「Dm-crypt/システム設定」の版間の差分

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2024年6月8日 (土) 13:47時点における最新版

ヒント:

初期ユーザ空間でロックを解除する

暗号化されているルートボリュームを起動するには、初期ユーザ空間でそのボリュームのロックを解除するために必要なツールが initramfs に含まれている必要があります。ロックを解除するべきボリュームは、たいていカーネルパラメータで渡されます。

以下のセクションでは、mkinitcpio の設定方法と、必要なカーネルパラメータのリストを載せています。

mkinitcpio

場合にもよりますが、以下の mkinitcpio フックの一部は有効化しておく必要があります:

busybox systemd ユースケース
encrypt sd-encrypt ルートパーティションが暗号化されている場合や、何らかの暗号化されているパーティションがルートパーティションのマウントよりも前に必要になる場合に必要です。その他の場合においては必要ありません。/etc/crypttab などのシステム初期化スクリプトが、ルート以外のパーティションのロックを解除してくれるからです。このフックは udevsystemd フックよりも後に配置しなければなりません。
keyboard 初期ユーザ空間でキーボードを動作させるために必要です。
ヒント: 起動するたびにハードウェアの構成が異なるようなシステム (例えば、外部キーボードと内部キーボードのあるノート PC やヘッドレスシステム) では、このフックを autodetect より前に配置して、全てのキーボードドライバを initramfs に含めると便利です。そうしないと、initramfs イメージの生成時に外部キーボードが接続されていなければ、そのキーボードは初期ユーザ空間では動作しなくなってしまいます。
keymap sd-vconsole 暗号化パスワードの入力において US キーマップ以外のサポートを提供します。このフックは、encrypt フックよりも前に配置しなければなりません。さもないと、暗号化パスワードの入力にデフォルトの US キーマップしか使えません。キーマップは /etc/vconsole.conf で設定してください (Linux コンソール/キーボード設定#永続的な設定 を参照してください)。
consolefont 初期ユーザ空間で代替のコンソールフォントをロードします。フォントは /etc/vconsole.conf で設定してください (Linux コンソール/キーボード設定#永続的な設定 を参照してください)。

必要なその他のフックは、システムのインストールに関するその他のマニュアルから明らかなはずです。

ノート: /etc/mkinitcpio.conf に変更を加えたときは initramfs を再生成するのを忘れないでください。

encrypt フックを使用する典型的な /etc/mkinitcpio.conf の設定としては、以下のようになります:

/etc/mkinitcpio.conf
...
HOOKS=(base udev autodetect modconf kms keyboard keymap consolefont block encrypt lvm2 filesystems fsck)
...

sd-encrypt フックを使用する、systemd ベースの initramfs の設定は:

/etc/mkinitcpio.conf
...
HOOKS=(base systemd autodetect modconf kms keyboard sd-vconsole block sd-encrypt lvm2 filesystems fsck)
...

カーネルパラメータ

必要なカーネルパラメータは、encrypt フックと sd-encrypt フックのどちらを使うかによります。rootresume は両方において同じように指定します。

ヒント: sd-encrypt フックと GPT パーティションの自動マウントを使用する場合、これらのカーネルパラメータの指定は省略できます。dm-crypt/システム全体の暗号化#ブートローダーの設定 を参照してください。

root

root= パラメータでは、実際の (暗号化の解除された) ルートファイルシステムの device を指定します:

root=device
  • ルートファイルシステムが、暗号化の解除されたデバイスファイル上に直接フォーマットされている場合、このパラメータの引数は /dev/mapper/dmname になります。
  • 最初に LVM がアクティブ化されていて、そこに暗号化されている論理ルートボリュームが存在している場合、引数は上記の形式と同じになります。
  • ルートファイルシステムが、完全に暗号化されている LVM の論理ボリューム内に存在している場合、デバイスマッパーは一般に root=/dev/volumegroup/logicalvolume となります。
ヒント: GRUB を使用していて、grub-mkconfiggrub.cfg を生成する場合は、root= パラメータを手動で指定する必要はありません。grub-mkconfig は、暗号化の解除されたルートファイルシステムの適切な UUID を検出し、その UUID を grub.cfg へ自動的に追加します。

