ネットワーク設定
この記事ではOSI レイヤ 3(ネットワーク層)以上のネットワーク設定を行う方法について説明しています。媒体固有の情報はイーサネットとワイヤレス設定で扱っています。
接続の確認
ネットワーク接続のトラブルシューティングを行うには、以下の条件を調べ、満たしていることを確認します。
- あなたの ネットワークインターフェイス がリストアップされ、有効になっていること。そうでなければ、デバイスドライバを確認してください - イーサネット#デバイスドライバ または ワイヤレス設定#デバイスドライバ を参照してください。
- ネットワークに接続されている。ケーブルが接続されているか、無線LAN に接続されている。
- あなたのネットワークインターフェースには IP アドレスがある。
- ルーティングテーブル が正しく設定されている。
- ローカル IP アドレス (例えばデフォルトゲートウェイ) を ping することができる。
- 公開 IP アドレス(例えば
9.9.9.9
は Quad9 の DNS サーバで、テストに便利なアドレスです) を ping することも可能です。 - ドメイン名を解決ができるか確認 (例:
archlinux.org
)
Ping
ping は、ホストに到達できるかどうかをテストする際に用いられます。
$ ping www.example.com
PING www.example.com (93.184.216.34): 56(84) data bytes 64 bytes from 93.184.216.34: icmp_seq=0 ttl=56 time=11.632 ms 64 bytes from 93.184.216.34: icmp_seq=1 ttl=56 time=11.726 ms 64 bytes from 93.184.216.34: icmp_seq=2 ttl=56 time=10.683 ms ...
ホストからの応答を受け取るたびに、ping ユーティリティは上記のような行を出力します。これは、ユーザが実行をインタラクティブに中断(Ctrl+c
を押す)するまで続きます。さらなる情報は ping(8) マニュアルを見てください。また、コンピュータは ICMP エコーリクエストに応答しないように設定できることに注意してください。[1]
エラーメッセージを受け取った、または応答がなかった場合(ping エラー表示 を見てください)、不完全な設定やデフォルトゲートウェイ、インターネットサービスプロバイダ(ISP)と関連がある場合があります。traceroute を実行することで、ホストまでのルートをさらに診断することができます。
ネットワーク管理
ネットワーク接続の設定を行うには、以下の手順を踏んでください:
- ネットワークインターフェイスが表示されている、かつ有効化されていることを確認する。
- ネットワークに接続する。Ethernet ケーブルを接続するか、ワイヤレス LAN に接続してください。
- ネットワーク接続を設定する:
- 固定 IP アドレス
- 動的 IP アドレス: DHCP を使用してください。
iproute2
iproute2 は base メタパッケージの依存パッケージで、ip(8) コマンドラインインターフェイスを提供します。ip(8) はネットワークインターフェイスやIP アドレス、ルーティングテーブルの管理に使用されます。ip
を使用して行った設定は再起動すると失われることに注意してください。設定の永続化は、ネットワークマネージャを使用したり、スクリプトや systemd ユニットを使って ip コマンドを自動化したりすることで可能です。また、ip
コマンドでは一般に略式記法を使うことができますが、この記事では分かりやすくするために略さずに明記します。
ネットワークインターフェイス
デフォルトでは udev が Predictable Network Interface Names を使用してネットワークインターフェイスコントローラに名前を割り当てます。インターフェイス名のプレフィックスは、en
(有線/Ethernet)、wl
(無線/WLAN)、ww
(WWAN) となります。systemd.net-naming-scheme(7) を参照してください。
ネットワークインターフェイスを表示
有線インターフェイスと無線インターフェイスの両方の名前は ls /sys/class/net
や ip link
で見つけることができます。lo
は 仮想ループバックインターフェイスであり、ネットワーク接続の際には使用されないことに注意してください。
無線デバイス名は iw dev
を使用することでも取得できます。ワイヤレス設定#インターフェイス名の取得も参照してください。
使用中のネットワークインターフェイスが表示されない場合、デバイスドライバが正しくロードされていることを確認してください。イーサネット#デバイスドライバやワイヤレス設定#デバイスドライバ を参照してください。
ネットワークインターフェイスを有効化/無効化
ネットワークインターフェイスは ip link set interface up|down
を使用することで有効化/無効化できます。ip-link(8) を参照してください。
インターフェイス enp2s0
の状態を確認するには:
$ ip link show dev enp2s0
2: enp2s0: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc pfifo_fast master br0 state DOWN mode DEFAULT qlen 1000 ...
<BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP>
の部分の UP
はインターフェイスが立ち上がっていることを示しています。後ろにある state DOWN
は関係ありません。
固定 IP アドレスか、動的 IP アドレスか?
(例えば家庭などで)Wi-Fi かルータを使用しているのであれば、動的 IP アドレスを使用している可能性が高いです。IP アドレスは Wi-Fi かルータによって割り当てられ、コンピュータがその IP アドレスを使用するように設定する必要があります。あるいは、家庭でコンピュータを ISP のモデム(例えばケーブルモデム)に接続している場合、それも動的 IP アドレスを使用しています。動的 IP アドレスは、コンピュータが起動するたびに変わる可能性があります。仕事環境では、静的 IP アドレスか動的 IP アドレスを持つことができます。家庭では、コンピュータに常に同じ IP アドレスを割り当てるように設定できます。この場合、静的 IP アドレスを使用しています。動的 IP アドレスを使用している時は、ネットワークインターフェイスに正しい IP アドレスを設定できるようにするために DHCP を使う必要があります。IP アドレスの設定に加えて、DHCP はルーティング(ネットワーク上の現在地から別の場所にどう行くか)やネームサーバも設定できます。ネームサーバは、ホスト名(例えば google.com)を IP アドレス(ドット付きの数値)に変換します。
固定 IP アドレス
固定 IP アドレスはほとんどの標準的なネットワークマネージャやdhcpcdを使って設定できます。
手動で固定 IP アドレスを設定するには、#IP アドレスで説明されているように IP アドレスを追加し、ルーティングテーブルをセットアップし、DNS サーバを設定してください。
IP アドレス
IP アドレスは ip-address(8) を使って管理します。
IP アドレスを一覧表示するには:
$ ip address show
IP アドレスをインターフェイスに追加するには:
# ip address add address/prefix_len broadcast + dev interface
- 注意:
- アドレスは CIDR 表記を使用し、サブネットマスクも与えます。
+
は、IP アドレスとサブネットマスクからブロードキャストアドレスをip
に導出させる特殊な記号です。
IP アドレスをインターフェイスから削除するには:
# ip address del address/prefix_len dev interface
条件に一致するすべてのアドレスを削除するには(例: 特定のインターフェイスの IP アドレス):
# ip address flush dev interface
ルーティングテーブル
ルーティングテーブルは、ある IP アドレスに直接到達できるか、どのゲートウェイ(ルータ)を使用すべきかを判断するのに使用します。IP アドレスと合致するルートが存在しない場合、デフォルトゲートウェイが使用されます。
ルーティングテーブルは ip-route(8) を使用して管理します。
PREFIX は CIDR 表記であるか、デフォルトゲートウェイに対しては default
です。
IPv4 ルートを一覧表示するには:
$ ip route show
IPv6 ルートを一覧表示するには:
$ ip -6 route
ルートを追加するには:
# ip route add PREFIX via address dev interface
ルートを削除するには:
# ip route del PREFIX via address dev interface
DHCP
Dynamic Host Configuration Protocol (DHCP) サーバはクライアントに動的あるいは静的 IP アドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ IP アドレスを提供し、任意で DNS ネームサーバも提供します。
DHCP を使用するには、ネットワーク内の DHCP サーバとDHCP クライアントが必要です。
クライント | パッケージ | Archiso | 備考 | Systemd ユニット |
---|---|---|---|---|
dhcpcd | dhcpcd | Yes | DHCP, DHCPv6, ZeroConf, static IP | dhcpcd.service , dhcpcd@interface.service
|
ISC dhclient | dhclient | Yes | DHCP, DHCPv6, BOOTP, static IP | dhclient@interface.service
|
サーバ
サーバ | DHCPv4 | DHCPv6 | IPv6 ルータ広告 | GUI | インターフェイス | ストレージバックエンド | 注記 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
dhcpd | Yes | Yes | No | Glass-ISC-DHCP | ? | ファイル | Kea に取って代わられました。 |
