「Mozc」の版間の差分
("変換精度が使用当初より下がった" を戻す) |
|||
(11人の利用者による、間の37版が非表示) | |||
1行目: | 1行目: | ||
− | [[Category: |
+ | [[Category:インプットメソッド]] |
[[en:Mozc]] |
[[en:Mozc]] |
||
− | [ |
+ | プロジェクトの[https://github.com/google/mozc ホームページ]より: |
− | :''Mozc は Chromium OS、 |
+ | :'''Mozc''' は、Android OS、Apple OS X、Chromium OS、GNU/Linux、そして Microsoft Windows などのマルチプラットフォームで動作するよう設計された日本語[[インプットメソッド]]エディタ (IME) です。このオープンソースプロジェクトは [https://www.google.com/intl/ja/ime/ Google 日本語入力] から派生したものです。 |
+ | |||
+ | Mozc と Google 日本語入力との差異はプロジェクトの [https://github.com/google/mozc/blob/master/docs/about_branding.md About Branding] ページで詳しく説明されていますが、簡単に言うと、Mozc のオープンソースのコードには Google の豊富な単語変換テーブル (いわゆる「辞書」) が含まれておらず、そのため Mozc の変換品質は Google 日本語入力のものほどではありません。ただし、この欠点はカスタム辞書によりほとんど軽減することができます (以下を参照)。 |
||
== インストール == |
== インストール == |
||
+ | === 分割パッケージと統合パッケージの違い === |
||
− | 無印 {{AUR|Mozc}} は [[#Unofficial user repository を使う|Unofficial user repository]] を使うか、AUR から自分でビルドしてインストールできます。 |
||
+ | 1つの IME として、Mozc は2つの部分に分けられます: すべての変換処理を行う'''サーバ'''と、サーバがシステムの[[インプットメソッド#インプットメソッドフレームワーク|インプットメソッドフレームワーク]]と通信できるようにし、結果を画面に出力する一連の'''モジュール'''です。[[IBus]]、[[Fcitx5]]、[[Fcitx]]、そして [[Emacs]] のそれぞれに対して個別のモジュールが必要です。 |
||
− | {{Note|Mozc は {{Pkg|ibus}}インプットメソッドフレームワークを使用します。IBus のインストールや設定については [[IBus (日本語)]] を参照してください。}} |
||
− | このパッケージは以下のコンポーネントからなっています: |
||
− | {| class="wikitable" style="text-align:center;margin:0 2em auto" |
||
− | !パッケージ !! mozc !! 説明 |
||
− | |- |
||
− | !グループ |
||
− | | mozc-im || |
||
− | |- |
||
− | !rowspan="3" | コンポーネント |
||
− | | mozc || Mozc サーバ |
||
− | |- |
||
− | | ibus-mozc || IBus 用モジュール |
||
− | |- |
||
− | | emacs-mozc || Emacs 用 Mozc (任意) |
||
− | |} |
||
+ | 一部の Mozc パッケージには IMF 固有のモジュールしか含まれておらず、サーバが {{AUR|mozc}} パッケージに'''分割'''されています。これにより、サーバ自体とは独立に異なるモジュールを同時にインストールすることができます (これは、異なるユーザが異なる IMF を使用するような複数ユーザのセットアップや、Emacs を使用する場合において便利です)。 |
||
− | {{Tip|[[#Mozc バリエーション on AUR|非公式パッケージを使用して、他のインプットメソッドフレームワークで Mozc を使用することもできます。]]}} |
||
+ | 他の Mozc パッケージはこのような分割を行わず、サーバとモジュールを'''統合'''しています。この方法にはメリットがありますが、(複数のパッケージがサーバのファイルを提供しようと競合してしまうため) ファイルの衝突のせいで追加のモジュールがインストールできなくなってしまうという非常に顕著な欠点もあります。 |
||
− | === Unofficial user repository を使う === |
||
+ | 何らかの理由で複数の IMF モジュールを同時にインストールする必要がある場合の解決策は、非分割パッケージを自分でビルドしてファイルの衝突を手動で解決するか、モジュールからサーバを分割しているパッケージから選ぶかです。 |
||
− | Mozc の Unoficcial user repository が用意されています。これを使用する場合は以下を {{Ic|/etc/pacman.conf}} に追加します: |
||
− | {{bc|<nowiki> |
||
