Zsh
Zsh は対話式シェルとしてもスクリプト言語のインタプリタとしても使えるパワフルなシェルです。POSIX sh と互換性がありながら (デフォルトではありません、emulate sh
を実行した時だけです)、タブ補完の改善や グロビングなどの利点があります。
Zsh FAQ には他にも Zsh をあなたのシェルとして使うべき理由が列挙されています。
目次
- 1 インストール
- 2 スタートアップ/シャットダウン ファイル
- 3 Zsh の設定
- 4 ヒントとテクニック
- 4.1 ログイン時に X を自動起動
- 4.2 プログラムが異常終了した後、端末の設定を復元する
- 4.3 最近のディレクトリを記憶させる
- 4.4 ヘルプコマンド
- 4.5 継続的に rehash する
- 4.6 ncurses アプリケーションにキーをバインド
- 4.7 ファイルマネージャー風のキーバインド
- 4.8 xterm タイトル
- 4.9 シェル環境の検出
- 4.10 /dev/tcp equivalent: ztcp
- 4.11 コマンドラインの一部でシェルを終了するショートカット
- 4.12 pacman -F "command not found" ハンドラー
- 4.13 キーバインドを使ってバックバッファをクリアする
- 5 サードパーティ拡張
- 6 参照
インストール
インストールをする前に現在使っているシェルが何なのか知っておくとよいでしょう:
$ echo $SHELL
zsh パッケージをインストールしてください。追加の補完定義を使いたい場合は、zsh-completions パッケージもインストールします。
初期設定
ターミナルで次のコマンドを実行して Zsh が正しくインストールされたか確認してください:
$ zsh
基本的な設定を説明する zsh-newuser-install が表示されるはずです。これをスキップしたい場合、q
を押して下さい。表示されない場合は、次のコマンドで手動で呼び出すことができます:
$ autoload -Uz zsh-newuser-install $ zsh-newuser-install -f
Zsh をデフォルトのシェルにする
シェルを /usr/bin/zsh
に変更してください。コマンドラインシェル#デフォルトシェルを変更する を見てください。
スタートアップ/シャットダウン ファイル
デフォルトで、Zsh は起動時に以下のファイルを以下の順番で実行します (存在しているもののみ実行されます)。
/etc/zsh/zshenv
すべてのユーザに対して環境変数を設定するために使用されます。このファイルには、出力を行うコマンドや、シェルが TTY に接続されていることを期待するコマンドを含めるべきではありません。このファイルが存在する場合、このファイルは 常に 読み込まれます。この挙動を上書きすることはできません。$ZDOTDIR/.zshenv
ユーザの環境変数を設定するために使用されます。このファイルには、出力を行うコマンドや、シェルが TTY に接続されていることを期待するコマンドを含めるべきではありません。このファイルが存在する場合、このファイルは 常に 読み込まれます。/etc/zsh/zprofile
すべてのユーザに対して起動時にコマンドを実行するために使用されます。ログインシェルとして起動した場合に、このファイルは読み込まれます。Arch Linux においては、このファイルには、/etc/profile
を source する 1行 がデフォルトで含まれていることを留意しておいてください。その行を削除したい場合は以下の警告を先に読んでください!/etc/profile
POSIX sh 互換のシェルはすべて、このファイルをログイン時に source する必要があります。このファイルは$PATH
や他の環境変数を設定し、ログイン時にはアプリケーション固有 (/etc/profile.d/*.sh
) の設定を行います。
$ZDOTDIR/.zprofile
起動時にユーザのコマンドを実行するために使用されます。ログインシェルとして起動した場合に、このファイルは読み込まれます。通常、グラフィカルセッションを自動起動し、セッションの環境変数を設定するために使用されます。/etc/zsh/zshrc
すべてのユーザに対して、インタラクティブシェルを設定したりコマンドを実行したりするために使用されます。インタラクティブシェルとして起動した場合に、このファイルは読み込まれます。$ZDOTDIR/.zshrc
ユーザのインタラクティブシェルを設定したり、コマンドを実行したりするために使用されます。インタラクティブシェルとして起動した場合に、このファイルは読み込まれます。/etc/zsh/zlogin
すべてのユーザに対して初期化処理の最後にコマンドを実行するために使用されます。ログインシェルとして起動した場合に、このファイルは読み込まれます。$ZDOTDIR/.zlogin
初期化処理の最後にユーザのコマンドを実行するために使用されます。ログインシェルとして起動した場合に、このファイルは読み込まれます。通常、コマンドラインユーティリティを自動起動するために使用されます。グラフィカルセッションを自動起動するために使用するべきではありません (この時点では、インタラクティブシェルにおいてのみ意味を持つ設定がセッションに含まれているかもしれないからです)。$ZDOTDIR/.zlogout
ログインシェル が 終了 する時にコマンドを実行するために使用されます。/etc/zsh/zlogout
ログインシェル が 終了 する時にすべてのユーザに対してコマンドを実行するために使用されます。
the graphic representation を参照してください。
Zsh の設定
Zsh は何も設定しなくても使うことができますが、ほとんどのユーザが使いたいと思うようには設定されていないことはほぼ確実です。ただし、Zsh で利用できるカスタマイズの量は膨大で、Zsh を設定するのは大変で時間を浪費する経験となるでしょう。自動的に設定するには #サードパーティ拡張 を見てください。