dnsmasq | Yes | Yes | Yes | No | ? | ファイル | DNS、PXE、TFTP も。 |
kea | Yes | Yes | No | Stork | REST、RADIUS、NETCONF | ファイル、MySQL、PostgreSQL、Cassandra | DNS も。dhcpd を取って代わりました。 |
systemd-networkd | Yes | No | Yes | No | ? | ファイル | systemd と共にインストールされます。 |
ネットワークマネージャ
ネットワークマネージャは、ネットワークプロファイルと呼ばれるものを使ってネットワーク接続の設定を管理して、ネットワークの切り替えを容易にします。
ネットワークマネージャ | GUI | Archiso [3] | CLI ツール | PPP サポート (例: 3G モデム) |
DHCP クライアント | systemd ユニット |
---|---|---|---|---|---|---|
ConnMan | 非公式 8つ | No | connmanctl(1) | Yes (ofonoAUR を使用) | 内蔵 | connman.service
|
dhcpcd | 非公式 8つ | Yes | dhcpcd(1) | Yes (ppp を使用) | 内蔵 | dhcpcd.service , netctl-auto@interface.service
|
netctl | 非公式 2つ | No | netctl(1), wifi-menu | Yes | dhcpcd または dhclient | netctl-ifplugd@interface.service , netctl-auto@interface.service
|
NetworkManager | Yes | No | nmcli(1), nmtui(1) | Yes | 内蔵、または dhclient | NetworkManager.service
|
systemd-networkd | No | Yes (base) | networkctl(1) | No | 内蔵 | systemd-networkd.service , systemd-resolved.service
|
ホストネームの設定
hostname とは、ネットワーク上でマシンを識別するために作られる唯一の(ユニークな)名前であり、/etc/hostname
に設定します (詳しくは hostname(5) と hostname(7) を参照)。このファイルにはシステムのドメイン名を含めることもできます。ホストネームを設定するには /etc/hostname
を編集し、myhostname
の1行を書いてください (実際にはあなたの好きな名前を使ってください):
/etc/hostname
myhostname
上記の方法の代わりに、hostnamectl(1) を使うこともできます:
# hostnamectl set-hostname myhostname
hostname を一時的に設定するには、inetutils の hostname(1) を使います (再起動するまで有効):
# hostname myhostname
"pretty" hostname や他のマシンのメタデータを設定する方法は、machine-info(5) を参照してください。
ローカルネットワークのホストネーム解決
マシンがホストネームを使って LAN 内でアクセスできるようにするには、以下の方法を取ることができます:
- LAN 内のすべてのデバイスの
/etc/hosts
ファイルを編集する、hosts(5) を見てください - ホストネームを解決する DNS サーバーをセットアップし、LAN のデバイスにそれを使用させる(例: #DHCP を使用)
- または、より簡単な方法を取る: ゼロコンフィグレーションネットワークサービスを使う:
- NetBIOS によるホストネーム解決。Linux の Samba により提供されています。必要なのは
nmb.service
だけです。Windows や macOS、nmb
が動作している Linux のコンピュータからマシンを見つけられるようになります。 - mDNS によるホストネーム解決。
nss_mdns
と Avahi を使う(セットアップの詳細は Avahi#ホスト名の解決で)か、systemd-resolved を使うことにより可能です。macOS や、Avahi や systemd-resolved が動作している Linux のコンピュータがマシンを見つけられるようになります。古い Win32 API は mDNS をサポートしておらず、一部の古い Windows アプリケーションはデバイスにアクセスできない場合があります。
- NetBIOS によるホストネーム解決。Linux の Samba により提供されています。必要なのは
ヒントとテクニック
インターフェイス名の変更
systemd.link(5) ファイルで名前を手動で定義してデバイス名を変更することができます。例:
/etc/systemd/network/10-net0.link
[Match] PermanentMACAddress=aa:bb:cc:dd:ee:ff [Link] Name=net0