resume

resume=device

encrypt フックを使う

ノート: sd-encrypt フックと比べて、encrypt フックは以下をサポートしていません:
cryptdevice

このパラメータでは、コールドブート時に暗号化済みルートファイルシステムを含むデバイスを指定します。これは、encrypt フックによってパースされ、どのデバイスに暗号化されているシステムが含まれているかを特定します:

cryptdevice=device:dmname:options
  • device は、暗号化されたデバイスのバッキングデバイスへのパスです。永続的なブロックデバイスの命名を使うことを強く推奨します。
  • dmname は復号後にデバイスに与えられる device-mapper の名前です。/dev/mapper/dmname として使用できるようになります。
  • options (オプション) は、コンマで区切られたオプションです (TRIM サポートなど用)。オプションが必要ないのであれば、このパラメータは省略してください (cryptdevice=device:dmname)。
  • LVM に暗号化されたルートが含まれる場合、最初に LVM が有効になって暗号化されたルートの論理ボリュームを含むボリュームグループが device として使用できるようになります。それからボリュームグループがルートにマッピングされます。パラメータは cryptdevice=/dev/vgname/lvname:dmname という形式になります。
ヒント: ソリッドステートドライブ (SSD) に対しては、Discard/TRIM のサポートを有効化すると良いかもしれません。
cryptkey
ヒント: パスフレーズを使用するのであれば、cryptkey= パラメータを手動で指定する必要はありません。その場合、ブート時にパスフレーズを入力するためのプロンプトが表示されます。

このパラメータはキーファイルの場所を指定します。encrypt フックがそのキーファイルを読み込んで cryptdevice のロックを解除するために必要です。(鍵がデフォルトの場所にある場合を除き (以下を参照)) キーファイルが特定のデバイスにファイルとして存在するか、特定の場所から始まるビットストリームであるか、initramfs にファイルとして存在するかによって、3つのパラメータセットを持つことができます。

デバイス内のファイルの場合、形式は以下のようになります:

cryptkey=device:fstype:path
  • device: キーが存在する raw ブロックデバイス。永続的なブロックデバイスの命名を使うことを強く推奨します。
  • fstype: device のファイルシステムのタイプ (auto を指定することも可)。
  • path: デバイス内のキーファイルの絶対パス。

例: cryptkey=LABEL=usbstick:vfat:/secretkey

デバイス上のビットストリームの場合、キーの場所は次のように指定されます:

For a bitstream on a device the key's location is specified with the following:

cryptkey=device:offset:size 

ここで、オフセットとサイズはバイト単位です。例えば、cryptkey=UUID=ZZZZZZZZ-ZZZZ-ZZZZ-ZZZZ-ZZZZZZZZZZZZ:0:512 は、デバイスの先頭にある 512 バイトのキーファイルを読み込みます。

ヒント: アクセスしたいデバイスのパスに : 文字が含まれている場合、その文字をバックスラッシュ \ でエスケープしなければなりません。そのような場合、cryptkey パラメータは次のような見た目になります: ID usb-123456-0:0 の USB キーの場合、cryptkey=/dev/disk/by-id/usb-123456-0\:0:0:512

Initramfs 内に含められているファイルの場合、形式は次のようになります[1]:

cryptkey=rootfs:path

例: cryptkey=rootfs:/secretkey

また、cryptkey が指定されない場合、デフォルトで (initramfs 内の) /crypto_keyfile.bin が指定されたものとみなされることに注意してください。[2]

dm-crypt/デバイスの暗号化#キーファイル も参照してください。

crypto

これは、dm-crypt プレーンモードのオプションを encrypt フックに渡すための固有のパラメータです。

以下の形式を取ります:

crypto=hash:cipher:keysize:offset:skip

引数は、cryptsetup のオプションと直接関連します。Dm-crypt/デバイスの暗号化#plain モードの暗号化オプション を参照してください。

plain のデフォルトオプションのみで暗号化されたディスクの場合、crypto 引数を指定しなければなりませんが、各エントリは空白のままにすることができます:

crypto=::::

