Lenovo ThinkPad X1 Extreme
デバイス | 状態 | モジュール |
Intel UHD 630 Graphics | 動作 | i965 |
Nvidia GTX 1050 Ti (Max-Q) | 動作 | nvidia |
Intel I219-V Ethernet | 動作 | e1000e |
Intel 9560 ワイヤレス | 動作 | iwlwifi |
Realtek ALC285 オーディオ | 動作 | snd_hda_intel |
Synaptics タッチパッド | 動作 | synaptics + libinput |
SunplusIT カメラ | 動作 | uvcvideo |
カードリーダー | 動作 | xhci_hcd |
Intel 9560 Bluetooth | 動作 | btusb |
Intel JHL7540 Thunderbolt | 動作 | thunderbolt |
Synaptics 指紋リーダー | 未動作 |
ThinkPad X1 Extreme は Lenovo から2018年度の ThinkPad X ラインナップとして発売された薄型・軽量の 15.6 インチワークステーション・マルチメディアノートパソコンです。
このページでは X1 Extreme で Arch Linux を動作させるときの詳細を扱います。ノートパソコン一般の情報についてはノートパソコンを、他の ThinkPad ノートパソコンについては ThinkPad を見てください。Ubuntu certification page も有益です。
ハードウェア互換性
BIOS アップデート
Arch Linux 環境で必須というわけではありませんが、ノートパソコンを使うときは基本的に BIOS アップデートをすることが強く推奨されます。初期バージョンの 1.13 には複数のバグが存在し、ノートパソコンが文鎮化する可能性があります: Reddit thread discussing the issue; another Reddit thread discussing a different bricking issue。
BIOS アップデートは fwupd や Windows の Lenovo Vantage アプリケーション、あるいは Lenovo のウェブサイト から行うことができます。
最新のバージョンは v1.31 であって (2020年6月現在)、これが推奨されます。断わりのない限り、このページの情報は最新のBIOSであることを前提としています。
ハイブリッドグラフィック
ハイブリッドグラフィックを実現するには下記に示すいくつかの方法があります。
USB-C アダプタや Thunderbolt ドックを繋いだ時に生成されるディスプレイポートと、 HDMI ポートは Nvidia の dGPU に配線されています。
BIOSの設定では 内蔵の Intel GPU を無効化して、全て Nvidia GPU 上で実行することができます。 Nvidia GPU を BIOS の設定から無効化することはできず、 Intel GPU を使う場合にはランタイム電源管理ツールを有効にすることを強く推奨します。
PRIME offloading
nvidia-prime パッケージが特別な設定なしで動きます。
optimus-manager
optimus-managerAUR を使うことで、システム全体で GPU のスイッチングを手軽に行えます。 Nvidia GPU が使われていない場合に無効化するためのランタイム電源管理もサポートしています。
Bumblebee
次に示す設定例は、うまく動いていました。
/etc/X11/xorg.conf.d/20-intel.conf
Section "Device" Identifier "intelgpu0" Driver "intel" EndSection
/etc/bumblebee/xorg.conf.nvidia
Section "ServerLayout" Identifier "Layout0" Option "AutoAddDevices" "true" Option "AutoAddGPU" "false" EndSection Section "Device" Identifier "DiscreteNvidia" Driver "nvidia" VendorName "NVIDIA Corporation" Option "ProbeAllGpus" "false" Option "AllowEmptyInitialConfiguration" EndSection Section "Screen" Identifier "Screen0" Device "DiscreteNVidia" EndSection
外部ディスプレイは intel-virtual-output
から使えます。
詳細は Bumblebee#NVIDIA のチップに出力が接続されている場合を見てください。
Nvidia GPU のみを使う
nvidia-xconfig
が生成するデフォルトの設定を使うことで、HDMI 出力も含めて全ての機能が動作します。
Thunderbolt
Thunderbolt は特に設定をしなくても動作します (ThinkPad Thunderbolt 3 ドックで確認)。セキュリティについて詳しくは Thunderbolt を見てください。
ファン制御
現在の thinkpad_acpi
では右側のファンは制御できません。右側のファンへの対応は Linux カーネル 5.8 で実装される予定で、2020年8月にリリースされる予定です。現在はリンク先の変更をカーネル 5.7 に適用することで可能です。
他のハードウェア
タッチパッドの操作性が、カーネルメッセージが示すように "intertouch" を有効化することで、大幅に改善されます。これは、カーネルコマンドラインに psmouse.synaptics_intertouch=1
を加えるか、 modprobeのエントリに次のように加えることで可能です。
/etc/modprobe.d/psmouse.conf
options psmouse synaptics_intertouch=1