あるいは、udev ルールを使うこともできます:
/etc/udev/rules.d/10-network.rules
SUBSYSTEM=="net", ACTION=="add", ATTR{address}=="aa:bb:cc:dd:ee:ff", NAME="net0"
上記のルールは起動時に自動的に適用されます。即座に変更を適用するには、net
サブシステムの udev ルールを手動でトリガーしてください:
# udevadm trigger --verbose --subsystem-match=net --action=add
加えた変更をテストしたい場合、udevadm --debug test /sys/class/net/*
が役立つでしょう。
ネットワークカードの MAC アドレスが動的である場合は、Path
を使用できます (Path
は networkctl status interface_name
で確認できます):
/etc/systemd/network/10-net1.link
[Match] Path=pci-0000:01:00.0 [Link] Name=net1
あるいは、udev で DEVPATH
を使用できます:
/etc/udev/rules.d/10-network.rules
SUBSYSTEM=="net", DEVPATH=="/devices/pci*/*1c.0/*/net/*", NAME="net1"
現在接続されているすべてのデバイスの DEVPATH
を取得するには、/sys/class/net/
内のシンボリックリンクがどこにリンクされているかを見てください。例:
file /sys/class/net/*
/sys/class/net/enp0s20f0u4u1: symbolic link to ../../devices/pci0000:00/0000:00:14.0/usb2/2-4/2-4.1/2-4.1:1.0/net/enp0s20f0u4u1 /sys/class/net/enp0s31f6: symbolic link to ../../devices/pci0000:00/0000:00:1f.6/net/enp0s31f6 /sys/class/net/lo: symbolic link to ../../devices/virtual/net/lo /sys/class/net/wlp4s0: symbolic link to ../../devices/pci0000:00/0000:00:1c.6/0000:04:00.0/net/wlp4s0
ルールは起動時に複数回実行されることがあるので、デバイスのパスは新しいデバイス名と古いデバイス名両方にマッチする必要があります。例えば、与えられたルールで、"/devices/pci*/*1c.0/*/net/enp*"
と設定すると困ったことになります。名前が net1
に変更されるとマッチしなくなるからです。システムのデフォルトルールだけが再度適用され、名前がに戻ってしまいます。
動的 MAC アドレスのある USB ネットワークデバイス (例: Android phone テザリング) を使用していて、異なる USB ポートを使えるようにしたい場合、ベンダ ID やモデル ID とマッチするルールを代わりに使用することができます:
/etc/systemd/network/20-net2.link
[Match] Property=ID_VENDOR_ID=12ab ID_MODEL_ID=3cd4 [Link] Name=net2
または
/etc/udev/rules.d/10-network.rules
SUBSYSTEM=="net", ACTION=="add", ATTRS{idVendor}=="12ab", ATTRS{idProduct}=="3cd4", NAME="net2"
伝統的なインターフェイス名に戻す
eth0
のような伝統的なインターフェイス名に戻したい場合、udev の net_setup_link
ビルトインの NamePolicy
のデフォルトを変更することで Predictable Network Interface Names を無効化できます:
/etc/systemd/network/99-default.link.d/traditional-naming.conf
[Link] NamePolicy=keep kernel
または、net_setup_link
を完全に無効化することもできます。対応する udev ルールをマスクするか:
# ln -s /dev/null /etc/udev/rules.d/80-net-setup-link.rules
あるいは、net.ifnames=0
をカーネルパラメータに追加してください。
MTU とキューの長さの設定
systemd.link(5) の設定で手動で定義することで、デバイスの MTU とキューの長さを変更することができます。例えば:
/etc/systemd/network/30-mtu.link
[Match] Type=wlan [Link] MTUBytes=1500 TransmitQueueLength=2000
あるいは、udev ルールを使って:
/etc/udev/rules.d/10-network.rules
