「マイクロコード」の版間の差分

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{{Warning|1=マイクロコードの遅延ロードは危険であるとみなされています(Linux 5.19 以降で遅延ロードを行うとカーネルに汚染マークが付きます)。[https://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/torvalds/linux.git/commit/?id=9784edd73a08ea08d0ce5606e1f0f729df688c59]}}
 
{{Warning|1=マイクロコードの遅延ロードは危険であるとみなされています(Linux 5.19 以降で遅延ロードを行うとカーネルに汚染マークが付きます)。[https://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/torvalds/linux.git/commit/?id=9784edd73a08ea08d0ce5606e1f0f729df688c59]}}
   
マイクロコードアップデートの遅延ロードはシステム起動後に行われます。{{ic|/usr/lib/firmware/amd-ucode/}} と {{ic|/usr/lib/firmware/intel-ucode/}} 内のファイルが使用されます。Linux 5.19 以降で遅延ロードを行うには、{{ic|1=CONFIG_MICROCODE_LATE_LOADING=y}} でカーネルをビルドする必要があります。
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マイクロコードアップデートの遅延ロードはシステム起動し終わった後に行われます。その時、{{ic|/usr/lib/firmware/amd-ucode/}} と {{ic|/usr/lib/firmware/intel-ucode/}} にあるファイルが使用されます。
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遅延ロードを行うには、{{ic|1=CONFIG_MICROCODE_LATE_LOADING=y}} でビルドされたカーネルが必要です。現時点では、Arch の[[カーネル#公式サポートカーネル|公式サポートカーネル]]はこのフラグが有効化されていません。[https://gitlab.archlinux.org/archlinux/packaging/packages/linux/-/blob/8d50b29ca6b927096ecf678cec193fc230b447cd/config#L462]
   
 
AMD プロセッサの場合、マイクロコードのアップデートファイルは {{Pkg|linux-firmware}} により提供されます。
 
AMD プロセッサの場合、マイクロコードのアップデートファイルは {{Pkg|linux-firmware}} により提供されます。
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* [https://gitlab.com/iucode-tool/iucode-tool iucode-tool GitLab プロジェクト]
 
* [https://gitlab.com/iucode-tool/iucode-tool iucode-tool GitLab プロジェクト]
   
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2023年11月23日 (木) 16:50時点における版

プロセッサの製造者はプロセッサマイクロコードに安定性とセキュリティのアップデートをリリースしています。そのようなアップデートには、システムの安定性に深く関わるバグフィックスが含まれています。これがないと、追跡困難な疑わしいクラッシュや予期しないシステム停止を引き起こす場合があります。

AMD や Intel CPU を持つすべてのユーザは、システムの安定性を確保するためにマイクロコードのアップデートをインストールすべきです。仮想マシンやコンテナ内では、マイクロコードのアップデートはゲストシステムではなく、ホストに属します。

マイクロコードをロードする

通常、マイクロコードのアップデートはマザーボードのファームウェアに同梱されており、ファームウェアの初期化中に適用されます。しかし、OEM はファームウェアのアップデートをタイムリーにリリースしないかもしれない上、古いシステムでは新しいファームウェアアップデートは全くリリースされないので、起動中に CPU マイクロコードアップデートを適用する機能が Linux カーネルに追加されました。Linux マイクロコードローダは3つの方法をサポートします:

  1. 組み込みマイクロコード は、カーネルに組み込んでコンパイルし、早期ローダ (early loader) を使って適用することができます。
  2. 早期ロード は、起動中の非常に早い段階 (initramfs ステージよりも前) でマイクロコードをアップデートします。遅延ロードよりもこちらが推奨されます。Intel の Haswell や Broadwell プロセッサファミリのように CPU に深刻なハードウェアバグが存在する場合、早期ロードが必須です。
  3. 遅延ロード (危険) は、起動後にマイクロコードをアップデートします。CPU が欠陥のある命令の使用をすでに試みたかもしれないので、これでは遅すぎる可能性があります。「早期ロード」をすでに使用している場合でも、「遅延ロード」を使用して再起動せずに新しいマイクロコードのアップデートを適用できます。

