OpenRC
OpenRC は Gentoo の開発者によってメンテナンスされている init システムです。OpenRC は依存関係を前提とした init システムで、sysvinit などの init プログラムが動いているシステムで動作します。OpenRC は sysvinit を置き換えるものではありません。
インストール
OpenRC は AUR から利用可能です。openrcAUR または openrc-gitAUR パッケージを選んでインストールできます。
バージョン 0.25 から、OpenRC には独自の init が付属しており /usr/bin/openrc-init
にインストールされます。任意で busybox や openrc-sysvinitAUR (伝統的な sysvinit に多少のパッチがあてられたバージョン) など他の init を使うこともできます。openrc-init
を使用する場合、他のパッケージの shutdown
や reboot
コマンドの代わりに openrc-shutdown
を使う必要があります。そうしないとエラーが発生します。
基本的なサービスファイルは openrc-arch-services-gitAUR パッケージでインストールできます。他にもサービスファイルが含まれたパッケージが存在します。AUR を検索してください。
initscripts-forkAUR との互換性を保つために、設定ファイルは /etc/openrc/
にインストールされます。
ブート
OpenRC を使って起動するには使用する init をカーネルパラメータに追加してください。
OpenRC に付属している init の場合は init=/usr/bin/openrc-init
を追加します。
openrc-sysvinitAUR を使用する場合は /usr/bin/init-openrc
に置き換えてください。
openrc-init
を使用する場合、/etc/inittab
ファイルは使用されないことに注意してください。
設定
OpenRC の設定は /etc/openrc/conf.d
ディレクトリと /etc/openrc/rc.d
ファイルで行います。
設定に関する詳細な資料は以下を参照してください:
サービス
OpenRC のサービスは root で rc-update add service_name runlevel
を実行することで有効にできます。最低でも以下のサービスを有効化することが推奨されます:
サービス名 | ランレベル | 説明 |
---|---|---|
udev | sysinit | デバイスのホットプラグ |
alsa | default | ALSA の状態 |
acpid | default | ACPI イベント |
dbus | default | メッセージバス |
dcron | default | スケジュール |
syslog-ng | default | システムログ |
必要に応じて、/etc/openrc/init.d/getty
へのシンボリックリンクを作成して、必要な getty ごとにサービスを作成します。例: /dev/tty1
:
# ln -s /etc/openrc/init.d/agetty{,.tty1} # rc-update add agetty.tty1 default
PAM が tty にログインした後に systemd に登録しようとするのを防ぐため (が問題を引き起こす可能性があります)、/etc/pam.d/system-auth
内の systemd に言及する行を削除するかコメントアウトすると安全です。
Gentoo:Systemd#Native services も参照してください。
ネットワーク
ネットワークを立ち上げて動かす方法は複数存在します。一つは /etc/openrc/conf.d/network
ファイルを設定することです。ip
(iproute2) と ifconfig
(net-tools) 両方のコマンドがサポートされています。
以下は ip
を使った設定の例です。
ip_eth0="192.168.1.2/24" defaultiproute="via 192.168.1.1" ifup_eth0="ip link set \$int mtu 1500"
network サービスはデフォルトで起動時のランレベルに追加されるため、これ以外の設定は必要ありません。
また、NetworkManager や dhcpcd、さらに netcfgAUR などを使うことも可能です。それぞれのサービスを有効にしてください。
一般的な、ネットワークの設定の詳細においてはネットワーク設定を見て下さい。
ブートログ
ブートログを有効にするには、/etc/openrc/rc.conf
の rc_logger="YES"
行のコメントを解除します。有効にすると、ブートログは /var/log/rc.log
に保存されます。
ホストネーム
OpenRC は /etc/openrc/conf.d/hostname
からホストネームを設定します。
以下は設定ファイルの例:
/etc/openrc/conf.d/hostname
hostname="myhostname"
モジュールの自動ロード
OpenRC は /etc/modules-load.d/
フォルダを使用せず、そのかわりに /etc/openrc/conf.d/modules
を使います。
このファイルに以下のように行を追加してください:
modules=acpi_cpufreq
ロケール
OpenRC でロケールを設定する方法が備わっていません。しかしながら、/etc/locale.conf