シンプルな .zshrc
以下は設定ファイルのサンプルです。デフォルトのオプションの適切なセットと共に、Zsh でカスタマイズ可能な方法の例を提供します。この設定を使うには、.zshrc
という名前のファイルに保存してください。
これはシンプルな .zshrc
です:
~/.zshrc
autoload -Uz compinit promptinit compinit promptinit # デフォルトのプロンプトを walters テーマに設定する prompt walters
プロンプトテーマシステムに関する詳細は #プロンプトテーマ を見てください。
$PATH の設定
Zsh は PATH
変数を path
配列に結びつけます。これにより、path
配列を変更するだけで PATH
変数を操作することができます。詳細は A User's Guide to the Z-Shell を見てください。
~/.local/bin/
を PATH
に追加するには:
~/.zshenv
typeset -U path PATH path=(~/.local/bin $path) export PATH
コマンド補完
Zsh の一番魅力的な機能はおそらく先進的な自動補完機能でしょう。少なくとも .zshrc
で自動補完を有効化してください。自動補完を有効にするには、以下を ~/.zshrc
に追加してください:
~/.zshrc
autoload -Uz compinit compinit
上記の設定には ssh/scp/sftp ホスト名の保管が含まれていますが、この機能を動作させるためにはユーザは ssh のホスト名ハッシュ化 (つまり、ssh クライアントの設定の HashKnownHosts
オプション) を有効化してはなりません。
矢印キーを使うインターフェイスで自動補完を行うには、以下を追加してください:
~/.zshrc
zstyle ':completion:*' menu select
メニューをアクティブにするには、Tab
を2回押してください。
特権が与えられたコマンドで特権環境の自動補完を有効化するには (例えば、sudo で始まるコマンドを補完する場合、補完スクリプトは sudo の補完もしようと試みます)、以下を追加してください:
~/.zshrc
zstyle ':completion::complete:*' gain-privileges 1
キーバインド
Zsh は readline を使用しません。代わりに、よりパワフルな独自の Zsh Line Editor (ZLE) を使用します。ZLE は /etc/inputrc
と ~/.inputrc
のどちらも読み込みません。ZLE 設定のイントロダクションは A closer look at the zsh line editor and creating custom widgets を読んでください。
ZLE には Emacs モードと vi モードがあります。VISUAL
か EDITOR
のどちらか一方の環境変数に vi
という文字列が含まれている場合、vi モードが使用されます。それ以外の場合、Emacs モードをデフォルトで使用します。bindkey -e
(Emacs モード) や bindkey -v
(vi モード) でモードを明示的に設定することもできます。
キーバインドは、キープレスに対応するエスケープシーケンスを ZLE ウィジェットにマッピングすることにより割り当てます。利用可能なウィジェットは zshzle(1) § STANDARD WIDGETS と zshcontrib(1) § ZLE FUNCTIONS にリストアップされています (アクションとデフォルトのキーバインドの説明付き)。
Zsh でキーバインドを設定する方法として推奨されるのは、terminfo(5) の文字列ケーパビリティを使用することです。例えば [1][2]:
~/.zshrc
# zkbd と互換性のあるハッシュテーブルを作成し、 # 他のキーをこのハッシュテーブルに追加する (man 5 terminfo を参照) typeset -g -A key key[Home]="${terminfo[khome]}" key[End]="${terminfo[kend]}" key[Insert]="${terminfo[kich1]}" key[Backspace]="${terminfo[kbs]}" key[Delete]="${terminfo[kdch1]}" key[Up]="${terminfo[kcuu1]}" key[Down]="${terminfo[kcud1]}" key[Left]="${terminfo[kcub1]}" key[Right]="${terminfo[kcuf1]}" key[PageUp]="${terminfo[kpp]}" key[PageDown]="${terminfo[knp]}" key[Shift-Tab]="${terminfo[kcbt]}" # 適宜キーを設定する [[ -n "${key[Home]}" ]] && bindkey -- "${key[Home]}" beginning-of-line [[ -n "${key[End]}" ]] && bindkey -- "${key[End]}" end-of-line [[ -n "${key[Insert]}" ]] && bindkey -- "${key[Insert]}" overwrite-mode [[ -n "${key[Backspace]}" ]] && bindkey -- "${key[Backspace]}" backward-delete-char [[ -n "${key[Delete]}" ]] && bindkey -- "${key[Delete]}" delete-char [[ -n "${key[Up]}" ]] && bindkey -- "${key[Up]}" up-line-or-history [[ -n "${key[Down]}" ]] && bindkey -- "${key[Down]}" down-line-or-history [[ -n "${key[Left]}" ]] && bindkey -- "${key[Left]}" backward-char [[ -n "${key[Right]}" ]] && bindkey -- "${key[Right]}" forward-char [[ -n "${key[PageUp]}" ]] && bindkey -- "${key[PageUp]}" beginning-of-buffer-or-history [[ -n "${key[PageDown]}" ]] && bindkey -- "${key[PageDown]}" end-of-buffer-or-history [[ -n "${key[Shift-Tab]}" ]] && bindkey -- "${key[Shift-Tab]}" reverse-menu-complete # 最後に、zle がアクティブのときにターミナルがアプリケーションモードになるようにする。 # そのときにだけ、$terminfo の値が有効になる。 if (( ${+terminfo[smkx]} && ${+terminfo[rmkx]} )); then autoload -Uz add-zle-hook-widget function zle_application_mode_start { echoti smkx } function zle_application_mode_stop { echoti rmkx } add-zle-hook-widget -Uz zle-line-init zle_application_mode_start add-zle-hook-widget -Uz zle-line-finish zle_application_mode_stop fi
履歴検索
以下の手順を使うには、key
配列を設定し、ZLE がアプリケーションモードとなるようにする必要があります。#キーバインド を見てください。
履歴検索を有効化するには、以下を .zshrc
ファイルに追加してください:
~/.zshrc
autoload -Uz up-line-or-beginning-search down-line-or-beginning-search zle -N up-line-or-beginning-search zle -N down-line-or-beginning-search [[ -n "${key[Up]}" ]] && bindkey -- "${key[Up]}" up-line-or-beginning-search [[ -n "${key[Down]}" ]] && bindkey -- "${key[Down]}" down-line-or-beginning-search
これにより、Up
か Down
を押したときに、現在の行のカーソル位置までにマッチする過去のコマンドだけが表示されます。
修飾キー Shift、Alt、Ctrl、Meta
xterm 互換端末は user_caps(5) からの拡張キー定義を使うことができます。キー定義は、Shift
、Alt
、Ctrl
、Meta
と、Up
、Down
、Left
、Right
、PageUp
、PageDown
、Home
、End
、Del
のどれかを組み合わせたものです。修飾キーとキーの組み合わせに推奨される名前の一覧については、zkbd のソース を参照してください。
たとえば、 Ctrl+Left
で前の単語の先頭に移動し、Ctrl+Right
で次の単語の先頭に移動させるには:
~/.zshrc
key[Control-Left]="${terminfo[kLFT5]}" key[Control-Right]="${terminfo[kRIT5]}" [[ -n "${key[Control-Left]}" ]] && bindkey -- "${key[Control-Left]}" backward-word [[ -n "${key[Control-Right]}" ]] && bindkey -- "${key[Control-Right]}" forward-word
プロンプト
Zsh は2つの選択肢を提供します: プロンプトテーマを使用するか、テーマに不満がある (または、テーマの使いやすさを自分で拡張したい) ユーザはカスタムのプロンプトを構築できます。
プロンプトテーマ
プロンプトテーマは、Zsh で色付きのプロンプトを設定するための手っ取り早く簡単な方法です。プロンプトテーマや、プロンプトテーマを自分で記述する方法については zshcontrib(1) § PROMPT THEMES を参照してください。
テーマを使用するには、プロンプトテーマシステムが自動でロードされるように .zshrc
で設定されていることを確認してください。自動ロードを行うには、以下の行を追加します:
~/.zshrc
autoload -Uz promptinit promptinit
以下のコマンドで、利用可能なプロンプトテーマをリストアップできます:
$ prompt -l
例えば、walters
テーマを使うには:
$ prompt walters
利用可能なテーマをすべてプレビューするには:
$ prompt -p
プロンプトテーマを手動でインストールする
外部の設定管理ツールを使わずに、テーマを手動でインストールすることもできます。ローカルにインストールする場合、まずフォルダを作成し、そのフォルダのパスを fpath
配列に追加してください。例えば:
$ mkdir ~/.zprompts $ fpath=("$HOME/.zprompts" "$fpath[@]")