ACTION=="add", SUBSYSTEM=="net", KERNEL=="wl*", ATTR{mtu}="1500", ATTR{tx_queue_len}="2000"
MTUBytes
: 1500 よりも大きい値を使用することで (ジャンボフレームと呼ばれます)、ネットワークの転送速度を大幅に増加させることができます。すべてのネットワークインターフェイス(ローカルネットワークのスイッチを含む)が、ジャンボフレームを使うために同じ MTU をサポートしなければならないことに注意してください。PPPoE の場合、MTU は 1492 よりも大きくするべきではありません。MTU は systemd.netdev(5) によっても設定することができます。
TransmitQueueLength
: モデルリンクや ISDN のような高レイテンシの低速デバイスでは小さい値。インターネット接続が高速で、大量のデータ転送を行うサーバでは大きい値が推奨されます。
ボンディングまたは LAG
netctl#ボンディング や systemd-networkd#ワイヤード (有線) インターフェイスとワイヤレスインターフェイスのボンディング、ワイヤレスボンディング を見てください。
IP アドレスエイリアス
ひとつのネットワークインターフェースに複数の IP アドレスを加えることを IP エイリアスと呼びます。これをすることで、ネットワークのひとつのノードでネットワークに複数接続することができ、それぞれを別々に使うことができます。基本的に Web・FTP サーバーの仮想ホスティングや、サーバーの再構成 (他のマシンを更新しない、ネームサーバで有用) に使われます。
サンプル
iproute2 ツールを使って NIC のエイリアスを手動で設定するには次を実行:
$ ip addr add 192.168.1.10/24 dev enp1s0 label enp1s0:1
設定したエイリアスを削除するには:
$ ip addr del 192.168.1.10/24 dev enp1s0:1
サブネットへ向かうパケットはデフォルトでプライマリエイリアスを使います。送信先 IP がセカンダリエイリアスのサブネット内のものである場合は、送信元 IP がそれぞれに設定されます。複数の NIC が存在する場合を考えた場合、ip route
でデフォルトルートを列挙することができます。
プロミスキャスモード
プロミスキャスモードを有効にすると (無線) NIC は受信したトラフィックを全て OS に転送します。反対に"ノーマルモード"では受信されるべきでないとき NIC はフレームをドロップします。プロミスキャスモードは高度なネットワークのトラブルシューティングやパケットスニッフィングなどのために使われます。
/etc/systemd/system/promiscuous@.service
[Unit] Description=Set %i interface in promiscuous mode After=network.target [Service] Type=oneshot ExecStart=/usr/bin/ip link set dev %i promisc on RemainAfterExit=yes [Install] WantedBy=multi-user.target
インターフェイス eth0
でプロミスキャスモードを有効にしたい場合、promiscuous@eth0.service
を有効化してください。
ソケットの調査
ss はネットワークポートを調査するユーティリティで、iproute2 パッケージの一部です。機能的には非推奨の netstat ユーティリティと似ています。
共通の利用方法は以下のようなものです:
すべての TCP ソケットをサービス名と共に表示する:
$ ss -at
すべての TCP ソケットをポート番号と共に表示する:
$ ss -atn
すべての UDP ソケットを表示する:
$ ss -au
さらなる情報は ss(8) を見てください。
トラブルシューティング
TCP ウィンドウスケーリングの問題
TCP パケットのヘッダには"ウィンドウ"値が含まれており、他のホストが返答として送信できるデータの量が示されています。この値は16ビットでしか表現できないので、ウィンドウサイズは最大 64 Kb です。TCP パケットはしばらくの間キャッシュに保存されますが (再度使われます)、メモリの量は(少なくとも昔は)限られているので、すぐに使いきってしまうことがあります。
1992年、利用できるメモリの量が大幅に増えるのにあわせて、この状態を改善するために RFC:1323: ウィンドウスケーリングが書かれました。全てのパケットに含まれている"ウィンドウ"の値を、スケールファクタ (Scale Factor) を定義することで、接続の初期段階で変更します。8ビットのスケールファクタなら、ウィンドウは 64Kb の32倍まで増やすことができます。
壊れたルーターやファイアウォールはスケールファクタを 0 に書き換えてしまうためホスト間での不和が発生します。Linux カーネル 2.6.17 ではスケールファクタを上げるための新しい算出方式が導入されましたが、それによってルーターやファイアウォールが壊れているときの影響が増え、極端に接続が遅かったり、全く接続できない状態が生まれています。
