マイクロコード
プロセッサのマイクロコードはプロセッサのファームウェアと同種のものです。カーネルは BIOS のアップデートをすることなくプロセッサのファームウェアをアップデートすることができます。Intel のウェブサイトより:
- マイクロコードのデータファイルには全ての Intel プロセッサのための最新のマイクロコードが定義されています。Intel はマイクロコードのアップデートをリリースすることで、それぞれのプロセッサの仕様のアプリケーションに文書化されているようにプロセッサの挙動を修正します。一般的に、このマイクロコードの更新を行うのは BIOS のアップデートによりますが、これは管理者を困らせるような羽目になることがあるのを Intel は了解しています。Linux オペレーティングシステムや VMware ESX プロダクトには起動後にマイクロコードを更新する仕組みが備わっています。例えば、Linux システムの
/etc/firmware
ディレクトリにファイルが配置されると、オペレーティングシステムの仕組みがこのファイルを使用します。
全てのユーザーがアップデートをインストールすべきですが、Intel Haswell と Broadwell プロセッサファミリーに属する CPU を使っている場合は特に、システムを安定させるためにマイクロコードのアップデートをインストールしてください。
目次
インストール
Intel のプロセッサの場合、intel-ucode をインストールしてください。
AMD のプロセッサの場合、amd-ucode をインストールしてください。
Arch 環境をリムーバブルドライブ上に構築していて、両方のメーカーのマイクロコードが必要な場合、両方のパッケージをインストールしてください。
起動初期にマイクロコードをアップデート
マイクロコードはブートローダーからロードする必要があります。ブートの設定はユーザーによって様々であるため、Arch のデフォルト設定ではマイクロコードのアップデートは自動的に使われないようになっています。この点について AUR カーネルの多くは Arch の公式カーネルと同じようになっています。
アップデートを有効にするにはブートローダーの設定ファイルに /boot/amd-ucode.img
または /boot/intel-ucode.img
を一番目の initrd として追加する必要があります。通常の initrd ファイルとは別に追加します。
GRUB
自動ロード
grub-mkconfig が自動的にマイクロコードのアップデートを処理します。マイクロコードのパッケージをインストールした後に以下のコマンドを実行して、grub の設定を再生成し、マイクロコードのアップデートのロードを有効にしてください:
# grub-mkconfig -o /boot/grub/grub.cfg
手動ロード
もしくは、GRUB の設定ファイルを手動で管理したい場合、以下のように grub.cfg
に /boot/cpu_manufacturer-ucode.img
(/boot
パーティションを分けている場合は /cpu_manufacturer-ucode.img
) を追加します:
/boot/grub/grub.cfg
... echo 'Loading initial ramdisk' initrd /boot/cpu_manufacturer-ucode.img /boot/initramfs-linux.img ...
すべてのメニューエントリに追加してください。
systemd-boot
以下のように初期 RAM ディスクの前に initrd
オプションを使ってマイクロコードをロード:
/boot/loader/entries/entry.conf
title Arch Linux linux /vmlinuz-linux initrd /cpu_manufacturer-ucode.img initrd /initramfs-linux.img ...
最新のマイクロコード cpu_manufacturer-ucode.img
が起動時に EFI システムパーティションに必要となります。amd-ucode または intel-ucode を更新したときはマイクロコードが更新されるように /boot
に ESP をマウントしてください。もしくは ESP に /boot/cpu_manufacturer-ucode.img
をコピーしてください。
EFI ブートスタブ / EFI ハンドオーバー
initrd=
オプションを2つ追加:
initrd=/cpu_manufacturer-ucode.img initrd=/initramfs-linux.img
全ての initrd とコマンドライン、カーネルを含むひとつのファイルとしてカーネルを生成した場合、まず以下のように新しい initrd を作成して統合してください:
cat /boot/cpu_manufacturer-ucode.img /boot/initramfs-linux.img > my_new_initrd objcopy ... --add-section .initrd=my_new_initrd
rEFInd
上記の EFI ブートスタブと同じように /boot/refind_linux.conf
のブートオプションを編集する、例:
"Boot with standard options" "rw root=UUID=(...) initrd=/boot/cpu_manufacturer-ucode.img initrd=/boot/initramfs-linux.img"
手動で esp/EFI/refind/refind.conf
にカーネルを定義している場合はメインの部分ではなく options 行に /boot/cpu_manufacturer-ucode.img
(/boot
パーティションを分けている場合は /cpu_manufacturer-ucode.img
) を追加してください。例:
options "root=root=UUID=(...) rw add_efi_memmap initrd=/boot/cpu_manufacturer-ucode.img"
Syslinux
/boot/syslinux/syslinux.cfg
で複数の initrd をカンマで区切って指定できます:
LABEL arch MENU LABEL Arch Linux LINUX ../vmlinuz-linux INITRD ../cpu_manufacturer-ucode.img,../initramfs-linux.img ...