次に、このフォルダ内にテーマファイルのシンボリックリンクを作成します:
$ ln -s mytheme.zsh ~/.zprompts/prompt_mytheme_setup
代わりにテーマをグローバルにインストールする場合は、次のようにします:
# ln -s mytheme.zsh /usr/share/zsh/functions/Prompts/prompt_mytheme_setup
これで、次のコマンドを使ってアクティブ化できるはずです:
$ prompt mytheme
すべてが機能する場合は、.zshrc
を適宜編集することができます。
テーマごとにファイルを分けずにプロンプトテーマを追加する
プロンプトテーマは、テーマのファイルを使って追加するだけでなく、ある1つのファイル (例えば .zshrc
) 内からテーマを追加することもできます。例えば:
~/.zshrc
# promptinit をロードする autoload -Uz promptinit && promptinit # テーマを定義する prompt_mytheme_setup() { PS1="%~%# " } # promptsys にそのテーマを追加する prompt_themes+=( mytheme ) # テーマをロードする prompt mytheme
プロンプトのカスタマイズ
すべてのシェルで一般的な主要な左側のプロンプト PS1
(PROMPT
、prompt
) に加えて、Zsh では右側のプロンプト RPS1
(RPROMPT
) もサポートしています。これら2つの変数は、好きな値にカスタムできます。
他の特殊な目的のためのプロンプト (PS2
(PROMPT2
)、PS3
(PROMPT3
)、PS4
(PROMPT4
)、RPS1
(RPROMPT
)、RPS2
(RPROMPT2
)、SPROMPT
など) は zshparam(1) § PARAMETERS USED BY THE SHELL で説明されています。
すべてのプロンプトは、プロンプトエスケープでカスタマイズできます (例えば、%n
はユーザ名になります)。利用可能なプロンプトエスケープは zshmisc(1) § EXPANSION OF PROMPT SEQUENCES でリストアップされています。
色
Zsh は、Bash とは異なる方法で色を設定します。ANSI エスケープシーケンスや、terminfo(5) のターミナルケーパビリティを多用する必要はありません。Zsh は、前景色、背景色、他の視覚エフェクトを設定するための便利なプロンプトエスケープを提供します。エスケープのリストや説明は zshmisc(1) § Visual effects を見てください。
色を指定する方法は3つあります: 10進数の整数、8つの広くサポートされている色の名前、# のあとに16進数の RGB トリプレット。詳細は zshzle(1) § CHARACTER HIGHLIGHTING 内の fg=colour の説明を見てください。
ほとんどのターミナルは以下の色を名前でサポートしています:
名前 | 番号 |
---|---|
black |
0
|
red |
1
|
green |
2
|
yellow |
3
|
blue |
4
|
magenta |
5
|
cyan |
6
|
white |
7
|
xterm 256 color と互換性のあるターミナルエミュレータの色番号 0 から 255 は、xterm-256color チャートで見られます。
TERM 環境変数が正しく設定されていれば、ターミナルのサポートする色の最大数は、terminfo(5) データベースから echoti colors
を使って確認することができます。24-bit カラーの場合は、print $COLORTERM
を使って COLORTERM 環境変数も確認してください。24bit
か truecolor
を返した場合、たとえ terminfo がより少ない数値を表示したとしても、あなたのターミナルは 16777216 (224) 色をサポートしています。
例
これは、シンプルな色無しのプロンプトの例です:
PROMPT='%n@%m %~ %# '
以下のように出力されます:
これは、色付きの左右両方のプロンプトの例です:
PROMPT='%F{green}%n%f@%F{magenta}%m%f %F{blue}%B%~%b%f %# ' RPROMPT='[%F{yellow}%?%f]'
以下のように出力されます:
16-255 の範囲の色は、欲しい色に割り当てた 0 から 255 までの数値を使うことで使用できます。また、24 ビットトゥルーカラーは16進数のカラーコードを使うことで使用できます:
PROMPT='%F{2}%n%f@%F{5}%m%f %F{4}%B%~%b%f %# ' RPROMPT='[%F{3}%?%f]'
PROMPT='%F{#c0c0c0}%n%f@%F{#008000}%m%f %F{#800080}%B%~%b%f %# ' RPROMPT='[%F{#0000ff}%?%f]'
サンプルの .zshrc ファイル
- 月次 ISO リリース (デフォルトで Zsh を使用します) と同じセットアップにするには、grml-zsh-config をインストールしてください。これには、grml の多くの調整と高度な最適化が含まれています。
- https://github.com/MrElendig/dotfiles-alice/blob/master/.zshrc - ベーシックなセットアップ。動的なプロンプトとウィンドウのタイトル/hardinfo。
- https://github.com/slashbeast/conf-mgmt/blob/master/roles/home_files/files/DOTzshrc - 複数の機能を持つ zshrc。コメントをチェックしてください。特出すべき機能: ユーザーが電源オフ・再起動・ハイバネートをすることを尋ねる関数、プロンプトの GIT サポート (vcsinfo を使わずに実現)、メニューの付いたタブ補完、実行中のコマンドをウィンドウのタイトルバーに表示など。
