。
 
[[復帰トリガー#サスペンドからすぐに復帰する]] を見てください。
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AMD CPU 上で Linux カーネル 6.1 以上を使用している場合、これは[https://gitlab.freedesktop.org/drm/amd/-/issues/2357 カーネル内の s3 関連の制御ポリシーの問題]が原因である可能性もあります。一時的な解決策は、関連する i2c デバイスの復帰をオフにすることです。関連する i2c デバイスは以下のコマンドで見つけられます:
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$ ls /sys/bus/i2c/devices/*/power/wakeup
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デバイス名の形式は {{ic|i2c-ELAN0679:00}} や {{ic|i2c-MSFT0001:00}} であるはずです。次に、以下のコマンドでサスペンドに移行できるかテストします:
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# echo disabled > /sys/bus/i2c/devices/''device_name''/power/wakeup
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# systemctl suspend
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これでうまく行くならば、udev ルールを追加することで、この設定を永続化できます:
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{{hc|/etc/udev/rules.d/99-avoid-i2c-wakeup.rules|2=KERNEL=="''device_name''", SUBSYSTEM=="i2c", ATTR{power/wakeup}="disabled"}}
   
 
=== ハイバネートした時にシステムの電源が落ちない ===
 
=== ハイバネートした時にシステムの電源が落ちない ===
 
 
システムをハイバネートした時には、(状態をディスク上に保存したあとに)システムの電源が落ちるべきです。時々、ハイバネートした後も電源 LED が光り続けることがあります。これが起こる場合、{{man|5|sleep.conf.d}} で {{ic|HibernateMode}} を {{ic|shutdown}} に設定すると問題が解決するかもしれません。
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システムをハイバネートした時には、(状態をディスク上に保存したあとに)システムの電源が落ちるはずです。時々、ハイバネートした後も電源 LED が光り続けることがあります。これが起こる場合、{{man|5|sleep.conf.d}} で {{ic|HibernateMode}} を {{ic|shutdown}} に設定すると問題が解決するかもしれません。
 
 
 
{{hc|/etc/systemd/sleep.conf.d/hibernatemode.conf|2=
 
{{hc|/etc/systemd/sleep.conf.d/hibernatemode.conf|2=
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[[#ハイバネートした時にシステムの電源が落ちない]] で説明したように {{ic|1=HibernateMode=shutdown}} を設定することで、この問題を永久に解決できます。すでにシステムから締め出されてしまっている場合、システムを4回再起動 (毎回、エラーが表示されるまで待ってください) してみることで、一部の BIOS 上では通常のブート手順を強制することができます。
 
[[#ハイバネートした時にシステムの電源が落ちない]] で説明したように {{ic|1=HibernateMode=shutdown}} を設定することで、この問題を永久に解決できます。すでにシステムから締め出されてしまっている場合、システムを4回再起動 (毎回、エラーが表示されるまで待ってください) してみることで、一部の BIOS 上では通常のブート手順を強制することができます。
   
{{TranslationStatus|Power management/Suspend and hibernate|2023-01-14|764001}}
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{{TranslationStatus|Power management/Suspend and hibernate|2023-03-05|769924}}

2023年3月5日 (日) 06:17時点における版

関連記事

サスペンドの複数の方法を利用できます。とりわけ:

Suspend to idle
Intel は S0ix と呼んでおり、Microsoft は Modern Standby (以前は "Connected Standby") と呼んでいます。Linux カーネルでは S2Idle と呼ばれています。サポートされているシステムにおいて S3 スリープ状態の代わりに使用されるように設計されており、同等の節電機能を提供しますが、復帰に掛かる時間が大幅に短縮されます。
ヒント: WindowsmacOS はネットワーク活動のためにこの状態のデバイスの復帰をサポートしているので、これらの OS においてこの状態はバッテリーの消耗問題の影響を受けます。一方、Linux のソフトウェアエコシステムは現在この機能を使用しないため、影響を受けないはずです。
Suspend to RAM (サスペンド、スリープとも呼ばれます)
ACPI で S3 スリープ状態として定義されています。RAM を除くマシンのほとんど全てのパーツの電源を切ります。RAM への電源はマシンの状態を保存するために必要です。電力を多く節約できるので、ラップトップでは、バッテリーでコンピュータが稼働していてフタが閉じられた時 (もしくはユーザーが長い間操作しなかった時) は自動的にこのモードに移行するのが得策でしょう。
Suspend to disk (ハイバネートとも呼ばれます)
ACPI で S4 スリープ状態として定義されています。マシンの状態をスワップ領域に保存してマシンの電源を完全にオフにします。マシンに電源を入れた時、状態が復元されます。それまでは、電力消費量はゼロです。
Suspend to both
サスペンドとハイバネートのハイブリッドです。ハイブリッドサスペンド と呼ばれることもあります。マシンの状態をスワップ領域に保存しますが、マシンの電源を切りません。代わりに、デフォルトのサスペンドを呼び出します。これによって、バッテリーを使いきっても、システムは即座に復帰できます。バッテリーが枯渇した時は、システムはディスクから復帰し、RAM からの復帰に比べて時間がかかりますが、システムの状態が失われることはありません。