− | [pnsft-pur] |
||
− | SigLevel = Optional TrustAll |
||
− | Server = http://downloads.sourceforge.net/project/pnsft-aur/pur/$arch |
||
− | </nowiki>}} |
||
− | {{Note|用意されているのは現在 x86_64 用パッケージのみです。}} |
||
− | そしてパッケージデータベースを更新します: |
||
− | # pacman -Syy |
||
− | インストールするパッケージは以下のようにグループ指定で選択することができます: |
||
− | # pacman -S mozc-im |
||
− | または、例えば以下のように直接指定します: |
||
− | # pacman -S mozc ibus-mozc emacs-mozc |
||
− | === |
+ | === UT 辞書 === |
+ | すでに述べたように、Mozc には Google の豊富な単語変換テーブル (いわゆる「辞書」) が含まれていないため、Mozc の変換品質は Google 日本語入力のものほど良くありません。それに対する解決策が [http://linuxplayers.g1.xrea.com/mozc-ut.html UT 辞書]という形で存在します。UT 辞書はサードパーティの辞書で、Mozc の変換品質を強化し、Google 日本語入力に近づけます。これは、いくつかの人気なオンラインのソース (Google、Yahoo、そして Wikipedia のページランクをベースとする) から集められた数千もの追加の単語を含め、さらに [https://github.com/neologd/mecab-ipadic-neologd NEologd 辞書] (作者の言葉を借りるならば、''「ウェブ上の多くの言語リソースから抽出された neologisms (新語)」''が含まれています) などの他の特化したソースを統合することにより達成されます。 |
||
− | 自分で AUR からビルドする場合は以下の手順で行います。 |
||
+ | {{Tip|UT 辞書の使用は任意ですが、強く推奨されます。}} |
||
− | まず mozc の tarball を AUR から入手するか、AUR ツールを使用し、必要であれば PKGBUILD を編集します。 |
||
− | $ wget https://aur.archlinux.org/packages/mo/mozc/mozc.tar.gz |
||
− | $ tar xvf mozc.tar.gz |
||
− | $ cd mozc |
||
− | + | === 要約 === |
|
− | + | {{AUR|fcitx5-mozc-ut}}、{{AUR|fcitx-mozc-ut}}、{{AUR|ibus-mozc}}、そして {{AUR|emacs-mozc}} から1つ或いは複数を[[インストール]]してください。 |
|
− | ## If you will be using mozc.el on Emacs, uncomment below. |
||
− | _emacs_mozc="yes" |
||
+ | Mozc のどのフレーバを使用するか尋ねられたら、バニラな Mozc の {{AUR|mozc}} か UT で強化された Mozc の {{AUR|mozc-ut}} のどちらかを選択してください。 |
||
− | ==== ビルドおよびインストール ==== |
||
+ | {{Tip|'''統合パッケージ'''を使用したい場合、代わりに {{Pkg|fcitx5-mozc}} か {{Pkg|fcitx-mozc}} をインストールすることができます (両方ともバニラな Mozc をベースにしています)。}} |
||
− | PKGBUILD の編集が終わったら保存し、ビルド及びインストールします: |
||
− | $ makepkg -s -i |
||
+ | {{Note|Mozc をインストールしたら、使用できるようにするために場合によっては X かインプットメソッドフレームワークを再起動する必要があります。}} |
||
− | {{Note|AUR 支援ツールの中には、分割パッケージに対応していないために、作成したパッケージのうちの一つしかインストールしようとしないものがあるかもしれません。その場合、インストールに失敗したり必要なパッケージがインストールされません。その時でも (makepkg が正常終了している限り) パッケージファイル (*.pkg.tar.xz) 自体は作成されていますので、ツールがビルドに使用したパスから探してすべてインストールしてください。}} |
||
+ | == 設定 == |
||
− | === Mozc を利用可能にする === |
||
+ | === IBus === |
||
− | X または IBus を再起動し、Mozc を利用できるようにします。 |
||
+ | 詳細は [[IBus]] を参照してください。 |
||
− | == Mozc バリエーション on AUR == |
||
+ | {{Tip|IBus で使用する場合、Mozc はデフォルトで直接 (英数) 入力モードで起動します。これは、英数キーが存在しないキーボードでは問題となる可能性があります。この挙動を変更して、Mozc がひらがな入力モードで起動するようにするには、{{ic|~/.config/mozc/ibus_config.textproto}} を編集して以下の行を追加してください: |