LILO
LILO などの旧式のブートローダーは複数の initrd イメージをサポートしていません。そのような場合 cpu_manufacturer-ucode.img
と initramfs-linux.img
をひとつのイメージにまとめる必要があります。
ふたつのイメージを initramfs-merged.img
という名前のイメージにマージするには、以下のコマンドを使用:
# cat /boot/cpu_manufacturer-ucode.img /boot/initramfs-linux.img > /boot/initramfs-merged.img
マージできたら /etc/lilo.conf
を編集して新しいイメージをロードします:
... initrd=/boot/initramfs-merged.img ...
root で lilo
を実行してください:
# lilo
起動後にマイクロコードをアップデート
システムを起動した後にマイクロコードのアップデートをロードすることもできます。/usr/lib/firmware/amd-ucode/
と /usr/lib/firmware/intel-ucode/
のファイルを使用します。
AMD プロセッサの場合、マイクロコードのアップデートファイルは linux-firmware によって提供されます。
Intel プロセッサの場合、マイクロコードのアップデートファイルが含まれるパッケージはありません (FS#59841)。起動後にロードするには Intel が提供しているアーカイブから手動で intel-ucode/
を抽出する必要があります。
マイクロコードのアップデートを有効にする
起動初期のロードとは異なり、起動後のマイクロコードのアップデートのロードは Arch Linux ではデフォルトで有効になっており /usr/lib/tmpfiles.d/linux-firmware.conf
を使用します。起動後に systemd-tmpfiles-setup.service(8) によってファイルが読み込まれて CPU のマイクロコードが更新されます。
実行中のシステムで手動でマイクロコードをアップデートするには:
# echo 1 > /sys/devices/system/cpu/microcode/reload
このコマンドを使えば linux-firmware が更新されたときにシステムを再起動することなくマイクロコードのアップデートを適用することができます。pacman フックを使って自動的にコマンドを実行することも可能です:
/etc/pacman.d/hooks/microcode_reload.hook
[Trigger] Operation = Install Operation = Upgrade Operation = Remove Type = File Target = usr/lib/firmware/amd-ucode/* [Action] Description = Applying CPU microcode updates... When = PostTransaction Depends = sh Exec = /bin/sh -c 'echo 1 > /sys/devices/system/cpu/microcode/reload'
マイクロコードのアップデートを無効にする
AMD 環境では amd-ucode がインストールされてなくても linux-firmware にファイルが含まれているため CPU のマイクロコードはアップデートされてしまいます (FS#59840)。起動後のロードを無効にしたい場合は /usr/lib/tmpfiles.d/linux-firmware.conf
を無効にしてください。/etc/tmpfiles.d/
に同名のファイルを作成することで無効化できます:
# ln -s /dev/null /etc/tmpfiles.d/linux-firmware.conf
起動時にマイクロコードのアップデートがされたか確認する
マイクロコードがアップデートされたかどうか確認するには /usr/bin/dmesg
を使用します:
$ dmesg | grep microcode
Intel が載っているシステムでは、マイクロコードのアップデートがされていると以下のような表示がされます:
[ 0.000000] CPU0 microcode updated early to revision 0x1b, date = 2014-05-29 [ 0.221951] CPU1 microcode updated early to revision 0x1b, date = 2014-05-29 [ 0.242064] CPU2 microcode updated early to revision 0x1b, date = 2014-05-29 [ 0.262349] CPU3 microcode updated early to revision 0x1b, date = 2014-05-29 [ 0.507267] microcode: CPU0 sig=0x306a9, pf=0x2, revision=0x1b [ 0.507272] microcode: CPU1 sig=0x306a9, pf=0x2, revision=0x1b [ 0.507276] microcode: CPU2 sig=0x306a9, pf=0x2, revision=0x1b [ 0.507281] microcode: CPU3 sig=0x306a9, pf=0x2, revision=0x1b [ 0.507286] microcode: CPU4 sig=0x306a9, pf=0x2, revision=0x1b [ 0.507292] microcode: CPU5 sig=0x306a9, pf=0x2, revision=0x1b [ 0.507296] microcode: CPU6 sig=0x306a9, pf=0x2, revision=0x1b [ 0.507300] microcode: CPU7 sig=0x306a9, pf=0x2, revision=0x1b [ 0.507335] microcode: Microcode Update Driver: v2.2.