さらに見たい場合は ドットファイル#ユーザーリポジトリ を見てください。
ヒントとテクニック
ログイン時に X を自動起動
xinit#ログイン時に X を自動起動を参照してください。
プログラムが異常終了した後、端末の設定を復元する
多くのプログラムはターミナルの状態を変更し、異常終了したときにターミナルの設定を復元しないことがあります (例えば、クラッシュしたときや、SIGINT を受け取ったとき)。
通常、これは reset(1) を実行することで解決できます:
$ reset
以下のセクションでは、手動でターミナルをリセットする手間を省く方法について説明します。
ttyctl コマンド
ttyctl コマンドを使ってターミナルを "freeze/unfreeze" することができます。起動時にインタラクティブシェルを freeze させるには、以下を使用してください:
~/.zshrc
ttyctl -f
エスケープシーケンスで端末をリセットする
A代替の線画文字セットは、ttyctl が防ぐことができない方法でターミナルを台無しにしてしまうことがあります。
シンプルな解決法は、ターミナルをリセットするエスケープシーケンスを precmd
フック関数から出力することです。そうすれば、プロンプトが描画される前に毎回、そのエスケープシーケンスが出力されます。例えば、エスケープシーケンス \e[0m\e(B\e)0\017\e[?5l\e7\e[0;0r\e8
を使うと:
~/.zshrc
autoload -Uz add-zsh-hook function reset_broken_terminal () { printf '%b' '\e[0m\e(B\e)0\017\e[?5l\e7\e[0;0r\e8' } add-zsh-hook -Uz precmd reset_broken_terminal
うまく行くか試すには、以下を実行してください:
$ print '\e(0\e)B'
最近のディレクトリを記憶させる
Dirstack
Zsh は、最後に訪れたフォルダのうち DIRSTACKSIZE 個を記憶するように設定できます。この機能を活用すれば、それらのフォルダへ非常に素早く cd することができます。設定ファイルにいくつかの行を追加する必要があります:
~/.zshrc
autoload -Uz add-zsh-hook DIRSTACKFILE="${XDG_CACHE_HOME:-$HOME/.cache}/zsh/dirs" if [[ -f "$DIRSTACKFILE" ]] && (( ${#dirstack} == 0 )); then dirstack=("${(@f)"$(< "$DIRSTACKFILE")"}") [[ -d "${dirstack[1]}" ]] && cd -- "${dirstack[1]}" fi chpwd_dirstack() { print -l -- "$PWD" "${(u)dirstack[@]}" > "$DIRSTACKFILE" } add-zsh-hook -Uz chpwd chpwd_dirstack DIRSTACKSIZE='20' setopt AUTO_PUSHD PUSHD_SILENT PUSHD_TO_HOME ## 重複するエントリを削除する setopt PUSHD_IGNORE_DUPS ## +/- 演算子をもとに戻す。 setopt PUSHD_MINUS
これで、以下のコマンドを使えば dirstack を出力できます。 Now use
$ dirs -v
訪れたフォルダに戻るには cd -<NUM>
を使ってください。ダッシュ記号の後でオートコンプリートを使ってください。オートコンプリートメニューを使う場合に便利です。
cdr
cdr により、自動的に管理されるリストを使って現在の作業ディレクトリから以前の作業ディレクトリに移動することができます。cdr は、現在のセッションでセッション間および (デフォルトで) ターミナルエミュレータ間で管理されるファイルにすべてのエントリを保存します。
セットアップの手順は zshcontrib(1) § REMEMBERING RECENT DIRECTORIES を見てください。
zoxide
zoxide は、よりスマートな cd コマンドで、数個のキーストロークで好きな場所に移動できます。zoxide は、頻繁に使用されるディレクトリを記憶し、スコアリングメカニズムを使って、あなたが行きたい場所を推測します。
ヘルプコマンド
Bash とは違い、Zsh は組み込みの help
コマンドを有効化しておらず、代わりに run-help
を提供しています。デフォルトでは、run-help
は man
のエイリアスとなっています。コマンドの前に run-help
と付けることで実行できますし、または今タイプしたコマンドに対してキーボードショートカット Alt+h
か Esc
h
を入力することでも実行できます。
デフォルトでは man のエイリアスとなっているので、外部コマンドに対してしか動作しません。シェルの組み込みコマンドやシェルの他の機能でも動作するようにするには、run-help
関数を使う必要があります。run-help
や補助関数については zshcontrib(1) を見てください。
まず、run-help
関数をロードし、その次に既存の run-help
エイリアスを削除してください。help
は run-help
へのエイリアスにすることもできます。例えば、以下を zshrc
に追加してください:
autoload -Uz run-help (( ${+aliases[run-help]} )) && unalias run-help alias help=run-help
補助関数は別で有効化する必要があります:
autoload -Uz run-help-git run-help-ip run-help-openssl run-help-p4 run-help-sudo run-help-svk run-help-svn
例えば、run-help git commit
コマンドは、git(1) ではなく git-commit(1) の man ページを開きます。
継続的に rehash する
通常、compinit は $PATH
内の新しい実行ファイルを自動的には見つけません。例えば、新しいパッケージをインストールした後、/usr/bin/
内に追加された新しいファイルは即座に、または自動的には補完に含まれないでしょう。なので、そのような新しい実行ファイルを補完に含めるために、以下を実行します:
$ rehash
この 'rehash' は、自動的に実行するよう設定できます。[3] 以下を zshrc
に追加するだけです:
~/.zshrc
zstyle ':completion:*' rehash true
必要なときにだけ rehash する
しかし、pacman のフックを使って、自動的に rehash
を要求するように設定できます。こうすれば、先のセクションのように継続的に rehash してパフォーマンスが劣化してしまうようなことは起こりません。これを有効化するには、/etc/pacman.d/hooks
ディレクトリと /var/cache/zsh
ディレクトリを作成し、フックファイルを作成してください:
/etc/pacman.d/hooks/zsh.hook
[Trigger] Operation = Install Operation = Upgrade Operation = Remove Type = Path Target = usr/bin/* [Action] Depends = zsh When = PostTransaction Exec = /usr/bin/install -Dm644 /dev/null /var/cache/zsh/pacman
これは、/var/cache/zsh/pacman
ファイルの変更日時を、最後にパッケージをインストール/アップグレード/アンインストールした時間に合わせます。次に、zsh
のコマンドキャッシュが古くなったときにコマンドキャッシュを rehash するように設定します。以下を ~/.zshrc
に追加してください:
~/.zshrc
zshcache_time="$(date +%s%N)" autoload -Uz add-zsh-hook rehash_precmd() { if [[ -a /var/cache/zsh/pacman ]]; then local paccache_time="$(date -r /var/cache/zsh/pacman +%s%N)" if (( zshcache_time < paccache_time )); then rehash zshcache_time="$paccache_time" fi fi } add-zsh-hook -Uz precmd rehash_precmd
/var/cache/zsh/pacman
が更新されるまえに precmd
フックがトリガーされた場合、新しいプロンプトが始まるまで補完が効かないかもしれません。そういうときは、空のコマンドを実行すれば良いはずです (例えば、enter
を押す)。
SIGUSR1 を使って必要なときにだけ rehash する
フックファイルは以下のようになります。
/etc/pacman.d/hooks/zsh-rehash.hook
[Trigger] Operation = Install Operation = Upgrade Operation = Remove Type = Path Target = usr/bin/* [Action] Depends = zsh Depends = procps-ng When = PostTransaction Exec = /usr/bin/pkill zsh --signal=USR1
~/.zshrc
TRAPUSR1() { rehash }
この 関数トラップ は、リストトラップ trap 'rehash' USR1
に置き換えることもできます。トラップの種類の違いについては zshmisc(1) § Trap Functions を見てください。
この方法は、すべての zsh
インスタンスを即座に rehash
します。なので、precmd
をトリガーするためにエンターキーを押す必要がありません。
ncurses アプリケーションにキーをバインド
ncurses アプリケーションをキーストロークにバインドしますが、対話を受け入れません。これを動作させるには BUFFER
変数を使用します。次の例では、Alt+\
を使用して ncmpcpp を開くことができます。
~/.zshrc
ncmpcppShow() { BUFFER="ncmpcpp" zle accept-line } zle -N ncmpcppShow bindkey '^[\' ncmpcppShow
アプリケーションを呼び出す前に、行に入力した内容をすべて保持する別の方法
~/.zshrc
ncmpcppShow() { ncmpcpp <$TTY zle redisplay } zle -N ncmpcppShow bindkey '^[\' ncmpcppShow
ファイルマネージャー風のキーバインド
グラフィックファイルマネージャで使われているようなキーバインドが便利かもしれません。1つ目はディレクトリ履歴 (Alt+Left
) に戻り、2つ目はユーザを親ディレクトリ (Alt+Up
) に移動させます。また、ディレクトリの内容も表示されます。
~/.zshrc