||
− | 各パッケージは以下のように構成されています: |
||
− | {| class="wikitable" style="text-align:center;margin:0 2em auto" |
||
− | !パッケージ !! mozc !! mozc-svn !! mozc-ut !! mozc-fcitx !! 説明 |
||
− | |- |
||
− | !グループ |
||
− | | mozc-im || mozc-im-svn || mozc-im || mozc-im || |
||
− | |- |
||
− | !rowspan="6" | コンポーネント |
||
− | | mozc || mozc-svn || mozc-ut || -- || Mozc サーバ |
||
− | |- |
||
− | | ibus-mozc || ibus-mozc-svn || ibus-mozc-ut || -- || IBus 用モジュール (任意) |
||
− | |- |
||
− | | (uim-mozc) || uim-mozc-svn || uim-mozc-ut || -- || uim 用モジュール (任意) |
||
− | |- |
||
− | | <small>''N/A''</small> || fcitx-mozc-svn || <small>''N/A''</small> || -- || Fcitx 用モジュール (任意) |
||
− | |- |
||
− | | emacs-mozc || emacs-mozc-svn || emacs-mozc-ut || -- || Emacs 用 Mozc (任意) |
||
− | |- |
||
− | | -- || -- || -- || mozc-fcitx || mozc-fcitx パッケージ |
||
− | |} |
||
+ | {{hc|~/.config/mozc/ibus_config.textproto|2= |
||
− | ===uim-mozc=== |
||
+ | ... |
||
+ | } |
||
+ | '''active_on_launch: True''' |
||
+ | }} |
||
+ | これがうまく行かない場合: |
||
− | {{AUR|Mozc}} は IBus にしか対応していませんが、[http://code.google.com/p/macuim/ macuim] が ''uim-mozc'' プラグインを提供しています。{{AUR|uim-mozc}} ''(AUR)'' が無印 ''Mozc'' と {{AUR|mozc-ut}} で利用でき、{{AUR|mozc-svn}} でもビルドできるようになっています ([[Input Japanese using uim (日本語)|Input Japanese using uim]] を参照してください)。''uim-mozc'' は他の Mozc パッケージと同様に [[#Unofficial user repository を使う|Unoffical User Repository からインストールできます]]。 |
||
+ | * {{ic|~/.mozc/ibus_config.textproto}} が存在しないことを確認してください。このファイルが存在する場合 (例えば、古い環境から Mozc をアップグレードした場合など)、{{ic|~/.config/mozc/ibus_config.textproto}} よりも優先されてしまいます。 |
||
− | ===mozc-ut=== |
||
+ | * コマンド {{ic|ibus write-cache; ibus restart}} を実行して、IBus を再起動してください。 |
||
+ | 詳細は [https://github.com/google/mozc/blob/master/docs/configurations.md#ibus Mozc のドキュメント] で見られます。 |
||
− | {{AUR|mozc-ut}} は Mozc に [http://www.geocities.jp/ep3797/mozc_01.html Mozc UT 辞書]を追加します。これにより 35 万語以上がオリジナル辞書に追加されます。''uim-mozc'' プラグインのビルドにも対応しています。 |
||
+ | }} |
||
− | {{Note| |
||
− | *''mozc-ut'' のビルドには Mozc UT 辞書シードの生成のため長い時間がかかります。 |
||
− | *''mozc-ut'' は 無印 ''Mozc'' 用の ''ibus-mozc''、''emacs-mozc'' および ''uim-mozc'' と共に使用できます。すなわち、''mozc-ut'' 以外のコンポーネントは [[#Unofficial user repository を使う|Unofficial User Repository からインストールすればビルドの必要はありません]]。}} |
||
+ | {{Tip|[[GNOME]] では、IBus は ''設定'' に統合されているため、別のアプリケーションを実行する必要はありません。''設定 > キーボード'' へ行き、Mozc レイアウトを追加してください。その場合、以下の手順は無視できます。}} |