引数の具体的な例は以下の通りです:

crypto=sha512:twofish-xts-plain64:512:0:

systemd-cryptsetup-generator を使う

systemd-cryptsetup-generator は、暗号化されたデバイスのロックを解除するために、カーネルパラメータのサブセットと /etc/crypttab を読み込む systemd ユニットジェネレータです。このジェネレータに関する詳細やサポートされている全オプションについては、systemd-cryptsetup-generator(8) man ページを参照してください。

systemd-cryptsetup-generator は、sd-encrypt mkinitcpio フックsystemd dracut モジュールが使用される initramfs の段階で実行されます。

以下では、systemd-cryptsetup-generator によって使用されるカーネルパラメータの一部を説明します。

ヒント:
  • /etc/crypttab.initramfs ファイルが存在する場合、/etc/crypttab として initramfs に追加されます。このファイルには、initramfs の段階でロックを解除する必要のあるデバイスを指定できます。このファイルの構文は #crypttab を参照してください。/etc/crypttab.initramfs が存在しない場合、/etc/crypttab は initramfs に追加されず、ロック解除可能なデバイスは以下に挙げるカーネルパラメータで指定する必要があります。
  • /etc/crypttab.initramfs では、rd.luks のように UUID 以外も使用できます。永続的なブロックデバイスの命名方法のうち任意のものを使用できます。
  • ブート中に入力されたパスワードは systemd-cryptsetup(8) によってカーネルのキーリングにキャッシュされます。なので、同じパスワードで複数のデバイスのロックを解除できる場合 (これには、ブート後にロックを解除される crypttab 内のデバイスも含まれます)、そのパスワードの入力は1度だけで済みます。
ノート:
  • rd.luks パラメータ群はすべて複数回指定することが可能であり、LUKS で暗号化された複数のボリュームのロックを解除できます。
  • rd.luks パラメータは LUKS デバイスのロック解除のみをサポートしています。Plain な dm-crypt デバイスのロックを解除するには、そのデバイスを /etc/crypttab.initramfs 内で指定しなければなりません。このファイルの構文は #crypttab を参照してください。
警告: /etc/crypttab/etc/crypttab.initramfs を使用していて、かつ luks.* パラメータか rd.luks.* パラメータも使用している場合、カーネルコマンドラインで指定されたデバイスしかアクティブ化されず、Not creating device 'devicename' because it was not specified on the kernel command line. というメッセージが表示されます。これは、luks.* パラメータや rd.luks.* パラメータが、crypttab のデバイスのうちどれをアクティブ化するかを制御するからです。/etc/crypttab 内の全デバイスをアクティブ化するには、luks.* パラメータを使用せず、rd.luks.* を使用してください。/etc/crypttab.initramfs 内の全デバイスをアクティブ化するには、luks.*rd.luks.* も使用しないでください。
rd.luks.uuid
ヒント: rd.luks.name を使用する場合、rd.luks.uuid は省略できます。
rd.luks.uuid=XXXXXXXX-XXXX-XXXX-XXXX-XXXXXXXXXXXX

ブート時に復号するデバイスの UUID をこのフラグで指定します。

デフォルトでは、マッピングされたデバイスは、/dev/mapper/luks-XXXXXXXX-XXXX-XXXX-XXXX-XXXXXXXXXXXX に配置されます。XXXXXXXX-XXXX-XXXX-XXXX-XXXXXXXXXXXX は LUKS パーティションの UUID です。

rd.luks.name
ヒント: このパラメータを使用する場合、rd.luks.uuid は省略できます。
rd.luks.name=XXXXXXXX-XXXX-XXXX-XXXX-XXXXXXXXXXXX=name

LUKS パーティションが開かれたあとにマッピングされるデバイスの名前を指定します。XXXXXXXX-XXXX-XXXX-XXXX-XXXXXXXXXXXX は LUKS パーティションの UUID です。これは、encryptcryptdevice の第2パラメータと等価です。