更新されたマイクロコードを取得するには、プロセッサに応じて以下のいずれかのパッケージをインストールしてください:

initramfs に埋め込まれたマイクロコード

マイクロコード cpio を initramfs 内部に前置することができます。dracut など (dracut.conf(5) § DESCRIPTION を参照) の一部の initramfs ジェネレータは、これをデフォルトで行います。これにより、#早期ロード#遅延ロード は不要になります。しかし、Arch Linux はデフォルトで初期 RAM ディスク (initramfs) の生成に mkinitcpio を使用し、mkinitcpio はこの方法をサポートしていません。しかし、UEFI スタブを用いたマイクロコードの読み込みはサポートしています: #Unified カーネルイメージ を見てください。

早期ロード

マイクロコードは、カーネルに組み込まない場合、早期ローダ (early loader) を使って読み込まなければなりません。Unified カーネルイメージの一部として、あるいは ブートローダーを使って初期 RAM ディスクイメージとしてローダに渡すことができます。

ユーザの初期ブート構成は様々なので、マイクロコードのアップデートは Arch のデフォルトの設定では自動的にトリガーされないことに注意してください。

Unified カーネルイメージ

Unified カーネルイメージ の記事で、単一ファイルのイメージにマイクロコードを埋め込む方法を見てください。

初期 RAM ディスクイメージ

あるいは、マイクロコードのアップデートを有効にするには、/boot/amd-ucode.img または /boot/intel-ucode.imgブートローダーの設定ファイルの 一番目の初期 RAM ディスクイメージ として追加しなければなりません。これは、通常の初期 RAM ディスクイメージファイルよりも前です。一般的なブートローダの場合における手順は以下を見てください。

以下のセクションでは cpu_manufacturer の部分をあなたの CPU の製造業者名に置き換えてください、例: amdintel

ヒント: リムーバブルドライブ上の Arch Linux をこれらのプロセッサの両方で動かす可能性がある場合、両方のパッケージをインストールし両方のマイクロコードファイルを initrd としてブートローダの設定に追加してください。initramfs イメージよりも前に指定していればファイルの順番は関係ありません。
カスタムカーネルでマイクロコードの早期ロードを有効化

カスタムカーネルでロードを行うには、"CPU microcode loading support" をカーネルに組み込む必要があります。モジュールとしてコンパイルしても動作しません。"Early load microcode" プロンプトが有効になるので "Y" に設定してください。

CONFIG_BLK_DEV_INITRD=Y
CONFIG_MICROCODE=y
CONFIG_MICROCODE_INTEL=Y
CONFIG_MICROCODE_AMD=y
GRUB

grub-mkconfig はマイクロコードのアップデートを自動的に検出し、GRUB を適切に設定します。マイクロコードのインストール後に以下を実行して GRUB 設定ファイルを再生成し、マイクロコードアップデートのロードを有効化してください:

# grub-mkconfig -o /boot/grub/grub.cfg

あるいは、GRUB 設定ファイルを手動で管理しているユーザは、以下のように /boot/cpu_manufacturer-ucode.img を追加できます(別のパーティションに /boot がある場合は /cpu_manufacturer-ucode.img):

/boot/grub/grub.cfg
...
echo 'Loading initial ramdisk'
initrd	/boot/cpu_manufacturer-ucode.img /boot/initramfs-linux.img
...

それぞれのメニュエントリに対してこれを行ってください。

systemd-boot

以下のように、マイクロコードを読み込むオプションを初期 RAM ディスクより前に使用してください:

/boot/loader/entries/entry.conf
title   Arch Linux
linux   /vmlinuz-linux
initrd  /cpu_manufacturer-ucode.img
initrd  /initramfs-linux.img
...