||
− | ===mozc-svn=== |
||
+ | 以下を実行して IBus 設定ツールを開いてください: |
||
− | {{AUR|mozc-svn}} は Mozc 公開 svn リポジトリを使用してビルドします。''uim-mozc'' および ''fcitx-mozc'' プラグインのビルドも対応しています。特に理由のない限り、''mozc'' または ''mozc-ut'' を使用してください。''mozc-svn'' は ''mozc'' とほとんど同じであり (公開されている svn リポジトリは実際は trunk ではなく ''mozc'' の公開バージョンがアップするタイミングでのみ更新されています)、makepkg にかかる時間はおそらく ''mozc-svn'' の方が長くなります。 |
||
+ | $ ibus-setup |
||
− | ===mozc-fcitx=== |
||
+ | ''インプットメソッド'' タブで ''追加'' をクリックし、Mozc レイアウトを検索して追加してください。 |
||
− | {{AUR|mozc-fcitx}} は [[Fcitx (日本語)|Fcitx]] を使用する場合専用のパッケージです。 |
||
+ | {{ic|Alt+Shift_L}} (IBus のデフォルト) を押すことにより新しい Mozc へ切り替えることができます。 |
||
− | == 設定 == |
||
+ | === Fcitx5 === |
||
− | ''IBus の設定に関しては [[IBus (日本語)]] を参照してください。'' |
||
+ | 詳細は [[Fcitx5]] を参照してください。 |
||
− | Mozc をデフォルトのインプットメソッドにするには、''ibus-setup'' で設定します: |
||
− | $ ibus-setup |
||
− | 「インプットメソッド」タブを選び、''Mozc'' をインプットメソッドリストの先頭に移動します。 |
||
+ | {{Tip|[[KDE]] では、Fcitx5 は ''システム設定'' に統合されているため、別のアプリケーションを実行する必要はありません。''システム設定 > 地域の設定 > 入力メソッド'' を開いてください。このオプションが存在しない場合、{{Pkg|fcitx5-configtool}} パッケージをインストールしてください。}} |
||
− | インプットメソッドの切り替えは、{{ic|Alt + Shift_L}} (IBus のデフォルト) で行えます。 |
||
+ | 以下を実行して Fcitx5 設定ツールを開いてください: |
||
− | === Emacs で Mozc を使う === |
||
+ | $ fcitx5-configtool |
||
− | mozc.el (mozc-mode) を使用し、LEIM (Library of Emacs Input Method) 経由で日本語を入力することができます。mozc-mode を使用するには、以下を {{ic|.emacs.d/init.el}} あるいはその他の Emacs カスタム設定用ファイルに追加します: |
||
+ | |||
+ | ''入力メソッド'' タブを開き、右側の利用可能なレイアウトのリストから Mozc を探し、左矢印をクリックしてアクティブなレイアウトのリストに追加してください。これで、標準的なキーボードショートカットで Mozc レイアウトへ切り替えることができます。 |
||
+ | |||
+ | === Emacs === |
||
+ | |||
+ | mozc.el (mozc-mode) を使用して LEIM (Library of Emacs Input Method) 経由で日本語を入力することができます。mozc-mode を使用するには、以下を {{ic|.emacs.d/init.el}} あるいはその他の Emacs カスタム設定用ファイルに追加します: |
||
(require 'mozc) ; or (load-file "/path/to/mozc.el") |
(require 'mozc) ; or (load-file "/path/to/mozc.el") |
||
(setq default-input-method "japanese-mozc") |
(setq default-input-method "japanese-mozc") |
||
130行目: | 88行目: | ||
{{ic|C-\}} (''toggle-input-method'') で mozc-mode のオン/オフを切り替えます。 |
{{ic|C-\}} (''toggle-input-method'') で mozc-mode のオン/オフを切り替えます。 |
||
− | ==== |
+ | ==== XIM を無効化する ==== |
デスクトップ環境上で IM のオン・オフのキー割り当てに C-SPC を設定しており、Emacs 上でもそちらが優先されて C-SPC/C-@ で set-mark-command が使えなくて困る、という場合は、{{ic|~/.Xresources}} か {{ic|~/.Xdefaults}} に以下を追加します。 |