例えば、rd.luks.name=12345678-9abc-def0-1234-56789abcdef0=root を指定すると、UUID 12345678-9ABC-DEF0-1234-56789ABCDEF0 のロック解除された LUKS デバイスは、/dev/mapper/root に配置されます。

rd.luks.key

UUID で指定されたデバイスを復号する際に用いるパスワードファイルの場所を指定します。encrypt フックの cryptkey パラメータにあるようなデフォルトの場所は存在しません。

キーファイルが initramfs 内に含まれている場合は:

rd.luks.key=XXXXXXXX-XXXX-XXXX-XXXX-XXXXXXXXXXXX=/path/to/keyfile

あるいは

rd.luks.key=/path/to/keyfile
ヒント: キーファイルが /etc/cryptsetup-keys.d/name.key として含まれている場合、rd.luks.key パラメータは完全に省略できます。

キーファイルが他のデバイス上に存在する場合は:

rd.luks.key=XXXXXXXX-XXXX-XXXX-XXXX-XXXXXXXXXXXX=/path/to/keyfile:UUID=ZZZZZZZZ-ZZZZ-ZZZZ-ZZZZ-ZZZZZZZZZZZZ

UUID=ZZZZZZZZ-ZZZZ-ZZZZ-ZZZZ-ZZZZZZZZZZZZ の部分は、キーファイルの存在するデバイスの識別子に置き換えてください。

警告:
  • ファイルシステムの種類がルートファイルシステムのものと異なる場合は、そのファイルシステム用のカーネルモジュールを initramfs 内に含める必要があります。
  • rd.luks.key で他のデバイス上のキーファイルを指定した場合、デバイスが利用できない場合にデフォルトではパスワードプロンプトにフォールバックしません。パスワードプロンプトにフォールバックさせるには、rd.luks.optionskeyfile-timeout= を指定してください。例えば、10秒のタイムアウトを設定するには:
    rd.luks.options=XXXXXXXX-XXXX-XXXX-XXXX-XXXXXXXXXXXX=keyfile-timeout=10s
rd.luks.options
rd.luks.options=XXXXXXXX-XXXX-XXXX-XXXX-XXXXXXXXXXXX=options

または

rd.luks.options=options

UUID を指定した場合、そのデバイスに対してオプションを設定します。UUID を指定しなかった場合、他の場所 (例えば crypttab) で指定しなかった全デバイスに対してオプションを設定します。

このパラメータは crypttab のオプションフィールドに似ています。形式は同じです。オプションはコンマで区切られ、値のあるオプションは option=value のように指定します。これは、encryptcryptdevice の第3パラメータとほぼ等価です。

例えば:

rd.luks.options=timeout=10s,discard,password-echo=no,tries=1
タイムアウト

ブート中にパスワードを入力する際のタイムアウトを設定するオプションは2つあります:

  • rd.luks.options=timeout=mytimeout は、パスワードをクエリする際のタイムアウトを指定します。
  • rootflags=x-systemd.device-timeout=mytimeout は、rootfs デバイスが現れるまで systemd がどれだけ待つかを指定します (デフォルトは 90 秒)。

タイムアウトを両方無効化したい場合は、両方のタイムアウトをゼロに設定してください:

rd.luks.options=timeout=0 rootflags=x-systemd.device-timeout=0
Password echo

ユーザがパスワードを入力する際、systemd-cryptsetup はデフォルトで、入力された各文字をアスタリスク (*) として表示します。これは encrypt の挙動とは異なります (encrypt は何も表示しません)。何も表示させないようにするには、password-echo=no オプションを設定してください:

rd.luks.options=password-echo=no
Trusted Platform Module と FIDO2 鍵

あなたのシステム上で TPM2 チップが利用可能である、あるいは FIDO2 互換のセキュリティキーを使用している場合、パスワードやキーファイルを使わずにボリュームのロックを自動的に解除できます。

rd.luks.uuidrd.luks.name に加えて、以下を設定してください:

  • TPM2 チップの場合: rd.luks.options=XXXXXXXX-XXXX-XXXX-XXXX-XXXXXXXXXXXX=tpm2-device=auto
  • FIDO2 鍵の場合: rd.luks.options=XXXXXXXX-XXXX-XXXX-XXXX-XXXXXXXXXXXX=fido2-device=auto

あるいは、/etc/crypttab.initramfs を使えば、カーネルオプションで指定する必要はありません。

/etc/crypttab.initramfs
root  UUID=XXXXXXXX-XXXX-XXXX-XXXX-XXXXXXXXXXXX  none  tpm2-device=auto
ノート: /etc/crypttab.initramfs に変更を加えた後に initramfs を再生成することを忘れないでください。

ここでは、暗号化されたボリュームは root という名前で (/dev/mapper/root に) マウントされます。対象のストレージデバイスの UUID でマウントされ、パスワードは使われず、TPM2 デバイスからキーが取得されます。

TPM2 デバイスを使用するにはパスワードのフィールドに none を指定しなければならないことに注意してください。さもないと、与えられた値がパスワードか鍵として使用されてしまい、それがうまくいかなかった場合に TPM2 デバイスからキーを読み込もうとせずにパスワードプロンプトが表示してしまいます。

上記のようにデバイスを UUID で指定する場合、それが基底のストレージデバイス (つまり、暗号化されているデバイス自体) の UUID であるを確認してください (他の場所でルートファイルシステムとして指定される、復号さらた後のボリュームの UUID ではありません)。

rd.luks.data

デタッチされた LUKS ヘッダを使用する場合、暗号化されたデータが含まれるブロックデバイスを指定してください。ヘッダファイルの場所は rd.luks.options で指定する必要があります。

詳細や方法は dm-crypt/特記事項#Encrypted system using a detached LUKS header[リンク切れ: セクションが存在しません] を参照してください。

後期ユーザ空間でロックを解除する

crypttab

/etc/crypttab (encrypted device table) ファイルには、システムの起動時にロックを解除する暗号化デバイスのリストを記述します。fstab と似ています。このファイルを使うことで、暗号化したスワップデバイスやセカンダリファイルシステムを自動でマウントすることが可能です。

crypttabfstab より前に読み込まれます。dm-crypt コンテナを、その内部に存在するファイルシステムよりも前にアンロックできるようにするためです。crypttab は、システムの起動した後に読み込まれることに注意してください。よってこの方法は、ルートパーティションを暗号化する場合のように、mkinitcpio フックを使用して暗号化済みのパーティションのロックを解除する方法や、カーネルパラメータを使用して設定する方法の代わりではありません。crypttab は、systemd-cryptsetup-generator によってブート時に自動的に処理されます。

詳細は crypttab(5) を参照してください。以下にはいくつかの例を載せています。暗号化されたデバイスをマウントするために UUID を使用する方法については #ブート時にマウントする セクションを参照してください。

警告:
  • nofail オプションが指定された場合、パスワードの入力中にパスワード入力画面が消えてしまうことがあります。なので、nofail はキーファイルを使用する場合にのみ使ってください。
  • dm-crypt の plain モードのデバイスの場合、systemd-cryptsetup にそれらのデバイスを強制的に認識させるために、plain オプションを明示的に設定しなければなりません。systemd issue 442 を参照してください。
/etc/crypttab
# crypttab ファイルの例。フィールドは左から: 名前、バッキングデバイス、パスフレーズ、cryptsetup オプション。

# /dev/lvm/swap をマウントし、ブート毎に新しいキーで再暗号化する。
swap	/dev/lvm/swap	/dev/urandom	swap,cipher=aes-xts-plain64,size=256

# /dev/lvm/tmp を /dev/mapper/tmp としてマウントし、plain dm-crypt でランダムなパスフレーズを使うことで、アンマウント後にコンテンツを読めなくする。
tmp	/dev/lvm/tmp	/dev/urandom	tmp,cipher=aes-xts-plain64,size=256 