cdUndoKey() { popd zle reset-prompt print ls zle reset-prompt } cdParentKey() { pushd .. zle reset-prompt print ls zle reset-prompt } zle -N cdParentKey zle -N cdUndoKey bindkey '^[[1;3A' cdParentKey bindkey '^[[1;3D' cdUndoKey
xterm タイトル
端末エミュレータがサポートしている場合は、タイトルを Zsh から設定できます。これにより、タイトルを動的に変更して、シェルの状態に関する関連情報 (ユーザ名や現在のディレクトリ、現在実行中のコマンドなど) を表示できます。
xterm のタイトルは xterm escape sequence \e]2;
\a
例:
$ print -n '\e]2;My xterm title\a'
タイトルを設定します
My xterm title
動的タイトルを簡単に設定するには、precmd
および preexec
フック関数でタイトルを設定します。使用可能なフック関数のリストとその説明については、zshmisc(1) § Hook Functions を参照してください。
さらに print-P
を使うと、Zsh のプロンプトエスケープを利用することができます。
~/.zshrc
autoload -Uz add-zsh-hook function xterm_title_precmd () { print -Pn -- '\e]2;%n@%m %~\a' [[ "$TERM" == 'screen'* ]] && print -Pn -- '\e_\005{g}%n\005{-}@\005{m}%m\005{-} \005{B}%~\005{-}\e\\' } function xterm_title_preexec () { print -Pn -- '\e]2;%n@%m %~ %# ' && print -n -- "${(q)1}\a" [[ "$TERM" == 'screen'* ]] && { print -Pn -- '\e_\005{g}%n\005{-}@\005{m}%m\005{-} \005{B}%~\005{-} %# ' && print -n -- "${(q)1}\e\\"; } } if [[ "$TERM" == (Eterm*|alacritty*|aterm*|gnome*|konsole*|kterm*|putty*|rxvt*|screen*|tmux*|xterm*) ]]; then add-zsh-hook -Uz precmd xterm_title_precmd add-zsh-hook -Uz preexec xterm_title_preexec fi
ターミナルエミュレータのタブのタイトル
一部のターミナルエミュレータおよびマルチプレクサは、タブのタイトルの設定をサポートしています。エスケープシーケンスは端末によって異なります。
ターミナル | エスケープシーケンス | 説明 |
---|---|---|
GNU Screen | \ek \e\\
|
Screen' ウィンドウタイトル (%t ).
|
Konsole | \e]30; \a
|
Konsole' タブタイトル. |
シェル環境の検出
シェル環境を検出するテストについては、a repository about shell environment detection を参照してください。これには、ログイン/対話シェル、 Xorg セッション、TTY、および SSH セッションが含まれます。
/dev/tcp equivalent: ztcp
zsh/net/tcp
モジュールを使用します。
$ zmodload zsh/net/tcp
TCP 接続を確立できるようになりました。
$ ztcp example.com 80
コマンドラインの一部でシェルを終了するショートカット
デフォルトでは、コマンドラインがいっぱいになっても Ctrl+d
はシェルを閉じません、次のように修正します。
.zshrc
exit_zsh() { exit } zle -N exit_zsh bindkey '^D' exit_zsh
pacman -F "command not found" ハンドラー
pacman には、あるファイルを含むパッケージを検索する機能があります。以下の command-not-found ハンドラは、不明なコマンドが実行されたときに、pacman を直接使用してマッチするパッケージを検索します。
~/.zshrc
... function command_not_found_handler { local purple='\e[1;35m' bright='\e[0;1m' green='\e[1;32m' reset='\e[0m' printf 'zsh: command not found: %s\n' "$1" local entries=( ${(f)"$(/usr/bin/pacman -F --machinereadable -- "/usr/bin/$1")"} ) if (( ${#entries[@]} )) then printf "${bright}$1${reset} may be found in the following packages:\n" local pkg for entry in "${entries[@]}" do # (repo package version file) local fields=( ${(0)entry} ) if [[ "$pkg" != "${fields[2]}" ]] then printf "${purple}%s/${bright}%s ${green}%s${reset}\n" "${fields[1]}" "${fields[2]}" "${fields[3]}" fi printf ' /%s\n' "${fields[4]}" pkg="${fields[2]}" done fi return 127 } ...