デスクトップ環境上で IM のオン・オフのキー割り当てに C-SPC を設定しており、Emacs 上でもそちらが優先されて C-SPC/C-@ で set-mark-command が使えなくて困る、という場合は、{{ic|~/.Xresources}} か {{ic|~/.Xdefaults}} に以下を追加します。 |
||
Emacs*UseXIM: false |
Emacs*UseXIM: false |
||
+ | == ヒントとテクニック == |
||
− | == Tips == |
||
=== 現在使用している Mozc のバージョンを表示する === |
=== 現在使用している Mozc のバージョンを表示する === |
||
Mozc 起動中に "ばーじょん" と入力し変換すると、変換候補の中に現在の Mozc のバージョン番号が表示されます: |
Mozc 起動中に "ばーじょん" と入力し変換すると、変換候補の中に現在の Mozc のバージョン番号が表示されます: |
||
− | {{hc|<u>ばーじょん</u> |
+ | {{hc|<u>ばーじょん</u>| |
− | + | バージョン |
|
ヴァージョン |
ヴァージョン |
||
ばーじょん |
ばーじょん |
||
− | Mozc-1.6.1187.102 |
+ | Mozc-1.6.1187.102 ''⇐ 現在の Mozc バージョン'' |
...}} |
...}} |
||
− | === |
+ | === コマンドラインから Mozc ツールを起動 === |
− | + | 以下のコマンドで Mozc のツールを起動できます: |
|
+ | |||
− | * Mozc プロパティ:{{bc|1=$ /usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=config_dialog}} |
||
− | * Mozc |
+ | * Mozc 設定: {{ic|1=/usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=config_dialog}} |
− | * Mozc |
+ | * Mozc 辞書ツール: {{ic|1=/usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=dictionary_tool}} |
− | * Mozc |
+ | * Mozc 単語登録: {{ic|1=/usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=word_register_dialog}} |
− | * Mozc 文字パレット:{{bc|1=$ /usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=character_palette}} |
||
=== ASCII キーボードで CapsLock キーを英数キーとして使用する === |
=== ASCII キーボードで CapsLock キーを英数キーとして使用する === |
||
− | Mozc のプリセットのキーバインドや多くの日本語入力メソッドでは、変換前入力中の英数入力切り替えは、{{ic|英数}}キー、{{ic|ひらがな/カタカナ}}キー、あるいは{{ic|無変換}}キーなどに割り当てられていますが、ASCII キーボードにそれらはありません |
+ | Mozc のプリセットのキーバインドや多くの日本語入力メソッドでは、変換前入力中の英数入力切り替えは、{{ic|英数}}キー、{{ic|ひらがな/カタカナ}}キー、あるいは{{ic|無変換}}キーなどに割り当てられていますが、ASCII キーボードにそれらはありません。 |
− | 以下の設定では、OADG キーボードと等価な、Eisu_toggle を {{ic| |
+ | CapsLock キーに英数キー (Eisu_toggle) を割り当てることで日本語キーボードと同じように使用できます (Mozc は CapsLock キーを r124 として認識しないようです)。以下の設定では、OADG キーボードと等価な、Eisu_toggle を (修飾キーなしの) {{ic|Caps Lock}} キーに、Caps_Lock を {{ic|Shift+CapsLock}} キーに割り当てます。 |
{{Warning|この設定はデスクトップ全体に作用します。}} |
{{Warning|この設定はデスクトップ全体に作用します。}} |
||
167行目: | 124行目: | ||
clear Lock |
clear Lock |
||
− | X 再起動するか、xmodmap コマンドを実行 |
+ | X 再起動するか、''xmodmap'' コマンドを実行することで、変更を即座に適用できます: |
$ xmodmap ~/.Xmodmap |
$ xmodmap ~/.Xmodmap |
||
+ | |||
+ | === 非英語/非日本語のシステムで日本語キーマップを使用する === |
||
+ | |||
+ | QWERTY でないキーボードレイアウト (例 ドイツ語) で非英語/非日本語のシステムを主に使用していて、日本語を単にサブの入力言語として使用したい場合、キーマップはこの[https://bugs.launchpad.net/ubuntu/+source/mozc/+bug/1958492 メインのキーボード言語]がベースになっているかもしれません。これは、特に Windows や MacOS、或いは日本語コンピュータから移行した場合に、奇妙に感じれれるかもしれません。 |