最新のマイクロコード cpu_manufacturer-ucode.img は起動時に EFI システムパーティション (ESP) に存在していなければなりません。amd-ucode または intel-ucode を更新したときはマイクロコードが更新されるように /boot に ESP をマウントしてください。もしくは、マイクロコードパッケージのアップデートがあるたびに ESP に /boot/cpu_manufacturer-ucode.img をコピーしてください。

EFISTUB

2つの initrd= オプションを末尾に追加してください:

initrd=\cpu_manufacturer-ucode.img initrd=\initramfs-linux.img
rEFInd
ヒント: 以前に initrd カーネルパラメータを指定しなかったユーザは、複数の initrd パラメータを渡せるようにするために rEFInd#設定 で説明されている手順に従う必要があります。

/boot/refind_linux.conf のブートオプションを編集し、マイクロコードイメージをロードするための initrd= オプションを最初の initrd 引数として追加してください。/boot 内のファイルが別のパーティションの直下にあるかどうかに応じて、initrd=boot\cpu_manufacturer-ucode.imginitrd=cpu_manufacturer-ucode.img のどちらかを使ってください。

マイクロコードは、ブートオプションのリストの中で最初に宣言された initramfs でなければなりません。例えば:

"Boot using default options"  "root=PARTUUID=XXXXXXXX-XXXX-XXXX-XXXX-XXXXXXXXXXXX rw add_efi_memmap initrd=boot\cpu_manufacturer-ucode.img initrd=boot\initramfs-%v.img"
手動でブートオプションを記述する

手動esp/EFI/refind/refind.conf にカーネルを定義している場合は、initrd= パラメータを追加して、ブートパーティション内の適切なパスに設定する必要があります。このパラメータは options 行の一部である必要があり、設定のメインの部分ではありません。例:

options  "root=PARTUUID=XXXXXXXX-XXXX-XXXX-XXXX-XXXXXXXXXXXX rw add_efi_memmap initrd=boot\cpu_manufacturer-ucode.img"
Syslinux
ノート: initrd ファイルの cpu_manufacturer-ucode.imginitramfs-linux の間に空白は挟まないで下さい。INITRD の行は以下の記述そのままに編集しなければなりません。

/boot/syslinux/syslinux.cfg で複数の initrd をカンマで区切って指定できます:

LABEL arch
    MENU LABEL Arch Linux
    LINUX ../vmlinuz-linux
    INITRD ../cpu_manufacturer-ucode.img,../initramfs-linux.img
...
LILO

LILO などの旧式のブートローダーは複数の initrd イメージをサポートしていません。そのような場合 cpu_manufacturer-ucode.imginitramfs-linux.img をひとつのイメージにまとめる必要があります。

警告: カーネルをアップデートするたびに毎回イメージをマージして再生成する必要があります。
ノート: イメージの順番は重要です。オリジナルのイメージである initramfs-linuxcpu_manufacturer-ucode.img イメージよりも先に来るように結合する必要があります。

ふたつのイメージを initramfs-merged.img という名前のイメージにマージするには、以下のコマンドを使用:

# cat /boot/cpu_manufacturer-ucode.img /boot/initramfs-linux.img > /boot/initramfs-merged.img

マージできたら /etc/lilo.conf を編集して新しいイメージをロードします:

...
initrd=/boot/initramfs-merged.img
...

root で lilo を実行してください:

# lilo
Limine

Limine においては、limine.cfg ファイル内の MODULE_PATH オプションにマイクロコードへのパスを追加するだけで良いです。以下は例です:

limine.cfg
DEFAULT_ENTRY=1
TIMEOUT=3

:Arch
    COMMENT=Arch Linux

    PROTOCOL=linux
    KERNEL_PATH=boot:///vmlinuz-linux
    CMDLINE=root=UUID=c0748521-eca9-4f38-989c-43811b6e39a1 rw loglevel=3
    MODULE_PATH=boot:///cpu_manufacturer-ucode.img
    MODULE_PATH=boot:///initramfs-linux.img

遅延ロード

警告: マイクロコードの遅延ロードは危険であるとみなされています(Linux 5.19 以降で遅延ロードを行うとカーネルに汚染マークが付きます)。[1]

マイクロコードアップデートの遅延ロードは、システムが起動し終わった後に行われます。その時、/usr/lib/firmware/amd-ucode//usr/lib/firmware/intel-ucode/ にあるファイルが使用されます。