最新のハードウェアの場合、CPU のマイクロコードアップデートが存在しないという可能性も考えられます。そのときは、以下のような出力がなされます:
[ 0.292893] microcode: CPU0 sig=0x306c3, pf=0x2, revision=0x1c [ 0.292899] microcode: CPU1 sig=0x306c3, pf=0x2, revision=0x1c [ 0.292906] microcode: CPU2 sig=0x306c3, pf=0x2, revision=0x1c [ 0.292912] microcode: CPU3 sig=0x306c3, pf=0x2, revision=0x1c [ 0.292956] microcode: Microcode Update Driver: v2.2.
AMD 環境で起動初期にマイクロコードをアップデートしている場合、以下のように出力されます:
[ 2.119089] microcode: microcode updated early to new patch_level=0x0700010f [ 2.119157] microcode: CPU0: patch_level=0x0700010f [ 2.119171] microcode: CPU1: patch_level=0x0700010f [ 2.119183] microcode: CPU2: patch_level=0x0700010f [ 2.119189] microcode: CPU3: patch_level=0x0700010f [ 2.119269] microcode: Microcode Update Driver: v2.2.
AMD 環境で起動後にマイクロコードをアップデートしている場合、古いマイクロコードのバージョンが表示されてからマイクロコードがリロードされ、新しいマイクロコードのバージョンが表示されます。例:
[ 2.112919] microcode: CPU0: patch_level=0x0700010b [ 2.112931] microcode: CPU1: patch_level=0x0700010b [ 2.112940] microcode: CPU2: patch_level=0x0700010b [ 2.112951] microcode: CPU3: patch_level=0x0700010b [ 2.113043] microcode: Microcode Update Driver: v2.2. [ 6.429109] microcode: CPU2: new patch_level=0x0700010f [ 6.430416] microcode: CPU0: new patch_level=0x0700010f [ 6.431722] microcode: CPU1: new patch_level=0x0700010f [ 6.433029] microcode: CPU3: new patch_level=0x0700010f [ 6.433073] x86/CPU: CPU features have changed after loading microcode, but might not take effect.
マイクロコードのアップデートができる CPU
特定のモデルがサポートされているのかどうかは以下のリンクから Intel や AMD のサイトで確認することができます:
マイクロコードのアップデートが必要かどうか確認する
iucode-tool を使って、使用している cpu のマイクロコードイメージが intel-ucode.img
に含まれているかどうか確認できます:
- intel-ucode をインストール (アップデートがあるかどうか確認するのに initrd の変更は必要ありません)
- iucode-tool をインストール
# modprobe cpuid
# bsdtar -Oxf /boot/intel-ucode.img | iucode_tool -tb -lS -
(マイクロコードイメージを展開して cpuid を検索します)- アップデートが存在する場合は、selected microcodes の下に表示されます。
- メーカーの BIOS にマイクロコードが既に含まれていてロードされたことが dmesg に表示されていない可能性もあります。
grep microcode /proc/cpuinfo
を実行して現在のマイクロコードを比較してください。
カスタムカーネルで Intel のマイクロコードのロードを有効にする
カスタムカーネルでロードを行うには、"CPU microcode loading support" をカーネルに組み込む必要があります。モジュールとしてコンパイルしても動作しません。"Early load microcode" プロンプトが有効になるので "Y" に設定してください。
CONFIG_BLK_DEV_INITRD=Y CONFIG_MICROCODE=y CONFIG_MICROCODE_INTEL=Y CONFIG_MICROCODE_AMD=y