pkgfile を使う代替としては、#pkgfile の "command not found" ハンドラー を見てください。
キーバインドを使ってバックバッファをクリアする
デフォルトでは、画面をクリアするキーバインドは、ほとんどのターミナルエミュレータでバックバッファ (上にスクロールしないと見えない部分) をクリアしません。この問題の解決策とhしては:
~/.zshrc
... function clear-screen-and-scrollback() { echoti civis >"$TTY" printf '%b' '\e[H\e[2J' >"$TTY" zle .reset-prompt zle -R printf '%b' '\e[3J' >"$TTY" echoti cnorm >"$TTY" } zle -N clear-screen-and-scrollback bindkey '^L' clear-screen-and-scrollback ...
サードパーティ拡張
設定フレームワーク
- oh-my-zsh — Zsh の設定を管理するためのコミュニティ運営の人気なフレームワークです。たくさんの便利な関数、ヘルパー、プラグイン、テーマをバンドルしています。
- Prezto — Zsh 用の設定フレームワークです。モジュールが同梱されており、適切なデフォルト、エイリアス、関数、オートコンプリート、プロンプトテーマでコマンドラインインターフェイス環境を充実させることができます。
- ZI — Zsh Unix シェルにおけるスイスアーミーナイフです。
- https://github.com/z-shell/zi || パッケージが存在しないか AUR で検索
- ZIM — 驚異的なスピードとモジュール式拡張機能の付いた設定フレームワークです。Zim はとても簡単にカスタマイズでき、スピードと機能性を犠牲にせず、モジュールと機能の豊富なセットが付属しています。
プラグインマネージャー
- Antidote — レガシーな Antibody プラグインマネージャの完全な Zsh 実装です。
- zinit (以前の名称は "zplugin") — 柔軟な Zsh プラグインマネージャ。クリーンな fpath、レポート、補完管理、ターボモードが付いています。復活しました
- Antigen — Zsh 用のプラグインマネージャ。oh-my-zsh と vundle にインスパイアされました。放棄されています
- zgen — Zsh 用の軽量でシンプルなプラグインマネージャ。放棄されています
- zplug — Zsh 用の次世代プラグインマネージャ。放棄されています
Fish のようなシンタックスハイライトとオートサジェスト
Fish には強力なシェルシンタックスハイライトとオートサジェスト機能があります。これらの機能を zsh で使うには、zsh-syntax-highlighting と zsh-autosuggestions をインストールし、提供されたスクリプトの一方または両方を zshrc から source してください:
source /usr/share/zsh/plugins/zsh-syntax-highlighting/zsh-syntax-highlighting.zsh source /usr/share/zsh/plugins/zsh-autosuggestions/zsh-autosuggestions.zsh
pkgfile の "command not found" ハンドラー
pkgfile には、command_not_found_handler
関数を提供する Zsh スクリプトファイルが含まれています。この関数は、認識されないコマンドが入力されたときに、pkgfile のデータベースを自動的に検索します。
この関数を有効化するには、そのスクリプトを source する必要があります。例えば:
~/.zshrc
source /usr/share/doc/pkgfile/command-not-found.zsh
pacman のネイティブな機能を使う代替は、#pacman -F "command not found" ハンドラー を見てください。
参照
- Wikipedia:ja:Z Shell
- Z Shell イントロダクション
- ZSH ユーザガイド
- Z Shell マニュアル (このページとは形式が異なります)
- Zsh FAQ
- Zsh Wiki
- zsh-lovers(1) (zsh-lovers パッケージとして利用可能)
- Gentoo: Zsh/Guide
- Bash2Zsh Reference Card