||
+ | |||
+ | IBus で基底のキーボードレイアウトを変更するには、{{ic|~/.config/mozc/ibus_config.textproto}} 内で {{ic|layout}} キーを日本語 (或いは、他の QWERTY キーボード) に設定してデフォルトのキーマップを変更してください: |
||
+ | |||
+ | {{hc|~/.config/mozc/ibus_config.textproto|2= |
||
+ | engines { |
||
+ | ... |
||
+ | layout : "jp" |
||
+ | ... |
||
+ | } |
||
+ | }} |
||
== トラブルシューティング == |
== トラブルシューティング == |
||
184行目: | 155行目: | ||
=== Mozc をアップグレードし、X または IBus を再起動しても (リブートはしていない) 古い Mozc が動いている === |
=== Mozc をアップグレードし、X または IBus を再起動しても (リブートはしていない) 古い Mozc が動いている === |
||
− | 古いバージョンの Mozc が終了されずにずっとメモリ上で動作しているのかもしれません。 |
+ | 古いバージョンの Mozc が終了されずにずっとメモリ上で動作しているのかもしれません。既存の ''mozc_server'' プロセスを一度 kill してみてください: |
$ killall mozc_server |
$ killall mozc_server |
||
+ | === mozc_server が defunct になる === |
||
− | == 関連項目 == |
||
+ | |||
+ | root で Mozc を起動することはできません。一般ユーザーで X を起動してください。 |
||
+ | |||
+ | === mozc_emacs_helper not found in emacs === |
||
+ | |||
+ | mozc.el をインストールするときは、{{ic|mozc_emacs_helper}} というヘルパープログラムをインストールする必要があります。 |
||
+ | |||
+ | このヘルパープログラムには {{AUR|emacs-mozc}} をインストールする必要があります。 |
||
+ | |||
+ | === mozc ツールが起動しない === |
||
+ | |||
+ | ログをコンソールに直接送信して Mozc ツールを起動することもできます。これはデバッグに役立ちます。これを有効にするには、たとえば次のように {{ic|--logtostderr}} を追加するだけです: |
||
+ | |||
+ | {{ic|1=$ /usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=config_dialog --logtostderr}} |
||
+ | |||
+ | [https://github.com/google/mozc/issues/438 こちらも参照] |
||
+ | |||
+ | === ダークモードで候補ウィンドウが真っ白になる === |
||
+ | |||
+ | 以下の[[環境変数]]を使用してください: |
||
+ | |||
+ | MOZC_IBUS_CANDIDATE_WINDOW=ibus |
||
+ | |||
+ | === 変換精度が使用当初より下がった === |
||
+ | |||
+ | Mozc は、変換候補の中からユーザーが確定したものを学習していきます。しかし、間違って変換したものも学習していき、誤変換を繰り返すようになることがあります。そのような場合、学習履歴をクリアすると良いかもしれません。 |
||
+ | |||
+ | Mozc の設定ツールを起動: |
||
+ | |||
+ | $ /usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=config_dialog |
||
+ | |||
+ | ''辞書'' タブを開き、''学習履歴のクリア'' をクリックしてください。 |
||
+ | {{TranslationStatus|Mozc|2024-05-29|809463}} |
||
− | *[http://code.google.com/p/mozc/ Mozc official site] |
||
− | *[[Input Japanese using uim (日本語)]] |
2024年7月14日 (日) 07:54時点における最新版
プロジェクトのホームページより:
- Mozc は、Android OS、Apple OS X、Chromium OS、GNU/Linux、そして Microsoft Windows などのマルチプラットフォームで動作するよう設計された日本語インプットメソッドエディタ (IME) です。このオープンソースプロジェクトは Google 日本語入力 から派生したものです。
Mozc と Google 日本語入力との差異はプロジェクトの About Branding ページで詳しく説明されていますが、簡単に言うと、Mozc のオープンソースのコードには Google の豊富な単語変換テーブル (いわゆる「辞書」) が含まれておらず、そのため Mozc の変換品質は Google 日本語入力のものほどではありません。ただし、この欠点はカスタム辞書によりほとんど軽減することができます (以下を参照)。