# LUKS を使って /dev/lvm/home を /dev/mapper/home としてマウントする。ブート時にパスフレーズのプロンプトを表示する。
home   /dev/lvm/home

# LUKS を使って /dev/sdb1 を /dev/mapper/backup としてマウントする。パスフレーズはファイルに保存してある。
backup /dev/sdb1       /home/alice/backup.key

# 唯一の利用可能な TPM を使って /dev/sdX のロックを解除し、myvolume に名称変更する。
myvolume	/dev/sdX	none	tpm2-device=auto

有効化した後にすぐ crypttab をテストするには、daemon-reload で systemd マネージャの設定を再読み込みし、新しく生成された systemd-cryptsetup@name.service開始してください。

# cryptsetup status name
/dev/mapper/name is active.
  type:    ...
  cipher:  ...
  keysize: ... bits
  key location: ...
  device:  /dev/sdxN
  sector size:  ...
  offset:  ... sectors
  size:    ... sectors
  mode:    ...
  flags:   ...

systemd-cryptsetup@name.service に関する他の情報は、#必要に応じてマウントする を参照してください。

ヒント: GPT と特定のパーティションタイプ UUID を使用する場合、systemd で一部のマウントポイントに対しては crypttab と fstab を使わなくても済みます。詳細は、systemd#GPT パーティションの自動マウント

ブート時にマウントする

暗号化されたドライブをブート時にマウントしたい場合、デバイスの UUID を /etc/crypttab に記述してください。UUID (パーティション) を lsblk -f コマンドで得て、それを crypttab 内に以下の形式で追加してください:

/etc/crypttab
externaldrive         UUID=2f9a8428-ac69-478a-88a2-4aa458565431        none    timeout=180

最初のパラメータは、暗号化されたドライブに使用するデバイスマッパーの名前です。自由に指定してください。none オプションは、起動中にパーティションのロックを解除するためのパスフレーズを入力するプロンプトをトリガーします。timeout オプションは、ブート時に復号パスワードを入力するタイムアウトを秒単位で定義します。

ヒント: パスワードプロンプトに入力されたパスワードは、systemd-cryptsetup(8) によってカーネルのキーリング内にキャッシュされます (sd-encrypt フックを使用する場合、initramfs の段階で入力されたパスワードも該当します)。crypttab に記述されているデバイスが、以前入力したパスワードを使用する場合、3番目のパラメータは none にすることができ、キャッシュされているパスワードが自動的に使用されます。
ノート: crypttab における timeout オプションは、暗号化されたデバイスのパスワードを入力することのできる時間だけを決定することを留意しておいてください。加えて systemd には、デバイスが利用可能になるまでの許容時間を決定するデフォルトのタイムアウト (デフォルトでは 90 秒) が存在し、これはパスワードのタイマーとは独立しています。その結果、crypttab において timeout オプションが 90 秒より大きい値に設定された場合 (あるいは、時間無制限を意味するデフォルトの 0 に設定した場合) でも、systemd は依然として、デバイスがアンロックされるまで最大 90 秒までしか待ちません。systemd がデバイスが利用可能になるまで待機する時間を変更するために、x-systemd.device-timeout (systemd.mount(5) を参照) を fstab 内で対象のデバイスに対して設定することができます。このとき、ブート時にマウントされるデバイスそれぞれに対して、crypttab における timeout オプションの値は、fstab における x-systemd.device-timeout の値と同じにすることが望ましいでしょう。
キーファイルでロックを解除する

セカンダリファイルシステムのキーファイルが、暗号化されたルートファイルシステム内に保存されている場合、キーファイルはシステムの電源が落ちている間は安全であり、crypttab を使ってブート中にキーファイルを自動的に読み込んでロックを解除することができます。例えば、UUID によって指定された crypt をアンロックするには:

/etc/crypttab
home-crypt    UUID=UUID-identifier    /etc/cryptsetup-keys.d/home-crypt.key
ヒント:
  • キーファイルが指定されなかった場合、systemd-cryptsetup(8) は自動的に /etc/cryptsetup-keys.d/name.key/run/cryptsetup-keys.d/name.key から読み込もうと試みます。[3]
  • --plain モードのブロックデバイスを使用したい場合、そのデバイスのロック解除に必要な暗号化オプションは /etc/crypttab 内に指定します。この場合、crypttab で説明した systemd の回避策を適用する必要があることに注意してください。