ファイルを使って設定することが可能です。このファイルは /etc/profile.d/locale.sh
で読み込まれます。
ロケールの設定に関する詳細は、ロケールを参照してください。
使用方法
このセクションでは、systemd と他の init システムとの類似点を示します。
特に カーネルパラメータ を一時的に編集する場合は、.service
および .target
拡張子を省略できます。
systemd | SysVinit | OpenRC | 説明 |
---|---|---|---|
systemctl list-units |
rc.d list |
rc-status |
実行中のサービスのステータスを一覧表示する |
systemctl --failed |
rc-status --crashed |
失敗したサービスを確認する | |
systemctl --all |
rc-update -v show |
利用可能なサービスをすべて表示します | |
systemctl (start, stop, restart, status) daemon.service |
rc.d (start, stop, restart) daemon |
rc-service daemon (start, stop, restart, status) |
サービス状態の変更 |
systemctl (enable, disable) daemon.service |
chkconfig daemon (on, off) |
rc-update (add, del) daemon |
サービスをオンまたはオフにします |
systemctl daemon-reload |
chkconfig daemon --add |
設定を作成または変更します |
ヒントとテクニック
ブートメッセージを消す
OpenRC でブートメッセージを非表示にするには、/etc/inittab
を編集して全ての openrc コマンドに --quiet
を追加してください。詳しい情報は $ openrc -h
で確認できます。
トラブルシューティング
/tmp のアンマウント時にエラーが起こる
システムをシャットダウンするときに、以下のようなエラーメッセージが表示されることがあります:
* Unmounting /tmp ... * in use but fuser finds nothing [ !! ]
この問題は /etc/openrc/conf.d/localmount
に以下を追加することで修正できます:
no_umounts="/tmp"
IPv6 が無効にできない
OpenRC は /etc/openrc
の sysconf ディレクトリにインストールした場合に起こります。
/etc/openrc/sysctl.d
下のファイル (拡張子は .conf にしてください) に以下を記述することで修正できます:
# Disable ipv6 net.ipv6.conf.all.disable_ipv6 = 1
シャットダウン中に読み込み専用での root の再マウントが失敗する
この問題が発生する場合、/etc/openrc/init.d/mount-ro
を編集して以下を:
telinit u
次の行の後に記述してください:
# Flush all pending disk writes now sync; sync
/etc/sysctl.conf not found
デフォルトで、sysctl の設定をロードするために sysctl --system
が実行されます [1]。Arch では存在しない /etc/sysctl.conf
も読み込まれます [2]。
ファイルが見つからないというエラーを表示させたくない場合、ファイルを作成してください:
# touch /etc/sysctl.conf
opentmpfiles-setup failed to start
OpenRC の起動時に以下のようなメッセージが表示される場合:
* Setting up tmpfiles.d entries ... chattr: Operation not supported while setting flags on /var/log/journal chattr: No such file or directory while trying to stat /var/log/journal/%m chattr: Operation not supported while setting flags on /var/log/journal/remote [ !! ] ERROR: opentmpfiles-setup failed to start
/usr/lib/tmpfiles.d/journal-nocow.conf
で btrfs ファイルシステム上にジャーナルがある場合にしか使えないオプションが有効になっていることが原因です。詳しくは https://github.com/OpenRC/opentmpfiles/issues/2 を参照してください。
空の /etc/tmpfiles.d/journal-nocow.conf
ファイルを作成することで設定を上書きできます。
systemd に戻す
大抵の場合 systemd に戻すのは簡単です。OpenRC から systemd に移行する際は、以下の点に注意してください:
- カーネルコマンドラインの
init=
パラメータの編集。 - OpenRC 向けに改造された、systemd を使用しないパッケージを標準のパッケージに置き換え (例: dbus-nosystemdAUR を dbus に置換)