インストール
分割パッケージと統合パッケージの違い
1つの IME として、Mozc は2つの部分に分けられます: すべての変換処理を行うサーバと、サーバがシステムのインプットメソッドフレームワークと通信できるようにし、結果を画面に出力する一連のモジュールです。IBus、Fcitx5、Fcitx、そして Emacs のそれぞれに対して個別のモジュールが必要です。
一部の Mozc パッケージには IMF 固有のモジュールしか含まれておらず、サーバが mozcAUR パッケージに分割されています。これにより、サーバ自体とは独立に異なるモジュールを同時にインストールすることができます (これは、異なるユーザが異なる IMF を使用するような複数ユーザのセットアップや、Emacs を使用する場合において便利です)。
他の Mozc パッケージはこのような分割を行わず、サーバとモジュールを統合しています。この方法にはメリットがありますが、(複数のパッケージがサーバのファイルを提供しようと競合してしまうため) ファイルの衝突のせいで追加のモジュールがインストールできなくなってしまうという非常に顕著な欠点もあります。
何らかの理由で複数の IMF モジュールを同時にインストールする必要がある場合の解決策は、非分割パッケージを自分でビルドしてファイルの衝突を手動で解決するか、モジュールからサーバを分割しているパッケージから選ぶかです。
UT 辞書
すでに述べたように、Mozc には Google の豊富な単語変換テーブル (いわゆる「辞書」) が含まれていないため、Mozc の変換品質は Google 日本語入力のものほど良くありません。それに対する解決策が UT 辞書という形で存在します。UT 辞書はサードパーティの辞書で、Mozc の変換品質を強化し、Google 日本語入力に近づけます。これは、いくつかの人気なオンラインのソース (Google、Yahoo、そして Wikipedia のページランクをベースとする) から集められた数千もの追加の単語を含め、さらに NEologd 辞書 (作者の言葉を借りるならば、「ウェブ上の多くの言語リソースから抽出された neologisms (新語)」が含まれています) などの他の特化したソースを統合することにより達成されます。
要約
fcitx5-mozc-utAUR、fcitx-mozc-utAUR、ibus-mozcAUR、そして emacs-mozcAUR から1つ或いは複数をインストールしてください。
Mozc のどのフレーバを使用するか尋ねられたら、バニラな Mozc の mozcAUR か UT で強化された Mozc の mozc-utAUR のどちらかを選択してください。
設定
IBus
詳細は IBus を参照してください。
以下を実行して IBus 設定ツールを開いてください:
$ ibus-setup
インプットメソッド タブで 追加 をクリックし、Mozc レイアウトを検索して追加してください。
Alt+Shift_L
(IBus のデフォルト) を押すことにより新しい Mozc へ切り替えることができます。
Fcitx5
詳細は Fcitx5 を参照してください。
以下を実行して Fcitx5 設定ツールを開いてください:
$ fcitx5-configtool
入力メソッド タブを開き、右側の利用可能なレイアウトのリストから Mozc を探し、左矢印をクリックしてアクティブなレイアウトのリストに追加してください。これで、標準的なキーボードショートカットで Mozc レイアウトへ切り替えることができます。
Emacs
mozc.el (mozc-mode) を使用して LEIM (Library of Emacs Input Method) 経由で日本語を入力することができます。mozc-mode を使用するには、以下を .emacs.d/init.el
あるいはその他の Emacs カスタム設定用ファイルに追加します:
(require 'mozc) ; or (load-file "/path/to/mozc.el") (setq default-input-method "japanese-mozc")
mozc.el は変換候補の表示スタイルに、候補のリストを入力中文字列のそばに表示する "overlay" モードを提供しています (Mozc r77以降)。このモードをデフォルトで利用する場合は、以下の設定を追加します:
(setq mozc-candidate-style 'overlay)
C-\
(toggle-input-method) で mozc-mode のオン/オフを切り替えます。
XIM を無効化する
デスクトップ環境上で IM のオン・オフのキー割り当てに C-SPC を設定しており、Emacs 上でもそちらが優先されて C-SPC/C-@ で set-mark-command が使えなくて困る、という場合は、~/.Xresources
か ~/.Xdefaults
に以下を追加します。
Emacs*UseXIM: false
ヒントとテクニック
現在使用している Mozc のバージョンを表示する
Mozc 起動中に "ばーじょん" と入力し変換すると、変換候補の中に現在の Mozc のバージョン番号が表示されます:
ばーじょん
バージョン ヴァージョン ばーじょん Mozc-1.6.1187.102 ⇐ 現在の Mozc バージョン ...