基本的な機能を提供する低レベルなインターフェイス (バックエンド) が複数存在し、問題のあるハードウェアドライバ/カーネルモジュール (例: ビデオカードの再初期化) を扱う機能を提供する高レベルなインターフェイスもいくつかあります。

低レベルインターフェイス

これらのインターフェイスは直接使うこともできますが、通常は高レベルインターフェイスを使ってサスペンド・ハイバネートを行うとよいでしょう。低レベルなインターフェイスを直接使うと、サスペンドの前や後に行うフック処理を全て実行する高レベルインターフェイスよりもかなり早くサスペンドが可能です。ただしフックはハードウェアクロックの設定や、ワイヤレスの復旧などを正しく処理することができます。

カーネル (swsusp)

直球の方法はカーネル内のソフトウェアサスペンドコード (swsusp) にサスペンド状態に入るよう直接伝えることです。実際の方法と状態はハードウェアサポートのレベルによります。最近のカーネルでは、サスペンドにするために /sys/power/state に適切な文字列を書くことが主な方法になっています。

詳しくは カーネルドキュメント を参照してください。

ユーザ空間 (uswsusp)

uswsusp ('Userspace Software Suspend') はカーネルの suspend-to-RAM のラッパーで、サスペンドの前と復帰の後にユーザー空間からグラフィックアダプタの操作を行います。

Uswsusp の記事を参照してください。

高レベルインターフェイス

これらのパッケージではサスペンド/ハイバネートを行うためのバイナリ/スクリプトを提供します。実際に電源ボタンやメニュークリック、ラップトップのカバーのイベントなどと結びつけるのは他のツールで行うのが通常です。(ラップトップのカバーが閉じられたり、バッテリーが枯渇するなど)特定の電源イベントで自動的にサスペンド/ハイバネートをするには、Acpid の実行について調べて下さい。

systemd

systemd はサスペンド・ハイバネート・ハイブリッドサスペンドを行うためのネイティブのコマンドを提供しています。詳しくは 電源管理#systemd による電源管理 を見て下さい。これは Arch Linux で使われているデフォルトのインターフェースです。

サスペンド・ハイバネートのフックの設定に関する情報は電源管理#スリープフックに載っています。man systemctl, man systemd-sleep, man systemd.special もあわせて参照してください。

サスペンドの方法を変更する

S0ix サスペンドが通常の S3 スリープと同じ節電機能を提供しないシステム、あるいは、電力を節約することが復帰を高速化することよりも優先される場合においては、デフォルトのサスペンド方法を変更することが可能です。

ヒント: S0ix は S3 スリープと同等かより高い節電性能を提供するはずです。意図通りに S0ix を機能させることができるかどうかは、次の Intel のブログ投稿を参照してください: How to achieve S0ix states in LinuxLinux S0ix TroubleshootingIdling Efficiently on Linux: A Case Study

まず、以下の例のように、ハードウェアが他のサスペンド法のサポートを広告しているかどうか確認します:

$ cat /sys/power/mem_sleep
[s2idle] shallow deep

ハードウェアが deep スリープ状態を広告していない場合、UEFI にそのような設定がないか確認してください。通常、PowerSleep state などのような項目にあります。S0ix のオプションは Windows 10Windows and LinuxS3/Modern standby support という名前です。S3 スリープのオプションは LegacyLinuxLinux S3S3 enabled という名前です。設定できない場合、s2idle を使い続けることもできます、ハイバネート を使うことを検討するか、DSDT テーブルにパッチを当ててみてください (あるいは、パッチ適用済みのバージョンを見つけてください)。