問題の診断方法
まず最初に問題をはっきりさせましょう: この問題は少々厄介です。ある条件下では、TCP 接続 (HTTP, FTP, ...) を全く使えないのに、他の条件では、特定の (ごく少数の) ホストとは通信できるというようなことが起こります。
この問題が発生していても、dmesg の出力に問題はなく、ログに異常は見られず、そして ip addr
では通常状態だと報告されます。全てが問題ないように(表面上は)見えるわけです。
ウェブサイトが表示できないのに、ping は通る場合、この問題が発生している可能性は十分あるでしょう: ping は TCP の問題に影響されない ICMP を使っているためです。
Wireshark を使ってみてください。UDP と ICMP の接続は通るのに (ホストが海外の) TCP 接続は通らないはずです。
修復方法
悪い方法
無理やり修正する方法として、スケールファクタの計算に使われている tcp_rmem
の値を変更することができます。ほとんどのホストではこれで問題ありませんが、全てのホストで上手く行くとは保証できません。特にホストが遠い場合に問題が起きやすいです。
# echo "4096 87380 174760" > /proc/sys/net/ipv4/tcp_rmem
良い方法
ウィンドウスケーリングを無効化してしまいます。ウィンドウスケーリングは TCP の素晴らしい機能なので、無効化してしまうのは忍びないですが、ルーターを修復できない場合は致し方ありません。ウィンドウスケーリングを無効化する方法は複数存在します。一番安牌の (ほとんどのカーネルで動作する) 方法としては /etc/sysctl.d/99-disable_window_scaling.conf
に以下の行を追加してください (sysctl を参照):
net.ipv4.tcp_window_scaling = 0
最良の方法
この問題の原因はルーターやファイアウォールの動作がおかしいせいなので、それらを変えてしまいましょう。専用の DSL ルーターを使っている場合に問題になることがあるという報告もあります。
詳細
このセクションは LWN の記事 TCP window scaling and broken routers と Kernel Trap の記事 Window Scaling on the Internet. を基にしています。
また、LKML に関連するスレッドが複数存在します。
接続された2台目の PC がブリッジ LAN を利用できない
1台目の PC には2つの LAN があります。2台目の PC には1つの LAN があり、1台目の PC に接続されています。2台目の PC が、ブリッジインターフェイスのあとに LAN にアクセスできるようにしましょう:
# sysctl net.bridge.bridge-nf-filter-pppoe-tagged=0 # sysctl net.bridge.bridge-nf-filter-vlan-tagged=0 # sysctl net.bridge.bridge-nf-call-ip6tables=0 # sysctl net.bridge.bridge-nf-call-iptables=0 # sysctl net.bridge.bridge-nf-call-arptables=0
localhost がネットワーク上で解決される
nss-myhostname(8) は、(systemd によって提供され、/etc/nsswitch.conf
でデフォルトで有効になっています) NSS モジュール は、localhost
および IP アドレスへの localhost 名を解決します。ただし、一部のソフトウェアは代わりに /etc/hosts
を直接読み取る場合があります。例については、[5] [6] を参照してください。
このようなソフトウェアがネットワーク経由で localhost を安全でない方法で解決しないようにするには、localhost
のエントリを hosts(5) ファイルに追加します:
/etc/hosts
127.0.0.1 localhost ::1 localhost
localhost を解決できるようにするには、さらに hosts(5) ファイルに追加します:
/etc/hosts
127.0.0.1 localhost ::1 localhost 127.0.1.1 myhostname
永続的な IP アドレスを持つシステムの場合、127.0.1.1
をその永続的な IP アドレスに置き換えます。Fully Qualified Domain Name を持つシステムの場合、ホスト名の前に Fully Qualified Domain Name を挿入します (次のリンクを参照 理由) 例えば:
/etc/hosts
127.0.0.1 localhost ::1 localhost 203.0.113.45 host1.fqdomain.example host1
その結果、システムは両方のエントリに解決されます:
$ getent hosts
127.0.0.1 localhost 127.0.0.1 localhost 127.0.1.1 myhostname