コマンドラインから Mozc ツールを起動
以下のコマンドで Mozc のツールを起動できます:
- Mozc 設定:
/usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=config_dialog
- Mozc 辞書ツール:
/usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=dictionary_tool
- Mozc 単語登録:
/usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=word_register_dialog
ASCII キーボードで CapsLock キーを英数キーとして使用する
Mozc のプリセットのキーバインドや多くの日本語入力メソッドでは、変換前入力中の英数入力切り替えは、英数
キー、ひらがな/カタカナ
キー、あるいは無変換
キーなどに割り当てられていますが、ASCII キーボードにそれらはありません。
CapsLock キーに英数キー (Eisu_toggle) を割り当てることで日本語キーボードと同じように使用できます (Mozc は CapsLock キーを r124 として認識しないようです)。以下の設定では、OADG キーボードと等価な、Eisu_toggle を (修飾キーなしの) Caps Lock
キーに、Caps_Lock を Shift+CapsLock
キーに割り当てます。
~/.Xmodmap
を以下のように編集します:
keycode 66 = Eisu_toggle Caps_Lock clear Lock
X 再起動するか、xmodmap コマンドを実行することで、変更を即座に適用できます:
$ xmodmap ~/.Xmodmap
非英語/非日本語のシステムで日本語キーマップを使用する
QWERTY でないキーボードレイアウト (例 ドイツ語) で非英語/非日本語のシステムを主に使用していて、日本語を単にサブの入力言語として使用したい場合、キーマップはこのメインのキーボード言語がベースになっているかもしれません。これは、特に Windows や MacOS、或いは日本語コンピュータから移行した場合に、奇妙に感じれれるかもしれません。
IBus で基底のキーボードレイアウトを変更するには、~/.config/mozc/ibus_config.textproto
内で layout
キーを日本語 (或いは、他の QWERTY キーボード) に設定してデフォルトのキーマップを変更してください:
~/.config/mozc/ibus_config.textproto
engines { ... layout : "jp" ... }
トラブルシューティング
Mozc のビルドに失敗する (プロセスが強制終了される)
ビルドが以下のようなメッセージで異常終了した場合:
... /bin/sh: 1 行: xxxx 強制終了 ... make: *** [xxx/xxx ...] エラー 137 ...
メモリ不足になっていないか確認してください。
Mozc をアップグレードし、X または IBus を再起動しても (リブートはしていない) 古い Mozc が動いている
古いバージョンの Mozc が終了されずにずっとメモリ上で動作しているのかもしれません。既存の mozc_server プロセスを一度 kill してみてください:
$ killall mozc_server
mozc_server が defunct になる
root で Mozc を起動することはできません。一般ユーザーで X を起動してください。
mozc_emacs_helper not found in emacs
mozc.el をインストールするときは、mozc_emacs_helper
というヘルパープログラムをインストールする必要があります。
このヘルパープログラムには emacs-mozcAUR をインストールする必要があります。
mozc ツールが起動しない
ログをコンソールに直接送信して Mozc ツールを起動することもできます。これはデバッグに役立ちます。これを有効にするには、たとえば次のように --logtostderr
を追加するだけです:
$ /usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=config_dialog --logtostderr
ダークモードで候補ウィンドウが真っ白になる
以下の環境変数を使用してください:
MOZC_IBUS_CANDIDATE_WINDOW=ibus
変換精度が使用当初より下がった
Mozc は、変換候補の中からユーザーが確定したものを学習していきます。しかし、間違って変換したものも学習していき、誤変換を繰り返すようになることがあります。そのような場合、学習履歴をクリアすると良いかもしれません。
Mozc の設定ツールを起動:
$ /usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=config_dialog
辞書 タブを開き、学習履歴のクリア をクリックしてください。