そして、(/etc/crypttab で定義した) デバイスマッパーの名前を使用して /etc/fstab 内にエントリを作成してください:

/etc/fstab
/dev/mapper/home-crypt        /home   ext4        defaults        0       2

/dev/mapper/externaldrive はユニークなパーティションマッピングによるものなので、UUID を使って指定する必要はありません。いかなる場合でも、ファイルシステムに対応するマッパーは、そのファイルシステムが存在しているパーティションとは異なる UUID を持っています。

スタックされたブロックデバイスをマウントする

また、この systemd ジェネレータは、スタックされたブロックデバイスをブート時に自動的に処理します。

例えば、RAID 環境を作成し、そこに cryptsetup を使い、暗号化されたブロックデバイス内にそれぞれのファイルシステムを持つ LVM 論理ボリュームを作成することができます:

$ lsblk -f
─sdXX                  linux_raid_member    
│ └─md0                 crypto_LUKS   
│   └─cryptedbackup     LVM2_member 
│     └─vgraid-lvraid   ext4              /mnt/backup
└─sdYY                  linux_raid_member    
  └─md0                 crypto_LUKS       
    └─cryptedbackup     LVM2_member 
      └─vgraid-lvraid   ext4              /mnt/backup

これは、ブート時にパスフレーズが要求し、自動的にマウントします。

対応する正しい crypttab (例えば crypto_LUKS デバイスの UUID) と fstab (/dev/vgraid/lvraid) エントリを指定すれば、/etc/crypttab の処理はルート以外のマウントにのみ適用されるので、mkinitcpio フック/設定を追加する必要がありません。例外として、mdadm_udev フックがすでに使われている場合 (例:ルートデバイス用) です。この場合、正しい root raid が最初に選ばれるように /etc/madadm.conf と initramfs を更新する必要があります。

必要に応じてマウントする

以下のコマンドを使用する代わりとして

# cryptsetup open UUID=... externaldrive

以下のように /etc/crypttab 内にエントリが存在する場合は、systemd-cryptsetup@externaldrive.service開始することができます:

/etc/crypttab
externaldrive UUID=... none noauto

この方法では、正確な crypttab オプションを覚えておく必要はありません。必要であれば、パスフレーズのプロンプトが表示されます。

対応するユニットファイルは systemd-cryptsetup-generator(8) によって自動的に生成されます。生成されたユニットファイルは全て以下のコマンドで一覧表示できます:

$ systemctl list-unit-files | grep systemd-cryptsetup

トラブルシューティング

システムがブート時に固まる/パスワードプロンプトが表示されない

Plymouth を使用する場合、適切なモジュール (Plymouth#mkinitcpio を参照) を使用するか、Plymouth を無効化してください。正しく設定しないと Plymouth によってパスワードプロンプトが隠れてしまい、システムを起動できなくなります。

キーボードやファイルシステム上のキーファイルをロック解除に利用できない

キーボードや、initramfs の生成時に存在しないファイルシステム上のキーファイルを使って LUKS デバイスのロックを解除する場合、対応するモジュールを mkinitcpio の MODULES 配列に追加する必要があるかもしれません。この作業は、キーボードが USB ハブ経由で接続されている場合にも必要かもしれません。この問題に関する詳細は mkinitcpio#MODULES を参照してください。追加するべきキーボードやファイルシステムのモジュール名を探し当てる方法については mkinitcpio/Initramfs の最小化#モジュールの選別 を参照してください

一般に、initramfs の生成時に PC に接続されていないキーボードに関しては、autodetect フックより前に keyboard を配置する必要があります。さもないと、現在接続されているハードウェアに必要なモジュールしか initramfs に追加されません。mkinitcpio#通常のフック を参照してください。

翻訳ステータス: このページは en:dm-crypt/System configuration の翻訳バージョンです。最後の翻訳日は 2023-09-04 です。もし英語版に 変更 があれば、翻訳の同期を手伝うことができます。