この設定は8月にリリース予定のカーネル 5.8 ではデフォルト設定となるはずです。
ウェブカメラは何も設定なくても動作しますが、スライダーの状態に関係なく常に接続状態として認識されます (保護スライダーを閉じているとき Windows では「非接続」画像が表示されます)。ただし、スライダーを閉じているとき、カメラの画像は完全に黒画像となります。
指紋スキャナはいまのところ libfprint でサポートされていません。リバースエンジニアリングによる開発が こちら で進めれていますが、停滞しているようです。上流の libfprint バグが こちら から確認できます。
その他のハードウェアは全て問題なく動作します。
ソフトウェアの設定
Linux における Dolby Atmos エフェクト
Windows 環境における Dolby Atmos と同じスピーカーの音質・エフェクトを得るには、PulseAudio と pulseeffects をインストール・設定してください。Dolby Atmos プリセットを JackHack96 の Github からダウンロードして PulseEffects GUI の "Convolver" タブで有効化できます。
マイクのノイズ除去
PulseAudio の エコー除去・ノイズキャンセルを有効にする がノイズ除去に使えます。/etc/pulse/default.pa
に次を追加することで可能です。"mic_geometry" が X1 Extreme 特有の設定です。
/etc/pulse/default.pa
### Enable Echo/Noise-Cancellation load-module module-echo-cancel use_master_format=1 aec_method=webrtc aec_args="beamforming=1 mic_geometry=-0.0257,0,0,0.0257,0,0" source_name=echoCancel_source sink_name=echoCancel_sink set-default-source echoCancel_source set-default-sink echoCancel_sink
バッテリー閾値
バッテリーの充電の閾値は sysfs ノードの /sys/class/power_supply/BAT0/charge_start_threshold
と/sys/class/power_supply/BAT0/charge_stop_threshold
から可能です。
または TLP を使うこともできて、バッテリーの起動・停止の閾値を設定するには、acpi_call をインストールして /etc/default/tlp
を以下のように編集します:
START_CHARGE_THRESH_BAT0=80 STOP_CHARGE_THRESH_BAT0=90
CPU スロットリングの設定
s-tui を使ってストレステストを行うと CPU の電源の上限が 38W となっていることがわかります。CPU の温度は 81C に保たれるため i7-8750H では最大周波数は約 2850 MHz となります。「パフォーマンス」モードでの Windows が設定する上限は高く、44W/95C となります。次の2つの方法でもって電源の上限を設定することが可能です。
sysfs を使う
Linux カーネルのバージョン5.4から、CPU の温度ポリシーを設定するための、いくつかのインターフェースが提供されています。主要なものは2つで DPTF ポリシーと TCC オフセットです。DPTF ポリシーでは、周波数スケールの振舞いを制御することができ、TCC オフセットでは、CPU パッケージの温度上限を制御することが可能です。下のスクリプトを使うことで、Windows の場合と同じになるように、この2つを設定することが出来ます。
#!/bin/bash # set DPTF policy to "adaptive performance" echo "63BE270F-1C11-48FD-A6F7-3AF253FF3E2D" > /sys/devices/platform/INT3400:00/uuids/current_uuid # enable INT3400 thermal zone for zone in /sys/class/thermal/thermal_zone*; do if [ "$(cat $zone/type)" == "INT3400 Thermal" ]; then echo enabled > $zone/mode fi done # set TCC offset to 5 degrees (Tmax = 95C) echo 5 > /sys/devices/pci0000:00/0000:00:04.0/tcc_offset_degree_celsius
サードパーティー製のツールを使う
throttled と intel-undervolt
(詳細は下) を使うことで、温度と電源の上限を上書きすることが出来ます。しかしこのツールが利用する方法は、上に比べて信頼性が弱いです。
CPU 低電圧化
CPU/Intel GPU の低電圧化を intel-undervolt で行うことができます。i7-8750H と i7-8850H CPU では -150mV が基本的に安全なラインですが、個体差が存在します。 低電圧化によるシステムへの安定性の影響は、それぞれのハードウェアに大きく依存します(a.k.a. "the silicon lottery")。
仕様
このページの情報は全て製造番号 20MF000BUS と 20MFCTO1WW のノートパソコンでテストしています。仕様は以下の通り:
- CPU: Intel Core i7-8750H / i7-8850H
- グラフィック: ハイブリッド Intel UHD 630 + Nvidia GTX 1050 Ti Max-Q
- ディスプレイ: Innolux N156HCE-EN1 1920x1080/60Hz IPS (他のメーカー製の場合あり)
- メモリ: 16GB / 32GB
- SSD: Intel 7600p シリーズ 512GB NVMe / Samsung 970 Pro 1TB NVMe