ノート: 最後の解決策では、近い将来、問題が発生する可能性があります。(Windows を同梱しているシステムでは、デフォルトで "Modern standby" を使うよう推奨されているため) メーカーは ACPI S3 状態のバグの修正を停止しています。メーカーが自発的にそれを広告していない場合、おそらく、S3 状態は何らかの形で壊れています。

スリープの方法を変更したあと、スリープサイクルを何回かテストして、ハードウェアが S3 スリープで問題を起こさないかテストしてください:

# echo "deep" > /sys/power/mem_sleep

問題が無ければ、mem_sleep_default=deep カーネルパラメータ を使って変更を永続化できます。

いくつかの逆の状況では、問題のあるファームウェアが、s2idle しかサポートしていないにも関わらず、deep をサポートしていると広告することがあります。この場合、sleep.conf.d(5) 内で SuspendState を使うことにより、s2idle を使うことができます:

/etc/systemd/sleep.conf.d/freeze.conf
[Sleep]
SuspendState=freeze

ハイバネーション

ハイバネーションを使うには、スワップパーティションかスワップファイルを作成する必要があります。そして resume= カーネルパラメータを使ってスワップを指定してください。カーネルパラメータはブートローダで設定します。initramfs の設定も必要になります。設定によってカーネルは初期ユーザー空間で指定されたスワップからの復帰を試みます。以下ではスワップの作成・カーネルパラメータの設定・initramfs の設定について詳細に説明します。

ノート:

スワップパーティション(ファイル)のサイズについて

スワップパーティションが RAM より小さかったとしても、ハイバネートが成功する可能性は高いと思われます。image_size sysfs(5) 疑似ファイルに関する情報は カーネルドキュメントの "image_size" を見てください。

(スワップパーティションを小さくして) /sys/power/image_size の値を減らしてサスペンドのイメージを出来る限り小さくすることも、値を増やしてハイバネーションを高速化することも可能です。大きな容量の RAM を搭載しているシステムでは、より小さい値にするとハイバネートからの復帰が劇的に速くなることがあります。image_size の値を再起動後も保持するために systemd#systemd-tmpfiles - 一時ファイル を使うことができます:

/etc/tmpfiles.d/hibernation_image_size.conf
#    Path                   Mode UID  GID  Age Argument
w    /sys/power/image_size  -    -    -    -   0

サスペンドイメージは複数のスワップパーティション/スワップファイルにまたがって保存することができません。イメージのすべての部分が1つのスワップパーティション/スワップファイルに収まらなければなりません。[1]

initramfs の設定

  • initramfsbase フックを使っている場合 (Arch ではデフォルトで使っています)、/etc/mkinitcpio.confresume フックを追加する必要があります。ラベルあるいは UUID どちらを使用している場合でもスワップパーティションは udev デバイスノードによって参照されるので、resume フックは必ず filesystems の前に追加してください。デフォルトのフック設定に resume フックを追加すると以下のようになります:
HOOKS=(base udev autodetect keyboard modconf block filesystems resume fsck)
変更を適用するために initramfs の再生成を忘れずに行ってください。
ノート: LVM を使っている場合は resume フックを lvm2 の後に追加してください。
  • initramfs で systemd フックを使っている場合は、復帰機構が既に提供されているので、フックを追加する必要はありません。

必要なカーネルパラメータ

カーネルパラメータ resume=swap_device を使う必要があります。永続的なブロックデバイスの命名swap_device に使用することができます。例:

  • resume=/dev/sda1
  • resume=UUID=4209c845-f495-4c43-8a03-5363dd433153
  • resume=/dev/mapper/archVolumeGroup-archLogicVolume -- スワップが LVM 論理ボリュームにある場合

カーネルパラメータは再起動後に有効となります。すぐにハイバネートできるようにするには、lsblk を使ってボリュームのメジャーデバイスナンバーとマイナーデバイスナンバーを手に入れて、/sys/power/resumemajor:minor という形式で書き込んでください。スワップファイルを使用している場合は、追加で /sys/power/resume_offset に resume オフセットを書き込んでください。[2]

例えば、スワップデバイスが 8:3 の場合:

# echo 8:3 > /sys/power/resume

スワップファイルにハイバネートする場合で、スワップファイルがボリューム 8:2 にあり、オフセットが 38912 の場合:

# echo 8:2 > /sys/power/resume
# echo 38912 > /sys/power/resume_offset

スワップファイルにハイバネーション

ノート: Btrfs については、#Btrfs 上のスワップファイルへのハイバネーション を見てください。

スワップファイル を使用するには resume=UUID=swap_device_uuid だけでなく、resume_offset=swap_file_offset カーネルパラメータも設定する必要があります。カーネルのドキュメントを見てください。

swap_device はスワップファイルが存在するボリュームで、root パラメータと同じ形式に従います。swap_file_offset の値は filefrag -v swap_file を実行することで取得できます。テーブル形式で出力され、必要な値は physical_offset カラムの一番上の段にあります。例えば:

# filefrag -v /swapfile
Filesystem type is: ef53
File size of /swapfile is 4294967296 (1048576 blocks of 4096 bytes)
 ext:     logical_offset:        physical_offset: length:   expected: flags:
   0:        0..       0:      38912..     38912:      1:
   1:        1..   22527:      38913..     61439:  22527:             unwritten
   2:    22528..   53247:     899072..    929791:  30720:      61440: unwritten
...

この例では swap_file_offset の値は2つのピリオドが付いている最初の 38912 です。

ヒント:
  • 次のコマンドは swap_device_uuid を特定するのに利用できます: findmnt -no UUID -T /swapfile
  • 次のコマンドは swap_file_offset を特定するのに利用できます: filefrag -v /swapfile | awk '$1=="0:" {print substr($4, 1, length($4)-2)}'
  • swap_file_offset の値は swap-offset swap_file を実行することによっても得られます。 swap-offset バイナリは uswsusp ツールのセットで提供されています。 もしこの方法を利用するならば、これら2つのパラメータは /etc/suspend.conf 内で resume deviceresume offset というキーで渡されなければなりません。この場合、再起動は必要ありません。
ノート:
  • 暗号化コンテナ (LUKS)、 RAID、 LVM のようなスタックブロックデバイスでは、resume パラメータはスワップファイルのあるファイルシステムを含んでいる、アンロックまたはマップされたデバイスを指していなければなりません。
  • スワップファイルが /home/ に存在する場合、systemd-logind はスワップファイルのサイズを正しく判断することができないため、以下のメッセージによりハイバネートを停止します: Failed to hibernate system via logind: Not enough swap space for hibernation。2つの回避策については systemd issue 15354 をご覧ください。
ヒント: スワップファイルを作成する目的が、仮想メモリの拡張ではなくハイバネートがしたいだけの場合、スワップファイルの Swappiness を減らすとよいでしょう。

Btrfs 上のスワップファイルへのハイバネーション

Btrfs では filefrag ツールを使用しないでください。filefrag から取得する "物理" オフセットは、ディスク上の実際の物理オフセットではありません。複数のデバイスをサポートするために、仮想ディスクのアドレス空間があるのです。[3]

btrfs-progs 6.1 では、ハイバネーションのために使用されるスワップファイルとそのオフセット値をチェックするためのコマンドが提供されています。btrfs-inspect-internal(8) を参照してください。

# btrfs inspect-internal map-swapfile -r path/to/swapfile
198122980

thinly-provisioned LVM ボリュームへのハイバネーション

thinly-provisioned LVM されたボリュームへの休止状態は可能ですが、ボリュームが完全に割り当てられていることを確認する必要があります。そうしないと、再開に失敗します。FS#50703 を見てください。

LVM ボリュームをゼロで埋めるだけで、 LVM ボリュームを完全に割り当てることができます。 例えば:

# dd if=/dev/zero of=/dev/vg0/swap bs=1M status=progress

ボリュームが完全に割り当てられていることを確認するには、次を使用できます:

# lvs
 LV                   VG  Attr       LSize   Pool Origin    Data%  Meta%  Move Log Cpy%Sync Convert
 swap                 vg0 Vwi-aot--- 10.00g  pool           100

完全に割り当てられたボリュームは、100%のデータ使用量であると表示されます。

警告: 休止状態に使用される thinly-provisioned されたスワップボリュームで TRIM を使用しないでください。つまり、 /etc/fstabdiscard を使用しないでください。 swapon-d/--discard オプション。 そうしないと、使用済みスペースの割り当てが解除されます。