遅延ロードを行うには、CONFIG_MICROCODE_LATE_LOADING=y でビルドされたカーネルが必要です。現時点では、Arch の公式サポートカーネルはこのフラグが有効化されていません。[2]

AMD プロセッサの場合、マイクロコードのアップデートファイルは linux-firmware により提供されます。

Intel プロセッサの場合、マイクロコードのアップデートファイルが含まれるパッケージはありません (FS#59841)。遅延ロードするには Intel が提供しているアーカイブから手動で intel-ucode/ を抽出する必要があります。

マイクロコードのアップデートの遅延ロード

実行中のシステムで手動でマイクロコードをアップデートするには (例: /usr/lib/firmware/amd-ucode//usr/lib/firmware/intel-ucode/ 内のマイクロコードファイルをアップデートした後に):

# echo 1 > /sys/devices/system/cpu/microcode/reload

これにより、システムを再起動せずに新しいマイクロコードのアップデートを適用できます。

起動時にマイクロコードのアップデートがされたか確認する

マイクロコードがアップデートされたかどうか確認するには journalctl でカーネルメッセージを確認してください:

# journalctl -k --grep=microcode

Intel が載っているシステムでは、起動時に以下のような表示がされます(以下ではマイクロコードが非常に早い段階でアップデートされていることを示しています):

microcode: microcode updated early to revision 0xde, date = 2020-05-18
microcode: sig=0x806ec, pf=0x80, revision=0xde
microcode: Microcode Update Driver: v2.2.
ノート: 表示される日付は intel-ucode パッケージのバージョンとは対応しません。Intel がマイクロコードのアップデートを行った最後の日付が表示されます。

最新のハードウェアの場合、CPU のマイクロコードアップデートが存在しないという可能性も考えられます。そのときは、以下のような出力がなされます:

microcode: sig=0x806ec, pf=0x80, revision=0xde
microcode: Microcode Update Driver: v2.2.

AMD 環境でマイクロコードを早期ロードしている場合、以下のように出力されます:

microcode: microcode updated early to new patch_level=0x0700010f
microcode: CPU0: patch_level=0x0700010f
microcode: CPU1: patch_level=0x0700010f
microcode: CPU2: patch_level=0x0700010f
microcode: CPU3: patch_level=0x0700010f
microcode: Microcode Update Driver: v2.2.

AMD 環境で起動後にマイクロコードをアップデートしている場合、古いマイクロコードのバージョンが表示されてからマイクロコードがリロードされ、新しいマイクロコードのバージョンが表示されます。例:

microcode: CPU0: patch_level=0x0700010b
microcode: CPU1: patch_level=0x0700010b
microcode: CPU2: patch_level=0x0700010b
microcode: CPU3: patch_level=0x0700010b
microcode: Microcode Update Driver: v2.2.
microcode: CPU2: new patch_level=0x0700010f
microcode: CPU0: new patch_level=0x0700010f
microcode: CPU1: new patch_level=0x0700010f
microcode: CPU3: new patch_level=0x0700010f
x86/CPU: CPU features have changed after loading microcode, but might not take effect.

マイクロコードのアップデートができる CPU

特定のモデルがサポートされているのかどうかは以下のリンクから Intel のサイトや AMD の Gentoo Wiki サイトで確認することができます:

マイクロコードのアップデートが必要かどうか確認する

iucode-tool を使って、使用している CPU のマイクロコードイメージが intel-ucode.img に含まれているかどうか確認できます。

  1. intel-ucodeインストール (アップデートがあるかどうか確認するのに initrd の変更は必要ありません)
  2. iucode-toolインストール
  3. cpuid カーネルモジュールをロード:
    # modprobe cpuid
  4. マイクロコードイメージを展開して cpuid で検索:
    # bsdtar -Oxf /boot/intel-ucode.img | iucode_tool -tb -lS -
  5. アップデートが存在する場合は、selected microcodes の下に表示されます。
  6. メーカーの BIOS にマイクロコードが既に含まれていてロードされたことが dmesg に表示されていない可能性もあります。grep microcode /proc/cpuinfo を実行して現在のマイクロコードを比較してください。

参照

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