Intel Rapid Start Technology (IRST)

Intel Rapid Start Technology とは、ハイバネートするためのハードウェア上の方法で、あらかじめ設定された時間やバッテリー状態のあとにスリープからハイバネートに移行できるようにします。IRSTは、オペレーティングシステムのレベルではなくファームウェアによって行われるので、通常のハイバネートよりも速く信頼性が高いはずです。一般的に、IRST はファームウェアで有効化する必要があり、またファームウェアで、サスペンド/バッテリイベント後にハイバネートをトリガーするまでの時間を設定できます。しかし、一部のデバイスは IRST をファームウェアでサポートしていますが、Intel の Windows ドライバからでしか設定できません。そのような場合には、以下で説明している intel-rst カーネルモジュールで Linux でもイベントを設定できるはずです。

Intel Rapid Start Technology (IRST) が有効の場合、deep sleep からの再開には "S3から再開するよりも数秒長くなりますが、ハイバネートから再開するよりもはるかに高速です"。

Intel ベースのシステムの多くは、 IRST のファームウェアをサポートしていますが、(HDD ではなく) SSD 上に特別なパーティションを必要とします。 Windows の OEM 展開では、Arch Linux インストールプロセス中に (SSD 全体を消去して再パーティションするのではなく) 保持できる IRST パーティションがすでに存在している場合があります。システムの RAM と同じサイズの未フォーマットパーティションとして表示されます。

警告: Intel Rapid Start パーティションは暗号化されていません。「Intel は、あなたがソフトウェアベースのディスク暗号化を使用している場合、Intel Rapid Start Technology を無効化することを推奨します。」[4]

しかし、ドライブ全体を消去してパーティションを切り直すつもりなら (あるいはすでにそうしてしまっているなら) IRST パーティションも再作成しなければなりません。これを行うには、システムの RAM と同じサイズの空のパーティションを作成し、そのパーティションの種類が GPT パーティションの場合は GUID D3BFE2DE-3DAF-11DF-BA40-E3A556D89593 に、 MBR パーティションの場合は ID 0x84 に設定します。また、システムのファームウェア設定で IRST のサポートを有効にする必要がある場合もあります。

ヒント: (サスペンド後に)IRST が開始されるまでの時間は、システムのファームウェア設定で調整できます。

IRST ハイバネートにかかる時間 (つまり、"RAMの内容全体を特殊なパーティションに" コピーする時間) は、システムの RAM サイズと SSD 速度によって異なり、20~60秒かかります。システムによっては、プロセスの完了を(点滅を止めるなどして) LED インジケータで示す場合があります。

Linux で IRST ハイバネートイベントを設定するには、CONFIG_INTEL_RST=y を設定するか、モジュールに設定されているならば intel-rst モジュールがロードされている必要があります。modprobe intel_rst を実行してモジュールをロードすれば、例えば /sys/bus/acpi/drivers/intel_rapid_start/*/wakeup_events などのようにファイル wakeup_events と wakeup_time が生成されるはずです。これらを用いて、さらなる設定を行うことができます。このモジュールは簡潔にドキュメント化されています。詳細は drivers/platform/x86/intel/rst.c を見てください。

Intel Rapid Start Technology に関する情報は、general Q&Auser guides も見てください。

トラブルシューティング

ACPI_OS_NAME

DSDT table を動作するように設定することができます。DSDT の記事を参照してください。

サスペンド/ハイバネートが動作しない、あるいはたまに動作しなくなる

ハイバネートやサスペンドから復帰した時に画面が真っ暗になって、明確なエラーは表示されず、何もできなくなるという報告が多数存在します。これらの問題は、ノートパソコンとデスクトップの両方で確認されています。公式の解決方法ではありませんが、古いカーネル、特に LTS カーネルに切り替えることで問題が解決することがあります。

ハードウェアの watchdog タイマーを使用している場合に問題が起こることもあります(デフォルトで無効化されています、systemd-system.conf(5) § OPTIONSRuntimeWatchdogSec= を見てください)。バグを起こした watchdog タイマーにより、システムがハイバネートイメージの作成を終える前に、コンピュータがリセットされることがあります。

initramfs からのデバイスの初期化によって画面が表示されなくなっていることもあります。Mkinitcpio#MODULES に追加したモジュールを削除して initramfs を再生成することで問題が解決するかもしれません。特にグラフィックドライバの 早期 KMS は問題を起こしがちです。復帰するまえにデバイスが初期化されると矛盾状態になってシステムがハイバネートから復帰できなくなります。サスペンドからの復帰の場合は関係ありません。サスペンドやハイバネートの問題をデバッグする際のベストプラクティスが こちらの記事 に記載されています。

radeon ビデオドライバから新しい AMDGPU ドライバに変更すると、ハイバネートとハイバネートからの復帰のプロセスが成功するかもしれません。

Intel グラフィックドライバの場合は、早期 KMS を有効化することにより、真っ暗な画面の問題を解決できることがあります。詳細は カーネルモード設定#KMS の早期開始を見てください。

カーネル 4.15.3 にアップグレードした後に、サスペンド/ハイバネートからの復帰に失敗し、真っ暗な画面でカーソルが固まる(点滅はしない)ようになることがあります。nvidiafb モジュールをブラックリストに追加すると解決するかもしれません。[5]

Intel CPU を搭載していて、タッチパッドのために intel_lpss_pci をロードするノート PC では、復帰時にカーネルパニックを引き起こすことがあります(この時、caps lock が点滅する) [6]。このモジュールは、以下のように initramfs に追加する必要があります:

/etc/mkinitcpio.conf
MODULES=(... intel_lpss_pci ...)

そして、initramfs を再生成してください。

Wake-on-LAN

Wake-on-LAN が有効になっている場合、コンピュータがハイバネート状態になっていてもネットワークインターフェイスカードによって電力が消費されます。

サスペンドからすぐに復帰する

復帰トリガー#サスペンドからすぐに復帰する を見てください。

AMD CPU 上で Linux カーネル 6.1 以上を使用している場合、これはカーネル内の s3 関連の制御ポリシーの問題が原因である可能性もあります。一時的な解決策は、関連する i2c デバイスの復帰をオフにすることです。関連する i2c デバイスは以下のコマンドで見つけられます:

$ ls /sys/bus/i2c/devices/*/power/wakeup

デバイス名の形式は i2c-ELAN0679:00i2c-MSFT0001:00 であるはずです。次に、以下のコマンドでサスペンドに移行できるかテストします:

# echo disabled > /sys/bus/i2c/devices/device_name/power/wakeup
# systemctl suspend

これでうまく行くならば、udev ルールを追加することで、この設定を永続化できます:

/etc/udev/rules.d/99-avoid-i2c-wakeup.rules
KERNEL=="device_name", SUBSYSTEM=="i2c", ATTR{power/wakeup}="disabled"

ハイバネートした時にシステムの電源が落ちない

​ システムをハイバネートした時には、(状態をディスク上に保存したあとに)システムの電源が落ちるはずです。時々、ハイバネートした後も電源 LED が光り続けることがあります。これが起こる場合、sleep.conf.d(5)HibernateModeshutdown に設定すると問題が解決するかもしれません。 ​

/etc/systemd/sleep.conf.d/hibernatemode.conf
[Sleep]
HibernateMode=shutdown

​ 上記の設定により、その他の設定が正しく行われていれば、systemctl hibernate を実行するとマシンがシャットダウンし、状態をディスクに保存します。

ハイバネート後に起動するとオペレーティングシステムが見つからない (または、間違った OS が起動する)

これは、ブートディスクが外部ディスクである場合に起こる可能性があります。BIOS/ファームウェアの制限が原因であるようです。ハイバネーションは外部 (あるいは別の) ディスク上の OS から行われたが、BIOS/ファームウェアは内部ディスクから起動を試みてしまっているのです。

#ハイバネートした時にシステムの電源が落ちない で説明したように HibernateMode=shutdown を設定することで、この問題を永久に解決できます。すでにシステムから締め出されてしまっている場合、システムを4回再起動 (毎回、エラーが表示されるまで待ってください) してみることで、一部の BIOS 上では通常のブート手順を強制することができます。

翻訳ステータス: このページは en:Power management/Suspend and hibernate の翻訳バージョンです。最後の翻訳日は 2023-03-05 です。もし英語版に 変更 があれば、翻訳の同期を手伝うことができます。